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第09話 ☆リムル、暴走☆

 一戦目の結果は引き分けなのだが、アシュレイ達は勝った気になっていた。

「どうだい? ヴェルドラの勝ちを当てにしていたんだろうけど、残念だったね」

「クックック。〝暴風竜〟との正面戦争ならば勝てなかったやも知れぬが、策を弄せば容易いものよ。これで貴様達を倒せば、我等の完全勝利というものよな」

 おいおい、俺達はかなり舐められてるぞ。

「見くびられたものね」

 ヒナタも御立腹だった。

 すかさず剣を召喚したのだが、それはルミナスから授けられたという伝説級レジェンドの武器――月光の細剣ムーンライトだった。

 そしてその身を光が覆って、輝く鎧衣ヨロイ――〝聖霊武装〟となる。

 これは本気マジだな。

 初手から手加減なしの、殺る気満々という様子だった。

 でも、それで正解だ。

 この〝最古参の三賢人トリニティワイズマン〟と称される三名は、底知れぬ不気味さが感じられる。ヴェルドラが行動不能になったのは想定通りではあるが、だからと言って油断出来る相手ではないのだから。

 ちなみにだが、消え去ったヴェルドラとは会話可能だった。

『元気?』

『ふんっ! 我、拗ねてないし』

 拗ねてた。

『それじゃあ、危なくなったら知らせるから、その時は助けてね』

『む? 我を当てにしておるのか?』

『当然じゃないか、ヴェルドラ君! だって君は、いつも言ってるけど俺達の秘密兵器なんだから!』

『そうか? そうであったな! クアーーーハッハッハ!!』

 よし、これで元気になった。

 実に単純なヤツなので、扱いが簡単で助かるのだ。

 という事で、第二戦に意識を向ける。

 特に打ち合わせした訳ではないが、何かあっても対処出来るように、俺の出番は最後に回す方がいい。ヒナタもそう思ったのか、勢いに任せて自分が出るつもりのようだ。

「冷静な判断さ。今からでも遅くないから、負けを認めて僕達の仲間にならないかい?」

「アナタ達とは相容れないと理解したから、ここで滅してあげましょう」

「残念だよ。君だって一定レベル以上の強者だから、せっかく誘ってあげたのにさ」

 アシュレイがヒナタに向き直ってそう言ったが、ヒナタは冷たく受け流した。

「遠慮するわ。私、自分の利益だけを追求する人種は苦手だから」

 ドキッ!?

 俺も自分の利益を追求しているから、ほどほどにしておこう。ちゃんと仲間には還元しているつもりなのだが、ヒナタから嫌われないようにしないとね。

 そんなふうに思っている内に、第二戦が始まる。

 アシュレイが出るのかと思ったら、壮年紳士――プレリクスの方が相手だった。

「死ぬ前に降参せよ、小娘」

 意外と優しい――と思ったら。

「そうすれば、私の眷属として生まれ変わらせてやろう」

 優しいどころか、自分勝手な理由だった。

「ゴメンだわ」

 そう受け流すなり剣を構えるヒナタ。

 相対するプレリクスも、腰に提げた長剣ロングソードを抜いて目の前に捧げている。

 そして戦いが始まった。

 ヒナタの戦い方だが、俺自身も相手した事があるからわかるのだが、慎重そのものだ。

 全てが計算づくといった感じで、無駄がない。

 閃光のような刺突技が冴え渡り、プレリクスの表情が強張った。

「ほう? これは想像以上だ」

 プレリクスは回避に成功したものの、衣服に無数の裂け目が出来ている。紙一重だったのか、若干流血している様子だった。

 しかし、当たり前のように『超速再生』を所持していたようで、プレリクスが受けた傷が一瞬にして消え去ってしまう。しかも、服まで元通りなのだからノーダメージみたいなものだった。

「フフフ、この程度の威力ならば、直撃したとて大したダメージではなさそうだ」

 プレリクスの言い方から察するに、ワザと掠るように剣を受けてみた感じだね。

 そうしてヒナタの実力を試したのだろうが、余程頑丈さに自信があるみたいだ。種族は真夜中の吸血鬼ナイトストーカーだと自己紹介するだけあって、それがバレても問題にならないと考えていたのだろう。

 そして実際、回復力は通常の吸血鬼族ヴァンパイアを凌駕している。覚醒魔王だけあって、クレイマンなどよりよっぽど上だった。

 それなのに、ヒナタは焦っていなかった。

 実に淡々としたもので、次の手を打っている。

星幽束縛術アストラルバインド!」

 いつの間にか取り出していた呪符が、プレリクスを縛っていた。

 星幽束縛術アストラルバインド物質体マテリアル・ボディーではなく、魂の器たる星幽体アストラル・ボディーを縛る技なので、肉体強度がどれだけ高かろうとも精神力が弱ければ動けなくなってしまう。ヒナタとプレリクスの根性勝負みたいなものだが、一瞬でも動きを止められるなら儲けものなのだ。

