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05 料理

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

帰省のため、明日・明後日はお休みします。

よろしくお願いいたします。

 今日は王都南の森、サウルの森に来ている。



 第三騎士団は定期的に王都周辺の魔物を討伐しているらしく、西のゴーシュの森に引き続き、ここサウルの森に遠征する予定だったらしい。

 本来であれば、そう頻繁に騎士団が討伐しに行く必要はないらしいのだけど、ここ数年、以前の頻度では間に合わない状況らしく、次々と討伐に出かけている状況だそうだ。

 まぁ、【聖女召喚の儀】により聖女が召喚されたので、徐々に状況は良くなるだろうと見なされているらしい。

 頑張れ、愛良ちゃん。



 それで、今回は、この遠征に薬用植物研究所の研究員達も同行している。

 森の中には薬草園にはない様々な薬草が生えており、それらの採集を行うためだ。

 本来であれば、足手纏い以外の何者でもない研究員達が騎士団の討伐に参加するなんて、とんでもないことなのだが、先日騎士団の団長さんを助けたお礼と言うことで同行を許可された。

 私は研究所でのんびりポーションを作っている予定だったのだが、一番薬草を使うのが私だということで、所長により、あえなく参加が義務付けられた。



「おーい、あんまり離れるなよ」



 道から少し離れた所にお目当ての薬草を見つけて、取ろうとすると、後ろからジュードに注意された。

 ささっと薬草を摘み、ジュードのところに戻ると、追加でお小言を貰う羽目に。



「西の森より穏やかな森とは言え、魔物が出ない訳じゃないんだからな。離れるなら一言言ってから離れないと」

「ごめんごめん」



 南の森は西の森より弱い魔物しか出ないらしいのだが、まったく出ないと言う訳ではない。

 故に気をつけないといけないのは分かっているのだけど、日本の感覚が抜けないらしく、お目当ての物を見つけちゃうと、つい、ふらふらと行っちゃうのよね。



「ちゃんと見ているから、あまり離れなければ大丈夫だ」



 ふっと笑いながら、二人の後ろから声をかけたのは団長さんだ。

 現在、騎士団と研究員達は三班に別れて行動している。

 その方が効率がいいからなんだけど、私とジュードは団長さんの班に入れてもらっている。

 普段は南の森に団長さんが同行することはないらしく、今回は私達がいるからか特別に同行しているとは騎士さんの談。

 お礼とは言え、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいである。



「ありがとうございます。それにしても結構奥に来ている気がするんですけど、魔物出ませんね」



 そう。

 森に入ってから既に二時間は経過していると思うのだが、一度も魔物に遭遇していない。

 普段からこんなものなのだろうか?

 そう思い、団長さんに質問すると、そうではないらしい。



「いや、いつもなら既に数回は遭遇していてもおかしくは無いんだが……」

「そうなんですか」

「あぁ、ここまで遭わないのも珍しい」



 そう言うと、団長さんは少し考える仕草をし、他の騎士さん達に話しかけた。

 うーん、何かあるのかしら?

 いきなりサラマンダーみたいな強力な魔物が出て来なければいいんだけどね。

 そんなことを思いながら、道の側に生えている薬草を摘みつつ、他の班との合流地点に向かった。

 森の中に少し開けている場所があり、そこで他の班と合流した後、昼食となる予定だ。






「美味い!」



 皆と合流した昼食会場。

 あちらこちらで美味しいと声が上がっているのを聞くと、手伝った甲斐があるというもの。

 昼食の準備は騎士団の皆様がやってくれるというお話だったのだが、この世界の食糧事情を憂えていた身としては手伝わない訳にはいかなかった。

 普段使わないようなハーブやらを入れて作ったスープは好評だったようだ。



「薬用植物研究所の食堂は美味いという噂があったが、もしかして君が作ってるのか?」

「いえ、レシピを提供したくらいで、いつもは料理人の方が作ってますよ」

「いつもこんなに美味い食事が食べられるなんて羨ましい」



 そうおっしゃるのは団長さん。

 午前中の討伐の結果、騎士さん達と研究員達はそれなりに打ち解けたらしく、思い思いに固まって座っている中、私の隣には団長さんが座っている。

 その向こう側には副団長さんが座っていたりと、重役ばかりの固まりに放り込まれている研究員は私一人だ。

 ジュード?

 巻き込もうとしたけど、逃げられたわ。

 後で覚えてろ。



「このスープ、色々と薬草を入れられたと伺いましたけど、いつもより体が温まりますね。そういう効果がある薬草があるのですか?」

「えぇ、そうですね。今日のスープには……」



 主に話してたのは団長さんとだったが、合間合間に他の騎士さんにも声をかけられ、というか、料理に使うハーブについて聞かれることが多く、色々と盛り上がった。

 この世界で料理にハーブを使うのは一般的ではなかったようだ。

 特に、お酒の肴に使うハーブなんて話には食い付きが良かったわ。

 ソーセージに入れると美味しいよね。

 そんな感じで、料理談義に花を咲かせ、午後からも討伐、そして夕方には王宮に戻った。







 討伐から一週間。

 この一週間、ちょっと大変なことになっていた。

 昼食後の討伐で、ちょっとした騒ぎがあったのだ。

 私のいた班は相変わらず魔物に遭遇しなかったのだが、事は魔物に遭遇した他の班で起こった。

 どの班の騎士さんたちも、いつもより身体能力が向上していたらしい。

 それに気付いたのは、あっさりと魔物が討伐できたからだ。

 原因は何だという話になったとき、真っ先に上がったのが昼食だった。

 いつもとは違って、スープにはハーブが入っていた。

 では、このハーブが原因なのか?

 それを調べるのに、この一週間、研究所で色々な条件で料理を作り、食べて調査した。

 それこそ、朝昼晩プラス夜食どころか、一日中食べることに。

 流石に私だけでは消化できず、研究員達と第三騎士団の騎士さん達にまで協力してもらうことに。

 結果、料理スキルを持つ者が作った特定の料理を食べると身体能力が向上することが分かった。

 料理スキルは食堂の料理人さん達は大抵持っているスキルらしい。

 もちろん我が研究所の料理人さんもしかり。



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 小鳥遊 聖   Lv.55/聖女


 HP:4,867/4,867

 MP:6,067/6,067


 戦闘スキル:

  聖属性魔法:Lv.∞


 生産スキル:

  製薬   :Lv.28

  料理   :Lv.5

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 そして、いつの間にか私も持っていた。

 これが理由で、あの討伐のとき騎士さん達の身体能力が向上したようだ。

 もちろん、身体能力が向上したのは騎士さん達だけではなく研究員達もなのだが、体を動かすことが少ない研究員達は気付かなかったようだ。

 実際は、気付いた理由はそれだけではなかったのだけど。

 ポーションを作るときに発揮される五割り増しの呪いは、ここでも効果を発揮したようで、食堂の料理人さんが作った物よりも、私が作った料理の方が効果が高かった。

 そのお陰で、効果が顕著に現れ、気付かれることとなったようだ。

 もちろん、所長から今後公の場で料理を作ることを禁止されたのは言うまでもない。

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