第十一話 北狩りのお話
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「どもー」
「あらクノ。どうだった、昨日は?」
「花鳥風月」の二階からログインして、下に降りると、そこにはいつものようにエリザがいた。むしろカウンターの向こうにエリザがいなかったことなど一度も見たことがないんだが。何時くらいからログインしてるんだろうか。
「レベルは11まで上がった。後、称号貰った」
「本当?凄いわね。わざわざ言うってことは、武器スキルの称号じゃないんでしょう?」
「ああ。〝非情の断頭者〟っていう、与ダメが増加するやつだな」
「序盤からかなりいかしてるものを貰ったわね・・・羨ましいわ」
「だろ?しかも増加率は1.5倍。確実に初っ端からでるような代物じゃないな」
「貴方も大概ね。防具の要求と言い、どこまで攻撃力をピーキーにしたいのよ」
称号に関しては意図したわけじゃないんだけどなー。防具はまぁ、いいじゃないか。
そういえば、エリザ達はどこまでいったんだろう?というかエリザって戦えるのか?
「私たちは平均してレベル10ってとこね。カリンだけ16だけど」
「なんでカリンだけそんなずば抜けてるんだ・・・」
「モンスターに与えたダメ―ジ量の違いよ。後、カリンは一人でもかなり遅くまでやってるから。まぁ、私も人のことを言えないけれど」
「まぁ、ギルドマスターのたしなみというやつだね」
「おおう!?」
いきなり耳元でカリンの声がしてびっくりした。こっそり近づくのはやめていただきたい。心臓に悪いから。
「ギルマスはいつもメンバーの一歩二歩先を歩いていなくてはね。北のボスにも手を出してみたよ」
「へぇ。どうだった?」
「そうだね。ブラウグリズラーという大きな熊のモンスターだった。特徴は魔法攻撃が比較的効きにくいことだね。単独討伐には一歩およばなかったから、今日はメンバーと一緒に挑むつもりだよ。どうだクノ君?一緒にやらないかい?」
んー。ボス戦か。普通の戦闘みたいに敵を引きつけてまとめてって戦法は使えない訳だし、そうなるとパーティー組んだ方がいい気もするな。でも、そんな切羽詰まってるわけでもなさそうだし、
「いや、いいや。今日は一人で北でレベル上げだな。ボスは単独撃破してみたいし」
むしろ、Str極振りにしたのは、ボスなんかをソロで倒したかったからってのもあるしな。
「そうか。まぁ今回はそんなに強い相手でもないしな。クノ君はクノ君で頑張ってくれ」
「はいよ。じゃあ、そろそろ行くわ」
「「いってらっしゃい」」
エリザとカリンに見送られ、俺は北のフィールドを目指した。相変わらず注目されるが、声をかけてくるプレイヤーも出ず、善きかな善きかな。
―――
北のフィールドは、森になっている。出てくるモンスターは、ハーウルフ(まんま狼)とソウトバグ(でっかいGみたいなやつ。角つき)とバイコーンラビィ(二本のねじれた角をもった兎)だ。
厄介なのはソウトバグで、気持ち悪い見た目に加え、木の上から奇襲を仕掛けてくるのだ。
実はこれでさっき、バイコーンラビィの一撃がかすってHPが1になった瞬間に不意打ちをくらって、あえなく死に戻ってしまった。10分間のデスペナ(経験値獲得量半減)は地味にきつかった。
ということで今は二度目の北の森。今回はちゃんと周りの木にも気を配り、さっきちらっと見えた、開けた場所を目指す。いい加減木が邪魔で戦いにくいからな。木と木の間隔は結構広いんだが、攻撃に反応しづらいし、うっかり長剣を木にめり込ませてしまわないとも限らない。
と、到着。
「さて、どっからでもかかってこい」
とたんに、前方からハーウルフ×2、バイコーンラビィ×1.左右からハーウルフ×1、バイコーンラビィ×3、ソウトバグ×2がわらわらと集まってくる。
空気を読んでくれたのかなんなのか知らんが、総勢9匹って多いな。まぁ、俺の戦闘スタイルは、どっちかというと多数を相手にする方が効率はいいんだが。