 何故なら、実力伯仲した勝負の最中に一瞬でも動きが止まってしまえば、それは致命的な失態に繋がってしまうものだから。

「ま、待て――」

 プレリクスが慌てているが、もう遅い。

「神へ祈りを捧げ奉る。我は望み、聖霊の御力を欲する。我が願い、聞き届け給え。万物よ尽きよ! 〝霊子崩壊ディスインテグレーション〟!!」

 まあ、使うわな。

 ヒナタが選択したのは、最強の〈神聖魔法〉だった。

 この魔法の直撃を受けて無事な者など存在しない――と言っても過言ではないほど、究極の破壊力を秘めた対人魔法だ。

「あっけなかったわね。格上だったから緊張したけど、私を見下してくれていたから、簡単に始末出来たわ」

 塵となって消えたプレリクスを確認してから、ヒナタが安堵の吐息を吐いて言う。

 完全に殺す気だったのかと思えば、手加減出来なかっただけか。初手から最強魔法を繰り出さないと、ヒナタでも厳しい相手だったのは確かだな。

 ヒナタのユニークスキル『簒奪者コエルモノ』は、上位者に対する絶対優位というのが特徴だ。だからこそ、ある程度は相手の実力を見極める事が出来るのである。

「鑑定結果は《失敗》続きで、プレリクスの『超速再生』も奪えなかったのよ。他にも『闇夜循環』や鑑定結果すら《失敗》する能力スキルもあったから、それを使われる前に倒せてよかったわ」

 そう言いながら、俺の方に戻って来るヒナタ。

 しかしその時、虫の知らせというか――とても嫌な感じがした。

『ヒナタ――』

 俺が警告を発するより速く、ソレが起きた。

「死んだと思ったか? 甘いぞ」

 塵になったハズのプレリクスが完全無欠状態で復活し、背後からヒナタを襲ったのだ。

 その指先にある爪は深紅に染まり、剣のように真っ直ぐに伸びている。それを手刀のように突き出して、ヒナタの背中を狙い穿ったのだった。

 だがしかし、ヒナタは辛うじて危険を察知し、身を翻した。間一髪で、プレリクスの致命の一撃を回避したのである。

「――ぐっ、視えた――『絶対不死』――ですって……」

「チッ、不意を突いたのに、血魔爪ブラッディネイルを避けるかよ」

 ヒナタは辛うじて回避するも、脇腹を抉られている。それでも、油断せずに〝聖霊武装〟を解除していなかったからこそ、致命傷は避けられたみたいだ。

 それは良かったのだが、状況は最悪だった。

 ヒナタは戦意を失っていないが、重傷を負っている。いくら聖人になったとはいえ、このままでは危険なのだ。

「ハハハハハ! どうした、剣の冴えが見る影もないぞ?」

 ヒナタに迫るプレリクスの血魔爪ブラッディネイル。十本の指から自在に生じるそれは、伝説級レジェンドとも打ち合える強度があった。しかも、自分の意思である程度は自由に変形させられる上に、撃ち出したりも出来るようで厭らしい。

 ヒナタの傷が増えていき、流れ出る血の量も増えていく。それは霧となり、プレリクスを興奮させる原因となっていた。

「うーん、香しい香りだ。物質的な血液など無粋だと思っていたが、聖人の血は甘露に勝る!!」

 紳士然としていたプレリクスが、恍惚とした表情を浮かべて叫んだ。

 ヒナタの血で酔ったのか、ヒナタを痛めつけるように攻撃を繰り返している。その狙いは勝利ではなく、自分の快楽を優先させているようで不快だった。

 しかし、それが失策なのかというと、そうでもない。プレリクスは興奮するだけでなく、力まで増大している様子なのだ。

 それに対してヒナタの方は、どんどんと体力が低下している様子だった。

 〝聖霊武装〟に欠けた部分があるのは、再生する余力すら失われている証拠だろう。

「もういい。後は俺に任せろ、ヒナタ!」

「こいつ相手は、私の方がまだ相性がいいもの。アナタに負担を押し付ける訳にはいかないわよ」

 ヒナタは鋭い眼差しで、俺の申し出を拒否した。

 その意思は尊重してあげたいけど、これ以上ヒナタが傷付く姿なんて見たくないんだよ……。

「いやいや、俺の相手はアシュレイで――」

 あ、そうか。

 ヒナタは時間を稼いでくれているのだ。

 智慧之王ラファエルさんがピピンの〝無限回廊エンドレスループ〟を解除するまで、十分を要する。現時点で五分くらいしか経過していない為、まだしばらく時間を必要とするのだ。

