11 魔法付与
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「魔法付与?」
「あれ?気付いてなかったの?」
発端は昼下がりのジュードの一言だった。
どうやら私の髪飾りには魔法が付与されているらしい。
当たり前だけど、魔法が付与された物など日本では見たこともなかったので、当然気付かなかった。
「どんな効果が付いてるか分かるの?」
「それは分からないけど、魔法が付与されてるのは何となく分かるよ。セイの魔力と反応してるし」
「反応?そんなのも分かるものなの?」
「うん、訓練次第だけどね」
「そうなんだ」
ジュードに詳しく聞いてみると、付与された魔法の内容は『鑑定』という魔法を使わないと分からないらしい。
この鑑定魔法、極端に使える人が少ないらしく、市井では大きな商会にしかおらず、宮廷魔道師の中でも数人いるくらいだとか。
ちなみにこの鑑定魔法、魔法のレベルが高ければ、人に対しても使うことができるみたい。
ただ、人に対しては相手の承諾がないと弾かれる場合もあり、特に鑑定される人の方がレベルが高いとほぼ確実に弾かれるそうだ。
そして魔法付与。
武器や防具、アクセサリー等、道具に魔法を付与することができるらしい。
付与する場合は宝石等の核となる物が道具に存在することが前提で、その核に対して魔法を埋め込むと魔法を付与された道具となるそうだ。
もちろん魔法を埋め込んだ核を道具に填め込むのでもいいのだとか。
魔法を付与された道具は人の持つ魔力に反応して効果を発揮するみたいよ。
魔法を使える人は少ないのに、魔力自体は大小はあれ、誰でも持っているみたいね。
それ故、魔力感知の訓練をしている人は、道具に魔法が付与されているかどうかが分かるらしい。
ジュードは王立
真面目だなぁ。
「何だか面白そうね」
「何が?」
「魔法付与」
「え?まさかとは思うけど、やりたいとか言わないよね?」
「あら、よく分かったわね」
ジュードが微妙に嫌な顔をするので、ニッコリ微笑んでみた。
何よ、その顔。
魔法付与なんて日本じゃできなかったんだから、やってみたいって思うのは当然じゃない。
「魔法付与ってそう気軽にできるもんじゃないからね」
「そうなの?」
「まず核がそれなりに高価なんだ」
核となる素材は種々あれど、それは宝石だったり、希少な鉱石だったりと、小さくてもそれなりの価格の物が多いそうだ。
また魔法を付与するには魔法が使えることが前提であるため、付与できる人も限られる。
故に、魔法が付与されているものと、されていないものとでは、価格に雲泥の差があるんだって。
うん、雲泥の差があるらしいよ。
そして、この髪飾りには魔法が付与されている。
………………。
…………。
……。
「何騒いでるんだ?」
髪飾りの価値について考え込んでいると、通りかかった所長に声をかけられた。
「魔法付与について話してたんです」
「魔法付与?」
「この髪飾りに魔法が付与されているって聞いて、ちょっと魔法付与に興味が湧いたんです」
「ほう」
所長、しれっとしてますけど、髪飾りに魔法付与されてたの気付いてましたよね?
だって、「髪飾りに」って言ったところで僅かに視線が揺れましたもの。
所長も、リズも価格に言及しなかったけど、貴族基準では高くない部類に入るのかしら。
店頭にあった物が付与されている物だったかは分からないけど、雲泥の差って言うくらいだから、付与されていなかったんだろうな。
そう考えると、私の髪飾りの価格がいくらかなんて、考えるだけで恐ろしい。
どうやって、このお礼、返せばいいんだ……。
再び頭を抱えそうになっていると、思わぬ所長の提案があった。
「やってみるか?」
「え?」
「魔法付与。興味あるんだろ?」
所長の提案に私も、側で聞いていたジュードもぽかんとした。
え?そんなに簡単にできるものなの?
隣のジュードを見ると、意図を汲んでくれたのか、ふるふると首を横に振っている。
「伝があるんだ。どうする?」
「やります」
せっかくの提案なので、ここは素直に乗ることにした。
興味あったしね。
そうして、所長に連れて来られたのは宮廷魔道師団の隊舎だった。
えっと、魔法の付与をするんですよね?
あ、魔法だからか。
魔道師団というだけあって、周りはローブを着た人が多く、その中にいる所長と私は少し異質だ。
そう言えば、このローブ、召喚されたときに周りにいた人たちも着てたわね。
やっぱり、ここの人たちが儀式に参加してたんだろうか。
宮廷魔道師団の隊舎は研究所からは結構遠くて、ここまでは所長と一緒に馬車に乗って来た。
第三騎士団の隊舎より確実に遠いから、歩いて来るのは厳しいなぁ。
ジュードは所長命令によりお留守番だったり。
仕事優先だって言ってたけど、私はいいのかしら?
基準が謎だわ。
「セイ、こっちだ」
「はい」
部屋の入り口に立って室内を見渡していると、先に行った所長に手招きされた。
今いる部屋には研究所と同じく作業台があり、所長は部屋の中程にある作業台の前にいた。
その作業台には、所長と机を挟んだ向かい側に、同じくローブを着た魔道師と思われる人が立っていた。
些か緊張した面持ちの魔道師さんに、「よろしくお願いします」と頭を下げると、向こうも慌てて頭を下げてきた。
あれ?何か怖がられてる?
「それでは、付与についてご説明しますね」
少し引きつった笑顔で付与について説明してくれる魔道師さん。
何故、引きつるのかしら?
まぁ、気にしても仕方ないか。
作業台の上、脇によけられていた仕切られた箱が目の前に置かれる。
中には小さな種々の宝石や鉱石などが種類別に入れられているようだ。
付与を行うには、この小さな核を手に持ち、核に対して付与したい効果を思い浮かべ、魔力を照射するらしい。
付与できる効果は、作業者が持つ属性魔法の種類によって異なるらしく、例えば、火属性魔法が使える人間であれば、火を出す効果が、水属性魔法が使える人間であれば、水を出す効果が付与できるといった感じだ。
攻撃力や防御力を上げる、俗に言う支援系の効果があるものは聖属性魔法が使える必要があるらしい。
また、どんな効果を付与したいかによって、相性の良い素材というものが存在するらしく、魔道師さんが「支援系ならこの辺りがお勧めですね」と教えてくれる。
「どのような効果を付与されますか?」
「そうですね……」
何にしようか?
支援系、支援系……。
「属性魔法の無効化って可能ですか?」
「魔法の無効化ですか……」
考えていて、ふと思い出したのは西の森に出たと言うサラマンダー。
火を噴く
魔道師さんは少し考えた後、「無効化はできないかもしれませんが、軽減は可能だと思います」と言った。
そっか。
じゃあ、軽減する方向で考えてみようかな。
「じゃあ、それで」
「では、この辺りの石がいいかもしれませんね」
魔道師さんから核となる素材を受け取り、両手で包む。
包むと言っても、素材自体が直径3ミリ程度の大きさなので、手と手を合わせると全く見えなくなる。
その状態で付与したい効果をイメージし、魔力を照射する。
どうせなら、火属性と言わず、全魔法軽減くらいでもいいかな。
そうすると、魔法抵抗を上げればいいのかしら?
うん、何となくできそう。
そうして、それをイメージしながら核に魔力を照射した。
パシッ。
………………。
わ、割れた!?