<< 前へ次へ >>  更新
8/130

08 うれしはずかし

ブクマ&評価&感想ありがとうございます!


日間1位……。

昨日の昼休みに気付いて、目を疑いました。

皆様のお陰です。

本当にありがとうございます!

そして、週間も9位になりました!

ほんと、まじ、ありがとーーーーー!


恋愛ジャンルにもかかわらず、恋愛成分が少なめだったので、本日は増量しておきました。

お楽しみいただけると幸いです。

 暑い。






 季節は絶賛夏真っ盛りです。

 ここは大陸にあるだけあって、日本のように湿度は高くない。

 けどね、暑いものは暑いのよ。

 しかも今日は風もないしね。

 許されるなら、キャミソールにショートパンツ姿になりたい。

 もちろん素足で。

 まぁ、無理だけど。

 研究室(ここ)で、そんな格好をしたら間違いなく鼻血を出して倒れる同僚(やつ)が出る。

 だって、今の私の格好は、夏だと言うのに、長袖のシャツに、スカートは丈が足首まであるやつだからね。

 キャミソールにショートパンツとか一般的な下着より布地の面積が少ないからね。

 流石にそのままだと熱中症で倒れそうなので、腕はまくってるけど、それでも全然暑い。

 所長に提出する予定の書類を書いているのだけど、あまりの暑さにさっきから筆が止まっている。

 これはもう我慢するのを諦めよう。



「ねぇ、ジュード」

「何?」



 ジュードの席に移動すると、彼も暑さに参っているようで、シャツの胸元を盛大に開いている。

 何それ、ずるい。

 私も胸元開けたい。

 こうなったら遠慮なく働いてもらおう。



「ちょっと、お願いがあるんだけど。一緒に来てもらえる?」

「いいよ」



 そう言って、ジュードを連れて厨房に移動する。

 厨房に入ると、今はもうお昼も当の昔に過ぎて、料理人さんはいない。

 中をぐるりと見渡すと、壁際の棚に探していた掃除用のバケツが置かれているのを見つけた。

 おもむろにバケツを取って、床に置き、後ろにいるジュードに向き直る。

 ジュードは水属性魔法が使える。

 以前、魔法で(たらい)に水を生むことができるとかなんとか言ってた気がするのよね。



「このバケツに冷たい水って出せる?」

「出せるけど。一体、何を始めようっていうのさ」

「バケツに水入れて、その中に足を入れたら涼しいかなと思って」

「ちょっ、それは……」

「はしたないって言うんでしょ。大丈夫、今ならここには誰もいないし」



 この世界、女性が異性に素足を見せるのは、よろしくないらしい。

 この間、図書室に行ったときに、暑かったからスカートを仰いでいたら、それを見たリズに怒られたのよね。

 リズは同性なのに。

 それを言うと、「誰かに見られたらどうなさるの?」って、とてもいい笑顔で怒られた。

 あれは怖かった。

 そういう価値観なので、ジュードも珍しく顔を赤くして躊躇している。



「ジュードもバケツ持ってって、足浸けたら?気持ちいいわよ?」



 渋るジュードにも同じ事を提案する。

 悪魔の囁きと言うやつね。



「そんなに心配しなくても、この時間に厨房に来る人なんていないし、ずっと浸けてるって訳じゃないんだから。お願い!」

「…………。もう……、しょうがないなぁ。見つからないように気をつけなよ」

「ありがと!」



 ジュードは渋りながらもバケツになみなみと水を生んで、厨房を出て行った。

 ちゃっかり別のバケツを持って行ったってことは、別の場所で同じことをするようだ。

 なんだかんだ言っても、やっぱり暑いのは皆同じよね。



 厨房の床は土間なので、多少水が零れても問題ない。

 椅子の前にバケツを置き、椅子に座る。

 スカートは濡れないように、膝上まで上げた。

 靴と靴下を脱いで、バケツの中に足を入れると、ひんやりと冷たい水に足が包まれた。

 あー、やっぱり気持ちいい。

 どうせ誰もいないからとシャツのボタンを二つほど外し、胸元を広げ、はたはたと仰ぐ。

 風は吹いていないが、仰げばそれなりに涼しい。



 しばらくそうやってぼうっと過ごし、バケツの水がぬるくなって来たところだった。

 かちゃりとノブを回す音がし、背を向けていたドアが開いた。



「セイ、ここに……」



 声がしたので後ろを振り返ると、団長さんがいた。

 こっちを見て、何かを言いかけたまま、固まった状態で。

 あー、うん。

 ちょっと刺激が強過ぎる格好をしてますよね、私。

 とても気まずい。

 とりあえず、胸元のボタンを閉め、バケツから足を抜き、靴を履いて立ち上がる。



「こんにちは、ホーク様。何か御用でしょうか?」



 そして何事も無かったかのように、団長さんに声をかけた。

 固まっていた団長さんは、その声にはっとし、口元を掌で覆って視線を逸らした。

 例の如く、うっすらと頬を染めて。

 「すまない」と小さな声がした。

 お願いだから照れないでください。

 無かったことにしてください。

 そんな思いを込め、私がこほんと一つ咳払いをすると、団長さんは気まずそうに口を開いた。



「君が明日休みだと聞いたんだ」

「あー、そう言えば、そうでしたね」



 言われて、明日が休みだったことを思い出す。

 しかし、それがどうかしたのだろうか?