 それくらいなら、俺がアシュレイを相手に時間稼ぎすればいいだけなのだが、それは相手が正々堂々と戦ってくれる場合の話である。

 プレリクスとアシュレイの二人がかりで俺を狙ってくる可能性があると、ヒナタはそう判断していたのだ。

 ここでヒナタが戦線離脱すれば、一敗一引き分け。俺が勝利して初めて五分なので、敵の方がまだ優勢。しかし、これは遊びじゃないからな。

 確実に勝利を目指すならば――


《是。その可能性は否定出来ません》


 卑怯な真似はしたくないけど、それが必要だと判断すれば、俺だってやりかねない。

 何しろ俺達が負けたら、アシュレイ達が暴走するのは目に見えているからだ。

 そんなヤツ等に従うなんて真っ平ごめんだった。もしも強制されたとしても、その先にはギィ達との戦いが待ち受けている。破滅が約束されたようなものなのだから、なにが何でも拒否せねばならないのだ。

 その為ならば、ルール違反してでも勝利を目指すべきだった。

 とはいえ……今更だな。

 ここはヒナタではなく、俺が出るべきだったのだ。

「私を信じなさいよ!!」

 あっ……。

 満身創痍になったヒナタが、俺に怒りを向ける。

 俺の思考を読み取り、自分が頼られていないと悟って腹を立てたのだ。

 だが、それを言うならだ。

「まあ待て。だったらお前も、俺を信じろ!」

 ヒナタが俺に信じてもらいたいと言うのなら、俺だってヒナタに信じてもらいたいのである。

「……ふぅ。君って本当、自信家よね」

 ヒナタが呆れたように溜息を吐いて、それから微かに笑った。

 そして、降参を宣言して俺の方に戻ろうとする。

「馬鹿め! 素直に貴様を帰すものかよ! 私の眷属として生まれ変わらせて――」

 ヒナタの血で酔い過ぎたのか、プレリクスは理性を失いかけている様子だった。

 いや、勝利は確定したのだからと、ルールなどどうでもいいと判断したのかも知れない。ヒナタが負けを宣言したにもかかわらず、お構いないしに攻撃しようとしたのである。

 だが、しかし――

 それを許す俺ではない。

 右手で倒れかかってくるヒナタを優しく受け止め、左手でプレリクスの長く伸びた血魔爪ブラッディネイルを受け止める。

 俺の腕は甲殻で覆われていて、高く澄んだ音色が響かせ爪を弾いた。

「ぬう!?」

「いい加減にしろよ、酔っ払いが!」

 俺はそう言ってプレリクスの血魔爪ブラッディネイルを払いのけ、その無防備になった顔面を蹴り上げた。

「グッ!?」

 吹き飛ばされたプレリクスは、ようやく正気に戻ったのか立ち上がって俺を睨んでいる。

 そんなの気にせず、俺はヒナタを横たえた。

「――後は任せたわ、よ」

「楽勝」

「バカね、とっくに信じてるわ」

 そう言うなりヒナタは目を閉じ――気絶した。

 良かった、と思った。

 この先の光景は、あまりヒナタには見られたくなかったから。


      ◆◆◆


「あーあ、愚かなヤツ等よ。リムルを怒らせるとはな……」

 困った事をしてくれたな。これでは我の出番がなくなるではないか――と、〝無限回廊エンドレスループ〟の中に囚われていたヴェルドラが嘆いた。

 上も下もない空間。

 合わせ鏡のように、ずっと書棚が並んでいるだけ。

 ヴェルドラはそんな場所に居るのに、実に平然と構えていた。そして、どうにかしてここから脱出しようと、究極能力アルティメットスキル究明之王ファウスト』で『解析鑑定』を行っていたのである。

 危機感はなかった。

 何故ならば、もっと難解な『無限牢獄』に囚われていた経験があるからだ。

 それに、力技なら脱出出来ると、既に見当がついていたのである。

「は? 何を言っている? 状況は私達に有利だよ。馬鹿正直に一対一で戦わなくても、二人がかりで魔王リムルを倒せば終わりだもの」

 どこからともなく聞こえるピピンの声が反論したが、それを聞いてもヴェルドラは動じない。

 フッと笑って、憐れむように告げる。

「リムルはお人好しだがな、狡猾で恐ろしいヤツなのだ。我だって、いつもやり込められておるからな。ありとあらゆる想定を忘れないからこそ、魔王をやれておるのだよ」

「……だから?」

「うむ。抜け目のないリムルが、お前達が約束を破る可能性を見落とす訳がない。というかむしろ――」

 ヒナタが勝っていたら、リムルがその作戦を実行していたかもしれない。リムルは基本的には真面目で誠実、嘘を嫌っているのだが、負けられない戦いに限っては、どんな卑怯な手段であろうと平然と実行するのである。