三方向から、モンスターが殺到してくる。よし、やるか。
「【捨て身】・・・『サークルスラッシュ』」
便利だね、サークルスラッシュ。モンスターを一気に弾き飛ばし、後続には『スラッシュ』と斬撃をお見舞いする。〝非情の断頭者〟のおかげなのか、モンスターたちは一撃貰っただけでHPバーが0になる。
やっぱ広いところの方が戦いやすいんだけど・・・いまいちスリルが足りないよなぁ。そう考えた俺は、わざとソウトバグの突進を受ける。俺の体は吹っ飛び、HPは一瞬で1に。
今回は奇襲の心配もないからな。HPが1になったことにより、俺の体を謎のエネルギーが駆け巡るようだ・・・俺って追い込まれると強くなる漫画の主人公みたいなタイプだったけなぁ?最も、それでシステム的に強くなったりはしないんだが。
「いいねぇ」
やっぱりこのスリルは堪らんな。俺はさっきより冴えたように感じる頭で、体で、次々とモンスターを斬り捨てていく。モンスターの動きが止まって見える!・・・は流石に言いすぎだけどな。
HPが少しになったら攻撃力の上がるスキルとかないかな?後で探してみよう。
ハーウルフが飛びかかってくる。『スラッシュ』。そのまま前に出てバイコーンラビィをかわし、『サークルスラッシュ』。ソウトバグを剣の腹で殴り、ハーウルフにぶつけて二匹ともを光の粒子へと変える。上から降ってきたソウトバグを切り上げ、そのまま振りおろしてバイコーンラビィ撃退・・・
・・・あれ?敵の数多すぎない?周囲を見ると、最初にいた数の二倍以上のモンスターに囲まれていた。・・・リンクしすぎだろ!まぁ、探しに行く手間が省けて助かるけどな。
~一時間後~
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁー」
もう来ないのか・・・?
疲れた。あれから、ちょっと間を開けては大量のモンスターに襲われる、の繰り返し。この森のリンク率は異常だろ。まぁ、プレイヤーがまだ少ないってのが理由なんだろうが。
後、この場所に足を踏み入れたパーティーを二組程見たが、モンスターの密度の高さにびびったのか即座にまわれ右をしていった。昨日の東の草原といい、プレイヤーによく避けられるなぁ俺。いいことだけど。
この後、どうするかな。時間はまだある。レベルは15だ。
装備は・・・耐久値はまだ大丈夫かな?ポーション類は今までに一度も使って無いから(というか、使う意味がない。HPは回復させても無意味だし、MPも自然回復で間に合っている)・・・となれば、疲労が回復したら、一回ボスに挑んでみるかな?
俺は《Map》を展開しながら、ボスのいる場所へと向かうことにした。
―――
とある『IWO』の掲示板にて。
【雑談スレ・プレイヤー編@4】
1・名無しさん@大剣使い
プレイヤーについての雑談スレ。好きに使ってくれ
誹謗中傷はNG、お兄さんとの約束だぞ☆
356・名無しさん@弓使い
やっぱオルトスさんはぱないわな。さすが最強w
357・名無しさん@片手剣使い
なんか、やばいプレイヤー見つけたった
358・名無しさん@短剣使い
>>357オルトスさんよりか?
359・名無しさん@火魔法使い
>>357詳しく
360・名無しさん@片手剣使い
真っ黒な執事服みたいな格好の男。北の森でモンスターの大群を蹴散らしてたんだが。一人で。あり得ないくらい強かった。
361・名無しさん@双剣使い
ああ、俺もみたわ。長剣使いの男だろ?なんかくるくる回ってたな。
362・名無しさん@大剣使い
>>361それ西狩りの奴じゃね。クノだっけ
363・名無しさん@弓使い
そういやあいつ、服装変ってたな。執事服に。
364・名無しさん@短剣使い
ああ、あいつか。「黒の剣s・・・うわなにをするやめろ
365・名無しさん@片手剣使い
>>364どうした!?
366・名無しさん@弓使い
>>364ちょwどうしたw
367・名無しさん@大剣使い
>>364禁則事項だ
368・名無しさん@双剣使い
>>364西狩り?なにそれ?
