八十六話
六十二話(配信回)の後に掲示板回を追加しました。
「そういえばハスバさんとのコラボにも一緒に参加するんですよね」
「はい。そうですよ」
「今のコラボの話はそれとは別で良いんですよね?」
「はい!」
良い笑顔で肯定されてクライシスは悩む。
その様子を察したシクレはやっぱりダメになるのか不安だ。
「………どうしましょうか。先にコラボしますか?それともハスバさんと終わってからにしますか?」
「そっちですか、良かった。………どっちにしましょうか?まだ日にちも決まってないんですよね?」
シクレの言葉に頷くクライシス。
下手に予定を決めて被ってしまうのも避けたい。
先にハスバとのコラボ予定日を決めていたほうが安全だ。
「連絡は………。社会人って今の時間も仕事ですよね……」
「多分?」
今の時間に連絡しても確認する余裕は無いだろうなと考えるクライシスたち。
そこまで考えた基本的な内容は既に決まっていたことを思い出す。
「コラボの内容は一緒にダンジョンに挑むことだし、どうせなら派手に戦闘がメインの場所にするか?」
「そういえば話し合っていましたね」
以前の配信の途中と終わったあとにある程度のコラボの内容は話し合っていた。
それを意見の一つとして送れば後から確認して連絡が帰ってくるかもしれない。
「それはそれとして一度は顔を合わせて確認する必要があるかもしれないんだよな」
「?あぁ、それはそうかもしれませんね。私達もよく顔を見合わせて最後の確認をしていますし。とりあえず良さそうなダンジョンだけでも絞り込みますか?」
「手伝ってくれるんですか?」
「はい、当然です」
当然という言葉に彼女も参加するのだと思い出すクライシス。
それなら積極的に頼ろうと考える。
「失礼します」
「おっ、クライシスくん!聞いた!?」
「バーベキューのことですか?」
「なんだ聞いていたのか?」
「いろいろな人たちが言ってくるので」
サークルの部屋に入ると同時にフレールに聞いたかと質問されて、またバーベキューのことかと確認すると正解だった。
どれだけ話題になっているんだと呆れてしまう。
「いろいろな人たちって何だよ?」
「クラスメイトに教師にシクレ先輩と本当にいろいろな人たちが同じことを言っているので」
「本当にいろいろな人たちだな!?」
思った以上にいろいろな人たちから言われていたことを知って驚く。
そんなに教えたかったのかと呆れ、自分も同じだったと苦笑いする。
「これからも言われるかもしれないけど頑張れ」
「なんで?」
「みんな教えたくて、たまらないんだろ………」
「?」
クライシスのように強い相手に自分の役立てると証明したいのかもしれないとフレールは自分も含めて考える。
「それで次の配信はハスバさんたちとのコラボか?」
「多分、そうなるかと思います」
「多分って……」
「互いに空いている時間が重なるのに時間がかかった場合はシクレ先輩とコラボか普通に配信すると思いますし」
「そういうことね」
シクレとコラボすることに少し思うところがあったが言っていることは理解する。
結構な期間が空くことになったら言葉通りにするつもりなのだろう。
「それにしても、またシクレか……」
「はい」
「………はいって」
かなりの回数をシクレと配信していることを思い出すフレール。
下手したらソロよりもコラボ、それもシクレと配信している方が多いんじゃないかと考える。
「それで今度は何をするんだ?」
「さぁ?まだ決めてませんし。今は先にハスバさんとのコラボでどこを挑むか探そうと思っています」
「そういえばお前たちもコラボしないか話を受けていたんだっけ」
「はい」
フレールは自分たちもクライシスとハスバがコラボも話をしているのを見てコラボの誘いをしていたのを思い出す。
「シクレの次にコラボをするのか?」
「まだ決まってないんですよね。向こうの予定日とかもありますし」
「あぁ〜。学生よりも大人のほうが時間が足りないって聞くしな」
「それ次第ですかね」
学生だから時間を合わせることも比較的容易だが大人となると、それも難しいのだろう。
急な仕事で中止になったりと事務所でよく聞く。
「どんな配信をする予定なんだ?」
「一緒にダンジョンに挑む予定ですけど、どのダンジョンにするか決まっていなくて」
「二人で挑むからパーティになるもんな」
「四人です」
「四人?」
「俺とシクレ先輩とハスバさんとバーデさんの四人です」
「…………そうか」
バーデはともかくシクレもいるのかと何も言えなくなってしまう。
本当に配信のときはいつもいるなと思う。
「いつもお前から声をかけているのか?」
「いいえ?」
なんとなく頭の中に浮かんだ疑問をぶつける。
返ってきたのは否定の声。
思わず一緒に入ってきて今では机の上で何を調べているシクレを見る。
「どうしました?」
「………クライシスくんからコラボを誘われたことはないの?」
「はい。いつも私から声をかけていますね」
「……そうか。…そうかぁ」
シクレの肯定に言葉が見つからなくなる。
羨ましいという気持ちも少しはあるが、それ以上に同情が湧いてしまう。
この調子だとシクレから積極的に声をかけられているんだろうなと想像できてしまったせいだ。
もしかしたら配信が終わった次の日あたりにはもう声をかけられているのかもしれないと予想できた。