 今回がどうだったかは不明だが、やっていても不思議ではないと、ヴェルドラはそう思っていた。

「なんだ、仮定の話ね。それなら残念、結局はプレリクスが勝ったんだから!」

 ピピンが再び勢い込むが、ヴェルドラはそれを鼻で笑った。

「違うと言っておるだろうが。お前達が勘違いしておるから、それが哀れだと教えてやったのだよ」

「は?」

「我は不思議なのだが、どうしてお前達はリムルを見て、二人がかりなら確実に勝てると錯覚したのだ?」

「え?」

「どう考えても無理であろう?」

「え、いや、だって、は? 何を言ってるの? 普通に勝てるでしょ!?」

「貴様こそ、何を言っておる。無理に決まっておるだろうが!! リムルはな、我だって倒せぬのだぞ!! ――まあ、負けもしないがな」

 そう。

 それがヴェルドラの本音、リムルに対する認識である。

 リムルの攻撃ではヴェルドラを倒せないが、逆もしかりなのだ。

 ヴェルドラが持つ全ての攻撃手段を駆使しても、リムルへは致命打を与えられない。魔素エネルギー量ではヴェルドラが圧倒しているにもかかわらず、その勝敗は千日手にもつれ込んでしまうのだった。

 かと言って、リムルの攻撃が弱い訳ではない。

 ヴェルドラだから耐えられるだけで、普通の魔人なら話にならないレベルで凶悪だった。

 八星魔王オクタグラムでも、リムルの相手になるのは上位勢だけだろう。そして、リムルを倒しきれる可能性があるのは――

「つまりだ、あの二人ではリムルを倒せぬ。しかもヤツ等は、リムルを怒らせるという失態を犯したのだ」

「失態……?」

「うむ、リムルは温厚だからな。基本的には本気を出さずに、手加減から入る。しかし、アレだけブチ切れてしまったら……」

 ヴェルドラが何を言いたいのか、ピピンにもようやく理解出来た。

 しかし、信じられずにいる。

(そんな、まさか……)

 魔王とは言っても、たかがスライムが、と思わずにはいられない。

 妖気オーラだってそこまで大きくないし、威圧感だってそれほどではない。かなりのんびりした性格らしく、マルクシュア王国への制裁だって甘過ぎるものだった。

 その行為は舐められても当然で――しかし、弱いと証明するに足る証拠は何一つない。それに気付いたピピンは、一気に顔色が悪くなった。

 演算特化のピピンでも、入力されるデータが間違っていれば、正解には辿り着けないものなのだ。だからこそ、常日頃から情報収集を怠るべきではないし、万物を観察して些細な違和感すら大切に検証しなければならなかった。

(私達はそれを怠ったんだ……)

 ピピンはそう悟った。

 しかしそれでも、アシュレイやプレリクスが負けるとは思えないのだ。

 アシュレイの強さは本物だし、プレリクスの『絶対不死』は攻略不可能。だから絶対に負けるはずがないのだが、何故だろうか?

 ピピンの胸に、一抹の不安が去来したのだった。


      ◆◆◆


 俺は静かに立ち上がり、プレリクスと、その背後で様子を窺っていたアシュレイを見やる。

 そして告げた。

「あのさあ、正直言うと、俺はお前達が何をしてようが興味なかったんだ。人を大量に殺している訳でもないし、助けを求められた訳でもない。今回の件だって巻き込まれただけだし、ある程度の事なら変に内政干渉する気もなかった」

