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14 思うこと

ブクマ&評価&感想ありがとうございます!


この所、更新が遅くなって大変申し訳ないです。

週1更新~orz

読んでくださる皆様のおかげで、忙しい日々の間にも何とか更新が続けられています。

本当にありがとうございます。

 喚び出されてから七ヶ月。



 日中照りつける日差しの強さは変わらないが、徐々に日が落ちるのが早くなってきたように感じる。

 毎朝の日課である薬草の水遣りを行いながら、日の出の時間も遅くなりつつあるのを感じ、もうすぐ秋だなぁと思う。



「おはよう、セイ」



 如雨露で薬草の根元に水を撒いていると、起きて身支度を整えたジュードがこちらに来た。

 薬草の水遣りといっても、薬草園全体に行っている訳ではない。

 そもそも、このところ薬草園が拡大されたため、私一人で全体を管理するというのは、土台無理な話。

 私が世話をしているのは、個人用に貰えた、研究所の薬草園の一角だけだ。

 私以外にも個人用の畑を持っている研究員達は多く、其々個人が管理している。

 それ以外の区画については、薬草園の世話を行うための庭師が何人もおり、日頃はその人達が管理している。



「言ってくれれば手伝ったのに」



 私が持っている如雨露を見て、ジュードが眉を下げる。

 ジュードは水属性魔法が使えるため、如雨露なんて使わずに広範囲に水遣りを行うことができる。

 私が毎朝水遣りを行っていることを知って、ジュードから水遣りに水属性魔法が使えることを教えてもらい、実際に手伝ってもらったこともある。

 ただ毎日のことなので、毎回頼むというのは流石に心苦しく、結局水遣りの前に会ったときだけ手伝ってもらっている。



「ありがとう。気持ちだけ受け取っとくわ」



 にっこり笑ってお礼を言うと、ジュードも仕方ないなぁという感じで笑う。

 今日の水遣りは丁度終わったところだったので、ジュードを伴って研究所に戻る。

 ジュードは自分の畑を持っていないので、私の水遣りを手伝うためだけに、こうして外に出てくるらしいからね。



「そういえば、今日ってお店から薬草が届く日だっけ?」

「そうそう。今日はいつもより量が多いらしいから、研究員も倉庫に入れるの手伝えって所長が言ってたね」



 帰る道すがら、今日の予定をジュードと確認する。

 第三騎士団にポーションを卸すようになってから、研究所の薬草園だけでは薬草が賄えきれなくなったので、商店から薬草を仕入れるようになった。

 ちなみに、その商店ってばジュードの実家らしく、コネを使って少し安く仕入れられたって所長が喜んでたわ。

 ジュード曰く、彼の実家は王都では結構大きな商店で、色々な物を取り扱っているらしく、研究所の食堂の食材もそこから仕入れているというのを、この間初めて知ったのよね。

 食堂の食材に関しては、色々と無茶を言ってるかもと思うこともあるので、少し申し訳なく思ったわ。



「荷物が届くのは何時頃かしら?」

「朝三つの鐘の頃じゃないかな?」

「じゃあ、それ位に倉庫前に行けばいいかな」



 この世界、時計はあるがまだ高価な物らしく、持っている人が限られている。

 そのため、庶民は教会等で鳴らされる鐘の音で時刻を知るらしく、王宮でも同様に決められた時間に鐘が鳴らされる。

 朝三つの鐘と言うのは大体午前九時頃だ。

 倉庫は研究所の隣にあるから、鐘の音が聞こえてから向かっても間に合うわよね。







 朝三つの鐘の音を聞いて倉庫前に行ったのだけど、私が手伝うことはなかった。

 荷馬車に積み上げられた薬草の入った大量の箱は私以外の研究員や下働きの人が倉庫に運んでくれた。

 薬草の大半を使うのは私だから、私も手伝うって言ったんだけど、何故か皆に固辞されたのよね。

 いや、まぁ、普段見れない皆の逞しいところを見れて、個人的に眼福だったけど、私だけ良い思いして良いのかしら?