369・名無しさん@弓使い
>>368【雑談スレ・プレイヤー編@2】を見ろ
370・名無しさん@大剣使い
クノはまたモンスターを全滅させる作業にいそしんでるのかwwwどうなってんだあいつの攻撃力。
371・名無しさん@火魔法使い
あの殲滅率は異常。もはや人外の域。あとなんか赤く光ってたし
372・名無しさん@弓使い
あれかっこいいよな。なんてスキルなんだ?
373・名無しさん@大剣使い
さぁ?
374・名無しさん@片手剣使い
スキルスレにも乗ってなかった
375・名無しさん@双剣使い
見てきますた
376・名無しさん@火魔法使い
おか
377・名無しさん@大剣使い
西狩りが北狩りにランクアップか・・・
378・名無しさん@片手剣使い
てかあの装備どうなってんの?めっさ強そうなんだが
379・名無しさん@火魔法使い
>>378雰囲気的に、多分とあるギルド所属の職人が作ってる。
380・名無しさん@片手剣使い
>>379詳しく
381・名無しさん@火魔法使い
「花鳥風月」ってギルドの、専属職人、ゴスロリのエリザ
382・名無しさん@弓使い
>>381「花鳥風月」ってあの美人ギルドか。顔いじってないっぽいし、まじ目の保養だわ
383・名無しさん@大剣使い
>>381エリザさんか。
384・名無しさん@短剣使い
フレイたんは俺の嫁
385・名無しさん@弓使い
>>384いや、俺の嫁だから
386・名無しさん@短剣使い
>>385あぁあん?やんのかコラ
387・名無しさん@弓使い
>>386上等だ表にでろ
388・名無しさん@大剣使い
やめなさい
389・名無しさん@短剣使い
ぼこぼこにしてやんよ
390・名無しさん@短剣使い
>>388サーセン
391・名無しさん@弓使い
>>388ついカッとなってやった。後悔は(ry
392・名無しさん@長槍使い
お邪魔しますよっと。ノエルちゃんが一番だろ
393・名無しさん@大剣使い
いや、リッカちゃんだな
394・名無しさん@短剣使い
>>393ロリコンめ
395・名無しさん@氷魔法使い
カリンさんだろjk
(以下壮絶なる「花鳥風月」メンバーの奪い合いが始まる)
524・名無しさん@騎士槍使い
なぁ皆聞いてくれ。俺、クノってプレイヤーが「花鳥風月」のギルホから出て来たの見たんだけど。
525・名無しさん@氷魔法使い
>>524それ装備作って貰ってた時じゃね。上の方読んでみ。
526・名無しさん@弓使い
あれ?でもエリザってそもギル専の職人だよな?なんでクノが装備を・・・まさか
527・名無しさん@片手剣使い
ガタッ
528・名無しさん@大剣使い
ガタッ
529・名無しさん@長槍使い
メキャッ
530・名無しさん@短剣使い
そういや「花鳥風月」のギルホの前に転移してきてたの見たぞ
531・名無しさん@長槍使い
ベギャッ
532・名無しさん@大鎌使い
ドゴッ
533・名無しさん@弓使い
こりゃほぼ確定か。クノは多分「花鳥風月」に入ってるじゃないか?
534・名無しさん@火魔法使い
>>533馬鹿な・・・
535・名無しさん@片手剣使い
>>533「花鳥風月」にクノだと・・・
536・名無しさん@騎士槍使い
リアルハーレム野郎か・・・爆発しろ
537・名無しさん@氷魔法使い
なんてうらやまけしからん。爆砕しろ!
538・名無しさん@長槍使い
俺も力を貸すぜ!爆発しろ!
539・名無しさん@大剣使い
俺も参加させて貰おう!爆発しろ!
(以下このスレはクノ爆発しろスレになりました)
712・名無しさん@短剣使い
やはりここは我がブレイブアルティメットの餌食に・・・
713・名無しさん@氷魔法使い
いや、我がエターナルフォースブリザードの餌食に・・・
714・名無しさん@弓使い
いや、我が百花繚乱砲の餌食に・・・
715・名無しさん@大剣使い
お前らどんだけ技持ってんだよ
716・名無しさん@片手剣使い
ギルド対抗戦が待ち遠しいぜ
717・名無しさん@火魔法使い
ぐぬぬ・・・クノめ・・・覚悟しとけよ
と、そんなこんなでクノの悪名?はその日から非リア充達の間で爆発的に広まるのであった。
掲示板は結構適当です、すみません。