 そう言いながら髪の毛をかき上げ、後ろに流す。

 イライラする気持ちを、少しでも落ち着かせる為だ。

「俺の大切な仲間をこれだけ傷付けたんだ、覚悟は出来てるんだよな?」

 もう我慢の限界だが、最後の確認だけはしなければならない。それを怠ると、無用な血を流してしまうからだ。

 忍耐力が試されていた。

「あっはっは、覚悟だって? それは君の方だろ、魔王リムル」

「フッ、愚かなヤツよ。この状況でこちらがルールを守るとでも? 二対一で貴様を潰せば、より安全に、そして確実に、我等の勝利が手に入るのだぞ?」

 ああ、予想通りの回答だ。

 俺はそれを聞いて嬉しくなり、ついつい笑みを浮かべてしまった。

「む? 何を笑って――ヘブッ!?」

 俺は有無を言わせず、プレリクスを殴り飛ばしていた。

 もう言質は取ったから、遠慮は要らない。

 ルールを先に破ったのはアシュレイ達なのだし、ここから先は何でもアリで全面戦争開始だった。

「あはは、無駄だよ。その程度の攻撃ではプレリクスに通用しないし、仮に殺せたとしても、復活するんだ。さっきのヒナタ戦で思い知っただろう?」

「だから?」

 俺は倒れ伏したプレリクスにトドメの蹴りを踏み下ろしながら、アシュレイへと顔を向けて聞き返した。

「回数制限があるとでも期待してるのかな? それなら残念! プレリクスはね、夜に死ぬ事はないんだよ」

 ニヤッと笑ってアシュレイが教えてくれたが、だから何だという話であった。

 今の蹴りは殺す気だったのじゃなく、単なる八つ当たりだ。ヒナタをいたぶってくれた仕返しは、これからジックリ行うつもりなのである。


《……告。十分経過したので、いつでも〝無限回廊エンドレスループ〟を解除出来ますが――》


 待機で。

 でしょうね、と言わんばかりに智慧之王ラファエルさんが沈黙した。

 当たり前だろ?

 ここでヴェルドラを呼び出したって、俺の怒りは晴れないのだから。

 我の出番が――などと嘆く声が聞こえた気がしたが、無視であった。

「どうも勘違いしてるようだけど、ソイツが不死ってのが信じられないんだよね。それってさ、条件があるんじゃないの?」

 俺はそう指摘した。

 〝霊子崩壊ディスインテグレーション〟が最強なのは間違いないのだ。

 ウチのディアブロだって、直撃すれば死ぬと言っていたほどだし。

 それを喰らっても死なないとすれば、本体は別にいるか、本当は当たっていなかったのかの、どちらかが疑わしい。

 俺がヒナタから逃げて助かったのもそれだし、どちらかと言えば本体は別、という方が正解なんじゃないかという気がしていた。

 しかし、だ。

 俺の頼もしい相棒である智慧之王ラファエルさんの意見は別だった。


《――確かに直撃していました。ただし、個体名:プレリクスの魔素が分解され、霊子すらもバラバラに散ったのを確認した直後、不思議な動きで再結合されたのです》


 この魔塔内でのみ働く未知なる力なのか、あるいはプレリクスの『絶対不死』という権能によるものなのか、どちらであっても有り得そうな理由だ。

 そして俺は、それを聞いて一つの仮説を立てた。

 この魔塔は閉じた空間になっているから、〝魂〟の拡散が生じにくい環境となっている。部屋を満たすのは魔法の光で、星明りすら差し込んでいないほどだし。

 その作りから推測されるのだが、プレリクスは陽光を苦手としているんじゃなかろうか?

 ルミナスから聞いた話だが、この世界の吸血鬼族ヴァンパイアという種族も、前世の物語にあったようにいくつかの弱点を抱えているらしい。

 その一つがメジャーなヤツで、陽光の下を歩けない、というものだった。

 ルミナスにはそんな制限などないし、彼女の配下にも陽光を超克した者達が何名か居ると聞いている。

 だから、覚醒魔王級に強いプレリクスならば、陽光など克服していると考えるのが自然なのだ――が、それが引っ掛けなんじゃないかなと、逆に思ったワケである。

 新月とは、月の光すら射さない真なる闇夜だ。

 真夜中の吸血鬼ナイトストーカーという種族にとって最高の環境なのも納得だが、その時だけ限定で発揮される権能があっても不思議はないと思った。

 それこそが――


《是。その可能性が濃厚だと推測します》


「お前の『絶対不死』ってさ、無敵っぽく振る舞ってるけど、新月限定なんじゃないのかって話さ」

「なっ――ッ!?」

 プレリクスが絶句した。

 それだけで、答えが顔に出てるというものである。

「死ね! 〝神之怒メギド〟――!!」

 俺は無造作に、プレリクスの頭上から陽光を降り注がせた。

 以前とは違い、夜間でも使用可能になった新型だった。

 俺の権能も、ユニークスキル『大賢者』から究極能力アルティメットスキル智慧之王(ラファエル)』へと進化した事で、大幅に演算能力が向上している。その上、新たな権能として『空間支配』まで扱える為、成層圏に生成した複数の巨大レンズを焦点させた光を、歪曲させた空間を通じて直接地上までお届け出来るのだ。

