07 噂話
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嬉しくてヒャッホーしてたらこんな時間。
本日は会話多めです。
喚び出されてから六ヶ月。
「セイ、ここなんですけど、少し難しくて。教えてくださる?」
「えーっと、ここは……」
図書室で出会ったエリザベス様ことリズとは、本について話し合うようになった。
話し合うとは言っても、仕事で図書室に用事があるときに会えればって感じなので、そう長い時間話している訳ではない。
内容も外国語や古語で書かれた本の内容で、リズが分からない部分を私に聞いてくる程度だしね。
リズは、それらの言葉を勉強しているらしいのだけど、解釈が難しい部分なんかを私で答え合わせしている感じかな。
最初は文法とかも聞かれたんだけど、残念ながらそういうのはさっぱり分からないからね。
あくまで内容だけ。
「なるほど。そういう内容でしたのね。ありがとうございます」
「いえいえ」
「ごめんなさいね、いつもお仕事のお邪魔をしてしまって」
「あぁ、気にしないで、良い息抜きになってるから」
貴族のご令嬢相手に随分砕けた口調で話してる?
最初はちゃんと敬語で話してたのよ。
でも、途中からリズに言われてね。
呼び方もエリザベス様からリズに、口調もいつもの口調でお願いしますわとか言われてしまって。
綺麗なお嬢さんに懇願されたら断れないわよ。
「ところで、ちょっと伺いたいことがあるのですけれど……」
「ん?何?」
リズが珍しく言いにくそうに問いかける。
彼女がこの様に言葉尻を濁すのは珍しい。
何だろう?
本の内容ではなさそうだけど、本のこと以外を聞かれるのは初めてかもしれない。
「セイはホーク騎士団長を知っていらして?」
「ホーク騎士団長?」
騎士団長と言われて思い浮かぶのは第三騎士団の団長さんくらいだけど、あの人ホークって名前だったっけ?
いつも団長様って呼んでるから名前があやふやだわ。
所長もアルって呼んでるから、苗字が分からない……。
「やっぱりご存知ありませんわよね」
「ホーク騎士団長って第三騎士団の団長様のことだっけ?」
「あら、お知り合いでしたの?」
「第三騎士団の団長様なら、うちの所長と仲がいいから知ってるわ」
第三騎士団の団長さんで合ってたらしい。
しかし、彼がどうかしたのだろうか?
「あの……、不躾なことを伺ってもよろしいかしら?」
「何?」
「セイはホーク様とは仲はよろしくありませんの?」
「んー、悪くはないと思う」
仲ですか?
悪くはないと思うわよ。
図書室から帰るときに出会ったら、毎回研究所まで送ってくれるしね。
馬に二人乗りで。
アレ、とても恥ずかしいから、二度目からは断ろうとしてたんだけど、そうすると物凄く悲しそうな顔をされるから、断れなくなったのよね。
「ホーク様がどうかしたの?」
「とても聞き難いのですけど、最近ホーク様がよく女性の方と二人乗りで馬に乗ってると噂になっておりますのよ」
リズが美しい
ごめん、それ間違いなく私の気がする。
初めの頃はまっすぐ研究所に帰っていたんだけど、最近は王宮見学で少し遠回りして帰ったりしてたから、その時にきっと目撃されたんだと思います。
「多分、それ私だと思う」
「そうですの!?」
「うん」
正直に白状すると、リズは困った顔から一転、ほっとした顔をした。
あれ?何で?