 そう思い、ことりと首を傾げると、団長さんはこちらに視線を戻した。



「私も明日休みだから、もし良かったら一緒に街にでも行かないかと思って」

「街ですか!?」



 おお!遂に街に行ける!!!

 街にはまだ行ったことがないのよね。

 私が喜色満面で答えると、団長さんも持ち直したのか、微笑を浮かべてくれた。



「ヨハンからセイは休みの日まで仕事をして研究所に篭りがちだと聞いてな。偶には息抜きも必要だろ?」

「そうだったんですか」



 ヨハンというのは所長のことだ。

 どうやら所長が心配してくれたらしい。

 確かに、他に行くところもないし、研究所に住んでるから休みの日もここにいるせいで、つい仕事しちゃうのよね。

 朝はのんびり過ごすんだけどね。



「ありがとうございます。ご一緒させてください」

「そうか。じゃあ、明日の朝、ここまで迎えに来よう」

「よろしいんですか?」

「ああ、かまわないとも」



 やったー!

 どんなところなんだろう?

 やっぱりヨーロッパの街並みみたいな感じなんだろうか?

 ヨーロッパには一度行ってみたかったんだけど、結局行けないまま、こっちに喚ばれちゃったんだよね。






 そんな風に、喜んでいた時期がありました……。

 街に行けるのが楽しみ過ぎて、すっかり失念してたんだよね。

 一緒に行く相手が、まったく凍ってない氷の騎士様だって。



 王宮から街の中心部までは少し距離があるので、門前から辻馬車に乗ったのよ。

 あまり目立たないように団長さんが気を使ってくれたらしく、辺境伯家の豪華な馬車じゃなくて、普通の辻馬車にね。

 団長さんの服装も私に合わせてか、街中の庶民が着るような感じの服で。

 今となっては、辺境伯家の馬車の方が良かったと思ってる。

 だってさあ、普通の辻馬車って広くないのよ。

 その広くない馬車に体格のいい団長さんと二人。

 近い!近いよ!

 すぐ横にキラキラしたイケメンがいるよ!

 しかも、またもや密着……。

 狭い閉鎖空間にイケメンと密着二人旅……。

 レベルの低い、私には無理だってば!

 もうやめて!とっくに私のライフはゼロよ!



「ほら、あそこに見えるのがヨハンの所の本邸だ」

「へー」



 私が脳内で悲鳴を上げているのを他所に、団長さんはニコニコしながら私の向こう側を指さす。

 ちょっ、寄らないで!近い、近いっ!!!

 団長さんの方を向いていられないので、指さされた方を見ると、うわっ、所長の家、大きい!

 王都なんだから地価もすごいだろうに、所長の家はとても大きかった。

 あの人ん家、何気にお金持ち?



「大きかったですねぇ」

「そうだな。ヨハンの家は、かなり有力な家だからな」



 そうだったのね、と思いつつ首を元に戻すと、ほんとにすぐ近くに団長の顔があって、心臓が止まるかと思った。

 私の顔に血が上ったのを見て、すぐに気付いて離れてくれたのはありがたかったけど、どうやっても馬車の中は広くならない。

 非常に私の心臓に負担をかけながらも、馬車は進んで行き、徐々に街中に入っていった。



「うわーーー!」



 すごい!何これ、かわいい!

 街並みがもろにヨーロッパ!

 屋根は赤色で、御伽噺に出てくる街並みのよう。

 街並みに感動していると、馬車が止まり、扉が開けられた。

 団長さんが先に降りて、手を貸してくれる。

 その手を取って降り、周りを見渡すと、中心地に近いらしく、結構人がいる。

 私が感動しながら辺りを見渡していると、「あっちに市場があるから、行ってみよう」って、団長さんは、そのまま私の手を引いて行こうとする。

 えっ?手、離してくれないんですか!?

 ちょっと!

 いやーーーーーーーー!

仕事始まりました。

通勤先が変わった関係で、通勤時間が延びたせいで、執筆時間が少なくなりました。

この2日、あまり忙しくない状態で1話書き上げて、前と同じ位の文章量になりました。

文章量が多い方がいいという意見があったので、最低、週1目標でしばらく頑張ってみようと思います。

<< 前へ次へ >>目次  更新