 プレリクスを無数の光線が貫いていく。

 一条ひとすじの光でさえ、必殺の威力を秘めていた。大気で熱拡散していないので、その温度は数十万度に達するのだ。

 如何にプレリクスが不死を誇っていようとも、それなりに苦痛を与えられるはずだが――しかし。

「グギャ!? グググッ、グハァ! こ、この程度、わ、私の『絶対不死』に『超速再生』があれば、どうという事もないのだァ――ッ!!」

 プレリクスはそう豪語して、俺を睨み付けている。

 その言葉の通り、〝神之怒メギド〟で死ぬ気配はなさそうだ。

 もっとも、俺だってこれでトドメになると思っていた訳ではない。

「陽光が弱点かどうか軽く試してみるつもりだったが、どうやら大正解だったみたいだな」

「何ィ?」

「安心しろって。今のは単なる実験で、本番はこれからなんだからさ」

 俺はそう言って、プレリクスに笑いかけた。

 〝神之怒メギド〟を使用した瞬間、とあるアイデアを閃いたのだ。それを試しながら、プレリクスのタフさがどこまでもつのか実験してみようと思ったのである。

 そのアイデアとは、このマルクシュア王国に来る前にヒナタが言った『その光牙(コアンヤア)って光術なんでしょ』というセリフがヒントとなっていた。

 獣魔術〝光牙(コアンヤア)〟は光術なのだから、それを再現しようとするなら、同じ光術である〝神之怒メギド〟を改造する方が、よりそれらしくなると思い至ったのである。

 また、〝神之怒メギド〟を反射させている水の精霊だって、〝鏡蟲(チンクウ)〟を模すように出来ちゃったり――


《是。可能です♪》


 流石は智慧之王ラファエルさんだ。片手間仕事で、俺の望む通りの改造を行ってくれた。

 〝神之怒メギド〟改――というよりは、疑似的〝光牙(コアンヤア)〟と〝鏡蟲(チンクウ)〟の完成だった。

「〝光牙(コアンヤア)〟」

 そう叫んで、俺は手の平から光を放った。

 厳密に言えば、手の平の前の空間を歪めて、宇宙からの光をそれっぽく『魔王覇気』で包んで放った訳だ。

 光の龍のように覇気オーラが形成されて見えるが、それは残像だ。実体は光速なので、視認不可能なレベルでプレリクスを貫いていた。

 空中を光の龍が乱舞しているが、それも全て残像である。〝鏡蟲(チンクウ)〟を模した水の精霊が生み出したレンズに、太陽光が反射しているだけなのだ。

 しかし、見た目だけはかなり精度が高いものになっていた。

 形から入る俺としては、かなり大満足の出来栄えであった。

「うん、いい感じじゃないか。これなら、次のヤツも成功しそうだね」

 俺は実験結果に気を良くして、そう呟いた。

 それに不吉な予感を覚えたのか、プレリクスが青褪めている。

「ま、待て――」

 何か言いかけているが、無視した。

 ヒナタの言葉を思い出していたからだ。

『ついでに言うけど、〝霊子崩壊ディスインテグレーション〟は光熱を発していないから、対象を閉じ込めて熱ダメージを与えたりとかも出来ないわよ』

 〝霊子崩壊ディスインテグレーション〟では無理でも、〝神之怒メギド〟なら可能だと思うんだよ。

 思いついたのなら、即実験してみるべきだった。


《是。いつでも可能です!》


 ほら、智慧之王ラファエルさんだってノリノリだしさ。

 これはもう、実行するしかないという話なのだ。

「〝光牙(コアンヤア)〟最大出力!!」

 なんて叫んでみたが、いわゆる一点集中型の〝神之怒メギド〟だった。

 手の平から放出しているように見せているが、実際にはプレリクスの頭上から、陽光を収束させて降り注がせている。

 その直径は人ひとりを呑み込んで余りあるほどであり、模擬〝光牙(コアンヤア)〟で包み込んだ内部熱量は凄まじい事になっているであろう。陽光が弱点かどうかとか関係なしに、必殺の威力を秘めていそうであった。

 光の円柱に包まれる形になったプレリクスは、紳士然とした態度を投げ捨てて苦しんでいる。

「グギャーーーーォォオオオッ――ッ!?」

 聞く者まで怯えそうなほどの、苦悶の叫び声を上げていた。

 けれど許さない。

 これで死ぬとは思っていないし、ヒナタをいたぶってくれた御礼はキッチリお返ししなければならないのだ。

「グゥオオオォーーーッ、ピピーーーーlンッ!! 空間を閉じてくれぇ、早くゥ、コイツの邪魔を――」

 プレリクスが必死に叫んでいる。

 陽光で焼け爛れるも『超速再生』で復活し、それを何度も繰り返しつつ、どうにかこうにか声を張り上げる事に成功したようだ。しかしそれが限界で、俺の〝神之怒メギド〟からは逃げられずにいた。

