21 謁見
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にしなさとるさんに Wikipedia の記事を作っていただきました!
ありがとうございます。
ご興味のある方は、「聖女の魔力は万能です Wiki」で検索してみてください。
2/10に書籍が発売となりました。
お買い上げくださった皆様、ありがとうございます。
書店で見かけて手に取っていただいた方も多いらしく、Web版を見に来てくださった方もいるようです。
お陰様で、なんと重版も決まりました!
多くの方に読んでいただけて、とても嬉しいです。
本当にありがとうございます!
玉座の間は、思ったよりは狭かった。
てっきり、だだっ広い広間に案内されるものだと思っていたので、少し驚いた。
そう広くはない部屋の中を見回すと、十数人の貴族と思われる人達が立っている。
そして部屋の奥、中央に玉座が置かれ、そこに国王陛下が座っていた。
陛下の隣にいるのは宰相様だろうか?
濃紺色の髪を後ろに撫で付けた、厳しい顔のおじ様が立っていた。
後ろに付いていてくれた団長さんは、私の脇から部屋に入ると貴族の人達の方へと移動した。
一瞬、視線が交わる。
大丈夫だというように、視線だけが笑んだ。
取り敢えず、部屋の前で文官さんに教えてもらったとおり、部屋の中央まで進む。
立ち止まると、背後で扉が閉まる音がした。
ここから先は台本がない。
文官さんに教えてもらったのはここまでだった。
微妙に張り詰めた空気に緊張する。
数拍置いた後、陛下が玉座から立ち上がると、更に空気が張り詰めた。
陛下はそのまま玉座の置かれた高台から降り、私の数歩前まで来た。
「まずは、突然我が国にお呼びしたこと、そして息子の非礼をお詫びする」
言葉の後、陛下は深く頭を下げた。
それに合わせて、周りの人達も一斉に、私に向かって頭を下げた。
ちょっと待って。
これ、どう収拾つけたらいいの!?
内心冷や汗だらだらなんだけど、陛下を筆頭に誰もぴくりとも動かない。
許すとか、許さないとかは置いておいて、まずは頭を上げてもらうところからよね?
「頭を上げてください」
震えそうになる声を抑えて、そう言うと、皆頭を上げてくれた。
先程までの張り詰めた空気が、少しだけ弛緩する。
前に聞いた公式な謝罪なんだろうけど、こういうのは一般庶民にはきついので今後は止めていただきたい。
これで終わりだろうと思ったのだけど、続きがあった。
「セイ殿はこちらに来ていただいてから今日までに様々な功績を上げている。お詫びも含め、何か恩賞を渡したいのだが、希望するものはないだろうか?」
「恩賞ですか?」
突然聞かれても、急には思いつかない。
謝罪だけで済むと思ってたし。
恩賞、恩賞ね……。
そういえば、以前にも聞かれたっけ。
でも、特に必要な物ってないのよね。
ここで要らないって言ってもいいかしら?
視線だけで、ちらっと団長さんの方を見ると、眉間に少し皺を寄せていた。
団長さんだけでなく、その周りの人も。
何だか固唾を呑んで見守っているという感じだ。
「爵位でも、領地でも、こちらができることであれば何でも構わないのですが」
「えっと、そういうのはちょっと……」
黙っていたからか、宰相様(?)が提案してくれた。
悩んでいただけなのだけど、気付けば、緩んだはずの空気が再び張り詰め、宰相様(仮)も陛下も、難しい顔になっている。
爵位とか領地とか、こちらでは当たり前の褒美なのかもしれないけど、私には不要だ。
手に負えないのもあるし、そういう物をもらうと行動が制限されそうだなとも思うから。
そういう物を持ってると、何かあったときに、この国から出て行きにくくなるしね。
受け取っておいて、出て行きたくなったら、さっくり捨てて行くっていうのも、どうかと思うし。
そう考えて、言葉を濁しつつ断ると、宰相様の眉間の皺が益々深くなる。
これ、何も要らないって言ったら、どうなるんだろうか?
言ってみたい気もするけど、周りの様子から、言っていいものか迷う。
最初の陛下の言葉からすると、今回の謁見の目的は謝罪。
この恩賞を受けるか、受けないかで、私の心中を推し量ろうとしているのかもしれない。
正直なところ、召喚された当初は色々と頭に来ていたんだけど、半年以上も経つと最初ほど怒りは湧いてこなくなったのよね。
研究所で、日々好きなことをして、研究に勤しんでいたら、どうでもよくなったというか。
怒るのって結構気力が必要で、継続するのが難しいからかな。
そちらに気力を使うくらいなら、足場を固める方に使いたかったのもある。
研究員さんや騎士さんなど、周りの人達も、いい人が多くて、絆されてしまっている部分もあるかもしれない。
最初こそ、すぐにでもこの国を出ようと思っていたけど、今はそこまででもないし。
何か問題があれば、すぐに出て行けるように準備だけはしておこうかなというくらい。
そういうのもあって、今謝罪してもらっても、あまり感慨はない。
んー。
いらないって言いたいところだけど、そうするとまた、この茶番が繰り広げられそうね。
それは面倒だ。
何か受け取って、今回で終わりにしてしまいたい。
あっても邪魔にならなさそうな恩賞、何かいいものはないかしら?
少し考えて、ふと思い出したので、口を開いた。
「恩賞は何でもいいんですよね?」
「あぁ」
「そうですね……。でしたら、禁書庫の閲覧許可をいただけますか?」
私の要望が意外だったのか、陛下は僅かだけど目を見開いた。
でも、邪魔にならなくて、今一番欲しいものってこれなのよね。
前々から上級HPポーションより上のランクのポーションが作れないか調べてたんだけど、この所は行き詰っていた。
王宮の図書室にある関連図書は大体読破していて、後は禁書庫にある本を読むくらいしか思いつかなかったのよ。
ただ、一介の研究員に禁書庫の閲覧許可なんてもらえないだろうなと思っていたから、半ば諦めていた。
そんな所に、降って湧いた恩賞話。
利用しない手はないでしょ。
「それから、魔法について学びたいので、講師を付けてもらうことはできますか?」
何となく、もう一つくらい言ってもいいかなと思って、付け加える。
魔法スキルのお陰で、私も魔法が使える。
しかし、図書室の本を読んだだけの独学なので、色々と足りないところがありそうだ。
魔法は元いた世界にはないものなので、できればきちんと講師に付いて学ぶ機会が欲しかった。
この世界で魔法が使えるってことは、自立するのに有利みたいだしね。
「わかった。用意しよう」
結果として、私の要望は受け入れられた。
予期しない物ではあったみたいだけど。
少しだけ調整が必要らしいので、それらの恩賞は準備ができ次第、受け取ることとなった。
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