そこにある不思議は
「ちょっと。何でここがフールさん達の基地みたいになっているの?おかしいじゃないの。確かに私は協力するって言ったけど、ここを隠れ家にしていいなんて言ってないわよ」
ラピスが可愛げにほほを膨らませて、腕を組む。
「いいじゃないですか。この白雲って宿。過ごしやすいですし」
フールが笑顔でラピスの頭を撫でながら、怒りを鎮めていた。
ここは白雲という宿。私が長く泊まっていた場所だけど、今いるのはその地下に当たる。
この場にいるのは、ラピス、ハゲ、ガルダ、フールとラピス。そして私と見知らぬ人たちが数名だ。正直、何が何だかよく分からない。
いちゃつくフールとラピスに、
「そろそろ、説明が欲しいのだけど」
と口を挟む。
フールはゴホンッとワザとらしく咳をして、その場を収めた。
「では、まずは何が知りたいですか?」
「このメンバーが何かは良く分からないけど、大会の後に何があったかを教えて欲しいわ」
「そうですね。まず、僕は王女の案を受けいれて、彼らの仲間になるふりをした。その次に、ラピスさんを私達が吸収して、ここに隠れるようになった。後は、石油採掘所に吶喊!!って感じですね。今頃、王女の仲間が私達の事を探してますよ」
なるほど、大体私の予想と当たっていた。とうよりは、それしかない。
「じゃぁ、この組織は、何なんですか?」
その言葉を待っていましたとばかりに、フールは一冊の本を差し出した。
この時代に残っている本は、非常に珍しい。何故なら、紙を作る材料も無ければ技術もほとんど残っていたいからだ。しかし、彼から渡されたのは新品に近く、かなり綺麗なものであった。
「これ、何?」
「読んでみれば分かります。そうすれば、私達の仲間になる決意が付くはずです」
【次話を読んでください】
内容を読み終えた私は、静かに本を閉じた。
にわかに信じがたい話ではあるが、これが事実なら、私達はかなり大変な極地へと立たされている事になる。
真っすぐとフールの目を見つめて、
「これ、事実なの?」
と私は彼に尋ねる。
「えぇ、恐らくはそうです。そして、ここにいる皆がそれを信じています」
「じゃぁ、これは何処から取ってきたの?」
「これはですね…」
フールはちらりとラピスの方を見た。
ラピスは小さく頷くと、私の顔を見る。
「これは、私が王女の部屋から盗んできたものです」
「なるほど。そういう事ね。分かったわ」
正直な話、ここまで大きな騒動に巻き込まれるとは思っていなかった。敵はあまりに強大で、大きすぎるのだ。ここにいるメンバーだけで、どうにかなるとは思えない。
けど…けどね。
この暇でつまらない世界。オーパーツに身を寄せた日々。
そんな事より、これから起きるである事件の方が、よっぽど面白そうな気がする。
ないなら造ればいい、この素晴らしい世界を。
「いいわ。参加する。よろしく頼むわ」
旅人とはここでお別れ。また、自由に世界が旅できる日が訪れるまで、闘い続ける日々が続くのだろう。