 何だか申し訳ないので、見学するのは止めて、本来は別の人が行く予定だった第三騎士団へのポーションの配達に代わりに行くことにした。

 ポーションの配達はロバが引いてくれる荷車で行くので、そこまで重労働ではないのよね。

 積荷の上げ下ろしは下働きの人がやってくれるしね。


 そうそう、荷車の御者ができるようになったのよ。

 最初は上手くロバを御せるか心配だったけど、意外にあっさりできた。

 多分、ロバが凄く優秀だったからだと思う。

 大人しくてちゃんと言うこと聞いてくれる良い子なの。

 これもポーション作成と同様、日本にいたら絶対経験しなかったことよね。



「あれ?セイ?」



 第三騎士団の隊舎の通用口で下働きの人に荷車からポーションを降ろしてもらっていると、ちょうど訓練が終わった騎士さん達と出会った。

 訓練だったからか、いつも見る騎士服ではなくて、ちょっとラフな感じの服装だ。

 一緒に討伐に行ったり、料理の効果調査に協力してもらったこともあり、何だかんだで、第三騎士団の皆さんには仲良くしてもらっている。

 こうして私を見かけると声をかけてくれる程度には。

 声をかけて来た騎士さんは、私の側にある荷車にポーションが積んであるのを見て、私が運んできたことを察してくれたようだ。



「ポーション運んで来てくれたの?」

「はい」

「研究所のポーション、ほんと性能いいよな。討伐のとき、本当に助かる」

「ありがとうございます」



 訓練後ということもあり、わらわらと私の周りに騎士さんの輪ができる。

 私より背が高くて、体格が良い人が多くて、まるで壁に囲まれているような感じがする。

 これぞ本当の肉壁、なんちゃって。



「いつも結構な量を作ってもらってるけど、大変なんじゃないか?次はこの倍だろ?」

「え?増えるんですか?」

「あれ?聞いてない?」



 騎士さんの一人から次回卸す量が倍になると聞いたが、所長からそういう話は聞いていない。

 正直、今の量の三倍位までは余裕で一人で作れるので、倍になったところで全く問題は無いけどね。

 詳しく聞いてみると、次に予定している騎士団の討伐は第二、第三騎士団合同で行うらしく、そのため第三騎士団だけではなく第二騎士団にも研究室からポーションを卸すことになったそうだ。

 片方のポーションだけ性能が良かったら、色々と問題が発生しそうだからってことで、所長と団長さん達の間でそうなったらしいわ。

 道理で、今日納品された薬草の量がいつもより多かった訳だ。



「複数の騎士団が合同で討伐だなんて、強力な魔物でも出たんですか?」

「そういう訳ではないんだがな。次に行くのがゴーシュの森だから、念の為ということで二つの騎士団が出ることになったんだ」

「あぁ」



 ゴーシュの森というのは例のサラマンダーが出た森で、あの時現れたサラマンダーだけは退治したけど、まだ他にいるかもしれないということで今回大掛かりな討伐を行うことになったそうだ。



