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episodo44 死の旋律を打ち砕け!①

 リアムは絶叫が轟いた方向に向かって即座に駆けていく。アリアと太郎丸は一瞬遅れるも、間もなくリアムに並走した。


「助ける……の?」


 リアムはしばしの間を置き、


「まぁ1人でも生き残っていれば討伐の証人になるからね」


 鋭い風切り音を身に受けながらそう答えれば、太郎丸が呆れたような口調で言う。


「あの女からあれほどの罵詈雑言を浴びせられたというのに……吾輩だけなら完全に見捨てている。リーダーはリアムだから従うがほとほと酔狂よな」

「太郎丸の言い分もわかるけど討伐の証だけを持参したところで聖女が納得するかは微妙だから。これも依頼の範疇内だよ」

「リアムは優し……い」

「僕の話を聞いてた? なんでそうなるの?」

「アリアにはわかるか……ら」


 反論するもアリアは微笑をたたえるばかりで認めようとはしない。リアムは内心で舌打ちし、それからは無言のまま森を駆けていると、

 

「──濃い血の匂いがする。グリムリーバーのものではない」


 太郎丸の言にリアムは頷く。程なくしてリアムでもわかるくらいむせ返るような血の匂いが鼻をついてきた。


「やっぱり遅かったか……」


 最初に目についたのは木立に降り注ぐ鮮血の跡だった。続けて視界に入ってくるのは無残に体を引きちぎられたレイチェルの亡骸。そして、原型をとどめていないオースティンであろう肉片が至るところに散らばっている。

 フェリスは辛うじて生きているようだが、三体のグリムリーバーに囲まれて完全に逃げ場を失っていた。


(間に合うかっ!)


 地面を滑るようにして足を止めたリアムは、左腕を突き出しながら右手を左手首に固定すると、今まさにフェリスの背後から襲い掛かるグリムリーバーに向けて黄金に輝く鎖を飛ばした。

 〝顎門(あぎと)(いまし)め〟は波打つような軌跡を描きながらグリムリーバーの体に巻き付き、間一髪のところで拘束に成功する。


「アリア!」

「わかってる」


 鎖を引きちぎろうと遮二無二もがくグリムリーバーに素早く詰め寄ったアリアが首を跳ね飛ばしたことで、残る二体は飛び跳ねるようにアリアから距離を取った。


(やっぱりこっちのグリムリーバーも同じか)


 リアムは顎門の戒めを解除しながら太郎丸に命令を飛ばした。


「太郎丸! グリムリーバーをこっちに近づけさせるな!」

「もとより承知ッ!」


 牙を剥き出しにした太郎丸が「ヴオンッ!」と獰猛に吠える。太郎丸の体毛が一瞬にして針のように変化すると、グリムリーバーに向かって一斉に襲いかかる。

 無数の針を浴びたグリムリーバーは、けたたましい凶声を上げながらさらに後退していく。

 その隙にリアムはフェリスの下へと駆け寄った。

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