 超低コストだから、連続稼働しても疲れない。それが〝神之怒メギド〟の長所の一つ。つまりプレリクスは、もう動けなくなったも同然なのだった。

 そして、助けを求められたピピンの方も、そう簡単には要望に応えられないだろう。

 何しろピピンの相手をしているのは――

『やってるよ! やってるんだけど、何よ! もう遊びの時間は終わりです、って、誰が介入してるのよ!?』

 智慧之王ラファエルさんだよ。

 演算特化を自慢していたが、俺の相棒に勝てるわけがない。


《当然です!》


 うむ。

「諦めろ。もっと手こずるかと思ったけど、お前はもう終わりだよ」

 俺はそう告げて、プレリクスへの興味を失った。

 そして最後に残ったアシュレイへと視線を向けて、直刀を抜き放って正眼に構えたのだった。


      ◆◆◆


 不味い事になった――と、アシュレイは思った。

 この時になってようやく、魔王リムルを過小評価し過ぎていたのだと悟る。

 聖人ヒナタと互角か少し上、という認識だったが、それは大間違いだった。蓋を開けてみれば、比較にならない化け物だったのだ。

(――どうする? ピピンはヴェルドラを封じ込めるので手一杯だし、プレリクスはあの様だ。助けは来ない以上、僕が何とかするしかない訳だが……)

 実際、勝利は確実だと考えていた。

 アシュレイとプレリクスはほぼ互角だが、総合力ではアシュレイの方が上回る。

 天候や日時などに左右される事なく、あらゆる状況下で万全の肉体性能を発揮出来るからだ。

 逆に言えば、特定条件下ではプレリクスの方が強いのである。

 それが――〝今〟だった。

 陽光が完全に遮られる新月の晩ならば、プレリクスの『絶対不死』が発動されるのだ。

 勿論、日の光の射さない地下空間などといった、特殊な環境下でも条件は同じだ。

 プレリクスの弱点は陽光。夜や昼といった概念ではなく、れっきとした自然現象なのだった。

 それがバレても、新月ならば手立てはない。そのハズだったのだが……魔王リムルは『空間支配』によるとんでもない裏技を使って、真夜中に太陽を現出せしめたのだった。

(無茶苦茶だ! その発想、普通は思いついたりしないぞ!?)

 出来るかどうかで問われたら、アシュレイにも不可能な技だった。

 アシュレイだって『空間転移』などは可能だが、別の場所と空間を繋げたまま長時間維持するなど、とんでもなく演算処理が必要となり、脳のキャパシティをオーバーしてしまうだろう。

 瞬間なら可能だが、それでは意味がないのだ。

 それ以前に、陽光を持ってこようという発想が浮かばなかったので、それを実現させたリムルに対して畏怖の念を抱いたほどだった。

 それに魔王リムルは、現在行使中の〝神之怒メギド〟という技が通用しなかったとしても、他の手段を隠し持っている様子だった。

 ハッタリかと思ったが、それは本気だと思い知らされた。

「まあさ、殺せない相手なんてイチイチ相手すんのも面倒だし、最悪は封じてしまうつもりだったけどな。〝神之怒メギド〟が通用したんなら、そこで仲間がやられるのを見学して反省してろ」

 などと、実に淡々と次策を口にしていたのだ。

(何らかの封印技も所有してる、って訳かい。しかも、この高難易度の技を演算処理しながら、同時に行使可能って事だよな? 有り得るのか、それ?)

 異常だった。

 単純な物理的戦闘能力よりも、その多彩な権能の底が見えない事実が、アシュレイを委縮させていた。

 そして現状――

 一対一の戦いが始まろうとしている。

 プレリクスを鎧袖一触した相手に、アシュレイが勝てるかどうか……。

(いや、まだだ! 魔王リムルはプレリクスの弱点を適切についたからこそ、労せずして勝てただけだ。だったら、実力勝負において僕が負けるはずがない!!)