「やっぱり、異性と馬に二人乗りって、あまり印象良くないのかな?」
「そうですわね。婚約者や配偶者がいらっしゃる方がその方以外の異性の方と乗られるのは良くありませんわね」
「両方とも婚約者がいなければ問題ない?」
「問題ないとは言えませんけど、婚約者がいらっしゃる方よりは問題にはなりにくいですわね」
「ということは、はしたないことではあるのね……」
私に気を使って遠回しに言ってくれたけど、この世界基準では、はしたないことには変わりないらしい。
やっぱり今度から断ろう。
私がげっそりした顔をすると、リズが困ったようにフォローを入れてくれた。
「でもホーク様がお誘いになるのであれば問題ないと思いますわ。あの方はちゃんと弁えていらっしゃると思いますし」
「そんなもの?」
「えぇ……」
何か、相変わらず困った顔をしているリズを見ていると、とても問題ないようには思えないんだけど……。
まぁ、いいか。
断ってしまえば。
「それで、その噂がどうかしたの?」
「え?」
「いや、何かほっとした顔してたから、一体何だったのかと思って」
「それは……」
あ、また困った顔された。
あまり突っ込んじゃいけなかったか。
言い難いなら言わなくても良いよって言おうとしたところで、リズが細く溜息を吐き、重い口を開いた。
「ホーク様と噂になっていたのが同級生かと思いましたの」
「同級生?その人、婚約者がいるの?」
リズの同級生と言うことは、恐らく十五歳位よね?
確か学園って十五歳が最上級生だったはずだから。
えー、十五歳と団長さんって……、犯罪臭がするんだけど。
こちらの世界では、こういう年の差もありなんだろうか?
「いえ、彼女にもいないのですけど」
「えーっと、じゃあ、年の差的に問題があるとか?」
「それも、まぁ、珍しいことではありますけど、問題にはなりませんわね」
年の差はやっぱりOKなんだ……。
じゃあ、何が問題なんだろう?
「その方にちょっと問題がありまして」
「問題?」
「その方、学園で婚約者のいる殿方達と親しくしていらっしゃって、今ちょっと問題になっていますの」
「そうなんだ」
「それで学園ではホーク様の噂を聞いた方々が、あの氷の騎士様にまで手を出したのかという話になりまして……」
「氷の騎士?」
「あぁ、ホーク様のことですわ。表情をあまり外に出されないというか、いつも無表情なので皆様そう呼ばれているのですわ」
無表情?
私にはいつも笑っているイメージしかないんだけど……。
「でも、その同級生?彼女も婚約者がいないんならホーク様と一緒に乗ってても問題ないんじゃない?」
「そうなのですけど。ホーク様も人気のある方ですから、また取り巻きを増やしたのかとか、色々と言われてますの」
「ということは、学園で彼女が親しくしている殿方達ってのも、人気がある人ばかりなのね」
「そうですわね」
片頬に手を当てて、ふぅっと溜息を吐くリズは物憂げだ。
要するに、学園で人気のある男子を侍らせている同級生が、巷で人気があるらしい団長さんにまで手を出したと勘違いされ、周りがやいのやいの言っていると。
でも、それは彼女が言われているだけで、リズとは関係ないと思うんだけど、何故そんなに憂鬱そうなんだろう?
「随分、憂鬱そうね。話を聞くと、その同級生の問題で、リズは関係ないように思えるんだけど、何か問題があるの?」
「そうですわね。その彼女の周りにいる殿方達の婚約者達から、どうにかしてくれって言われて困ってますの」
「それ、リズじゃなくて婚約者さん達が言えばいいんじゃない?」
「それが、既に注意はしたらしいのですけど、一向に改善されませんの」
「それじゃあ、余計にリズが言っても無理なんじゃない?」
「えぇ……。ごめんなさい、愚痴を言ってしまって。忘れてくださると嬉しいわ」
「愚痴を聞くぐらいならいいよ。それに外に出たら忘れることにするわ」
「ありがとう」
物憂げに微笑むリズに、私も笑い返す。
キリが良かったので話を終え、リズと別れ、研究所に戻った。
断る気満々だったせいか、今日は団長さんには会わなかった。
GW終わりましたね。
明日から仕事が始まるので、毎日更新が難しくなります。
短くして毎日更新するか、長さを保持して更新頻度を落とすか、ちょっと考えます。