「第一騎士団は行かないんですか?」



 第二、第三ときたので、第一もあるんだろうと思い、何気なく発した質問だったのだけど、言った途端、周りの騎士さん達の表情が渋くなった。

 何かまずいことを言ってしまったのだろうかと首を傾げると、騎士さんが言い辛そうに口を開いた。



「第一は殿下達のお守りがあるんだよ」

「殿下?」

「あー、カイル殿下達が東の森でレベル上げするらしくてな。その護衛に行くから今回の討伐には不参加なんだ」



 カイル、カイル……、あぁ、あの赤髪王子か。

 名前で言われて一瞬誰だか分からなかったが、確か第一王子がそんな名前だったなと思い出した。



「殿下達ももう15レベルは超えてるだろ。今更、東の森でレベル上げしても上がり難いだろうに……」

「そうだなぁ。行くなら南の森の方が良さそうだよな」

「護衛が付くんなら、尚更南の森の方がいいだろ」



 騎士さん達が言うには、東の森は初心者用の森らしく、基礎レベルが12レベル位までの学生が、よくレベル上げに行く場所だそうだ。

 対して、第一王子とその仲間達は既に15レベル前後の者が多いらしく、東の森ではレベルが上がり難くなっているだろうとの話だった。

 東の森よりも南の森の方が強い魔物が出るらしく、12~20レベル位までは南の森に行く方がレベルが上がりやすいらしい。

 その後も周りの話を聞いていると、以前は第一王子も南の森に行っていたこともあるらしく、何故今更東の森に行くのかと疑問に思った。



「あれだろ?聖女様がいるからだろ」

「まぁ、十中八九そうだろうなぁ」

「聖女様?」

「殿下が保護している女の子で、殿下達がそう呼んでるんだよ」



 【聖女】という単語に思わず反応すると、騎士さん達がその聖女様について色々と教えてくれた。

 第一王子が保護しているという時点で想像はついたけど、やっぱり愛良ちゃんだった。

 騎士さん達の話を要約すると、愛良ちゃんは学園に通っていて、第一王子や彼の側近達が付きっ切りで面倒を見ているらしい。

 第一王子曰く彼女が聖女で、早くレベルを上げた方が国のためにも良いからというのが理由だとか。

 そして同級生よりも遅く王立学園(アカデミー)に入学した彼女を同級生達に追い付かせるために、彼女よりレベルの高い第一王子達が一緒に森に行くことで通常より早い速度で彼女のレベルを上げていたらしい。

 もちろん第一王子もその側近達も王族だったり高位貴族の子息だったりするので、安全性を確保するために第一騎士団も付いて行っていたようだ。

 そうしてパワーレベリングを行っていたのだが、本来であればそろそろ南の森に移動するべきところを第一王子が危険だと反対して只管東の森でレベルを上げているらしい。

 愛良ちゃんのレベルが同級生達に追い付き、急ぐ必要がなくなったというのも理由のようだ。



「随分大切にされてるんですねぇ」



 一緒に召喚された者として愛良ちゃんの近況が聞けたこと、不憫な目に合ってないことに少しほっとする。

 年下の女の子だしね、やっぱりちょっとは心配してたのよ。

 ほっとしたのが態度に出ていたのだと思うのだけど、周りの騎士さん達からは微妙な表情で見られた。

 え?何?



「あっちの聖女様より、よっぽどセイの方が聖女様っぽいけどなぁ」

「殿下も見る目ないよな」

「何か困ったことがあったら言えよ。俺達にできることなら何でもするから」



 何だかすごく不憫な子を見る目で見られながら、口々に慰められたのだけど、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ?

 やりたいことやって、結構平和に楽しく過ごしてるしね。



「あはは。ありがとうございます。困ったことがあったら相談させてもらいますね」



 皆、私のことを聖女っぽいと言ってくれるけど、困ったことに本当に聖女らしいのよね。

 ステータス上では。

 でも、それを積極的に肯定するつもりも、喧伝するつもりもない。

 いつかばれた時のことを考えると、聖女であることを否定するつもりもないけど。

 召喚された日のことは、やっぱり未だに少しだけ(わだかま)っていて、素直に認めたくない思いもある。

 だから、いつか誰かにばれるまでは只の一般人として過ごしたいと思っている。


■本日の書ききれなかった設定

 ・セイ、アイラ共に召喚された人たちは基礎・スキルレベル共に上がりやすいです。

 ・アイラのレベルがさくさく上がっているのは召喚された者であるのとパワーレベリング両方のせいです。

 ・騎士達には聖女だとばれてはいませんが、聖女候補であることはばれています。


以上、入れるに入れれなかった設定でした。

いつか、どこかで入れれるといいのですが……。

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