スワ家会議
しかし何で能力が無いナケスと一緒に住んでいるのに、モイナはアイナに引き渡したのだろうか?
「何で、モイナとは一緒に住まなかったのですか?」
その質問をした時、6人グループの釣人達が、僕達の居る場所に近づいてきた。
するとクリカがデケスに話し掛ける。
「私達はモイナの友達で一緒に旅をしていました。もっと詳しい事を聞きたいのですが、ここでは他の人に聞かれてしまうので、おばあ様の所に行きませんか?」
クリカがきちんと話したので少し驚く。
「何をボーっとしてるのよ、家に戻るわよ!」
やはりいつもの言葉だが、何かちょっとやさしい口調になったような・・・
するとカシムが僕の所に近づいてきて、小声で話しかける
「マコトさんも分かりましたか?」
「えっ?」
「多分、クリカちゃんは恋をしているようです。」
「誰にですか?」
「クリカちゃんをよく見てて下さい。」
僕は家に向かって歩き始めたクリカの後ろ姿を見つめた。
!
チラチラとコサイの方を気にしている。
「コサイですか?」
「そうよ、あれは完全に恋ね」
この短い時間もチラチラとコサイを見ていた。
「でもあの二人って、婚約を破棄したって聞いていますけど」
「今度はコサイちゃんを見てみて」
コサイもチラチラとクリカを見ている。
「これって、もしかしてコサイもクリカの事を?」
「そうみたいね。この前コサイちゃんがクリカちゃんを助けてからずっとあんな感じよ。初々しくて、こっちが照れちゃいますね」
後ろで眺めていた僕達にクリカが気づいて
「マコトは何をやっているのよ!早く着いてきなさい!」
僕とカシムは、慌ててみんなの後を追いかけた。
そして家に着くとクリカの祖父コタリが出迎えてくれた。
「デケスもフケスもよく来てくれた」
「コタリ様、お久しぶりです。」
「まあ上がってくれ」
1階の奥の間が会議室のような作りになっていて、大きな縦長のテーブルが中央に置かれている。そのテーブルを取り囲む様に上質な椅子が両脇に10個ずつ計20個並び、中央に1つ席が置かれていた。
中央の椅子にコタリが座り
「さあ、適当に座ってくれ」
全員が席に着くと、デケスがマワ家で起った20年前の出来事から光国で起った事まで語り始めた。
必然的に話の中心は、イトナ(アイナ)についての話となった。
するとルタンが話始める。
「実はイトナ様から、私達トワ・タン国に宣戦布告の文章が送られてきたのです。その文章には闇国、サワ・カロ国も手中に収めるとの言葉も入っていました。
もし光国の傘下になるのなら、攻撃はしないと書いてあり、1か月の猶予を与えられ、それまでに答えるようにとの文章でした。」
カシムが心配そうに
「それで、答えたのですか?」
「いえ、まだ答えていません。皆さんがスワ町に辿り着いたと聞き、戻ってきてもらおうと思って、ここに来ました。」
それで、ルタンが合流するのが遅かったのだと理解する。
「どうするの?」
リオキが呟く。
「光国には人を食べる種族が居ると聞いています。そんな種族が人の国で平等に暮らす事は無理だと判断しています。多分、争いは避けれないと思います。ただ、私達だけでは立ち向かえませんので、闇国とサワ・カロ国とも同盟を組んで戦おうと思います。」
「光国」対「連合軍」ってところか
「途中で出会った光国の住民が言うには、アイナ(イトナ)は人間びいきと言っていたけど、何でそんな事を考えているのだろう?僕には信じられない」
「実は私にも分からないのです。ごめんなさい」
「ルタンが謝る事では無いよ。こっちこそごめんね」
デケス「モケス(モイナ)の為に戦おうとしているのか?
タタン様が亡くなってしまったのでモケスをイトナ様に預けた時の理由をどのように話したか分かりませんけど、子供を認知しない人間社会に嫌気を感じたのでは?」
「でも、それだったら、もっと前に行動を起こすのでは?」
「それはタタン様が生きていたからだと思います。」
そこまで妙子は圧倒的な力を持っていたのか
「どっちにしても、アイナに会わないと話はまとまらないですね。モイナも心配だし・・・」
ルタンが
「出来れば、一回トワ・タン国に戻って来てくれませんか?父も来て欲しいと言っていましたので」
「みんなは家族が心配でしょうから、一回帰った方がいいですよ。僕は取り敢えずアイナに会いに行ってきます。」
デケス「私達も娘が心配なので、一緒に行ってもいいですか?」
クリカ「私も行くわよ!」
カシムはトワ・タン国に残っている家族が心配な様子である。
「カシムさんとリオキさんは、家族の元に戻ってあげて下さい。それとナケスちゃんは、危険なので残った方がいいと思います。」
カシムはしばらく悩み回答する。
カシム「マコトごめんなさい。一度、トワ・タン国に戻りますね。」
リオキ「私も」
コサイも能力が無いので、残るかと思ったが
「僕も足手まといにならないようにするから、一緒に連れて行って下さい。」
あれ?
いつもの女性言葉では無く、普通の話し方で言ったコサイに違和感を感じた。
「でも、本当に今度は命を落とすかもしれないから、コサイは残った方がいいよ」
コサイが珍しく強い口調で
「クリカが心配なんだ!」