 アシュレイはそう思い直し、闘志を漲らせた。

 ここで戦わずに負けを認めるのではなく、魔王リムルのハッタリに飲まれず勝利する道を選んだのだ。

 しかし現実は無情である。

 アシュレイはそれを、自分の身をもって理解する事になる。


      ◆◆◆


 アシュレイが短刀を二本取り出して、両手に構えた。

 短刀と言っても、小刀より少し短いくらいのサイズである。

 ヨウムの仲間になった獣人族ライカンスロープグルーシスとかと、似たような感じの戦闘スタイルみたいだな。

 でも、慌てる事はない。

 どんな相手にも対処出来るように、俺だってハクロウに鍛えられているのである。

 地道な努力も大事だけど、経験は何より重要だ。

 知るのと知らないのでは、天と地ほども対応に差が出てくるものだから。

 俺の直刀の漆黒の刀身が、〝神之怒メギド〟の光を呑み込むように鈍く輝いた。その刀身に、黒炎を纏わせて、アシュレイを観察する。

 身のこなしを見るに、かなりの実力者だ。

「シッ」

 短い呼吸音の後、衝撃が走り抜けた。

 一瞬にして音速の壁をぶち抜いたアシュレイが、俺の背後に回り込んだのだ。

 そのまま踊るように、両手短剣を交互に繰り出してくる。

 一度受けてダメージ量を測定してみたい気もしたが、そういう迂闊な真似をするのは平常時だけだ。思考は実に冷静そのものだが、俺の内心は怒り狂っているのである。

「悪いな、遊んでやる気はないんだ」

 ここで大事なのは、圧倒的な力量差を見せつける事だった。

 俺としても殺す気はないが、完全に心を折って逆らう意思を根こそぎ奪ってやるつもりなのである。が、死んでしまうなら、それはそれで仕方ないと割り切っていた。

 怒らせるヤツが悪い。

 この一言に尽きるだろう。

 俺は刀身を一閃させるように、直刀を横薙ぎにした。

 その後を追って、黒炎が舞う。

 アシュレイは飛び退き、ニヤリと笑った。

「フッ、残念だったね。炎は僕も得意としているのさ」

 そう言うなり、アシュレイが変身した。

 炎身化という表現がしっくりくるが、炎の上位精霊であるイフリートに似た感じになっていた。ちゃんと肉体があるので別物なのだが、アシュレイもどうやら精神生命体だったらしい。

「ふーん。そいつは面倒だな」

 精神生命体同士の戦闘は、本当に面倒なのだ。

 相手より先にエネルギーを奪いきったら勝ち。逆に言えば、途中で止めたら倒しきる事が出来ないのである。

 完全に心を折れたら話は別なんだけど、それを証明するのが難しいんだよね。

 負けました――なんて言われても、それを素直に信じる訳にはいかないのだよ。

 まあ、俺の場合は『暴食之王ベルゼビュート』があるから、エネルギーの奪い合いは得意とするところなんだけどさ。

「その余裕、いつまでもつかな? 十字閃炎嵐撃クロスフレアストーム――ッ!!」

 アシュレイが両腕を交差させてから、繰り出した斬撃に炎を帯びさせた攻撃を仕掛けてきた。

 超高熱と言っても過言ではない威力のそれは、触れてもいないのに放射熱で人体が蒸発するレベルだ。


《告。高温プラズマ化している為、瞬間温度は一億度に達するものと思われます》


 瞬間だから大丈夫――って話ではなく、まあ、直撃しなければいいだけのこと。万が一当たったとしても、俺の『万能結界』にも熱変動無効化があるからね。

 つまり、俺には通用しないのだ。

 だって、空間に放たれた放射熱は、全て吸収してしまえばいいだけだから。そして本命の両手短刀だが、その交差点を直刀で受け止めれば、超高温だろうが俺の身体まで届かないのだった。

 まあ、俺自身にも『自然影響無効』があるから、そんなに心配しなくても大丈夫だったかも知れないな。

 それに対してアシュレイは、はてさてどこまで俺の『黒炎』に耐えられるやら。

「な、何だよコレ? 僕の身体を侵蝕して――」

 そりゃあね。

 ちゃんと『暴食之王ベルゼビュート』の『腐食』効果も付与しているし、精神生命体への特攻攻撃手段であろう『魂喰こんじき』だって発動させているのだから。

 こうして鍔迫り合いしているだけで、俺の勝利がやって来るという寸法だった。

「ちくしょう! こんな、こんなハズはない……この僕が負けるハズが……」

 どうしても敗北を認めたくないのか、アシュレイは諦めようとしない。どんどん『黒炎』に蝕まれながらも、挫けずに俺への攻撃を続けている。

 しかし、こうなるともう逆転の目はないのだ。

 進退能力にはそこまで差がなさそうだし、技量面でも大きく離れてはいない。どちらかと言えば、アシュレイの方が上だと感じる。

 それでも俺の勝利が揺るがないのは、万全サポートをしてくれる智慧之王ラファエルさんがいるからだ。

 ヒナタとの戦いの最中に習得した『未来攻撃予測』を駆使して、アシュレイの攻撃を完全に読み切ってくれるのである。技量云々の話ではなく、反則に近いほど俺が有利なのだった。

「ヴェルドラさえ、ヴェルドラさえも封じられたんだ、その腰巾着に過ぎない魔王なんかに――」

 ヴェルドラを封じたという幻想が、アシュレイの心の支えになっている様子。なので俺は、それが間違いだと教えてあげる事にした。

「うーん、そんな君に残念なお知らせだ」

 そう告げるなり、智慧之王ラファエルさんにお願いして〝無限回廊エンドレスループ〟を解除してもらったのだった。


      ◆◆◆


 出現したヴェルドラを見て、アシュレイの心も折れた。

 同時に戻ってきたピピンも、目は虚ろでガタガタと震えている。

 何があったのかはわからないが、ピピンの編み出した秘奥はとっくの昔に破られていたのだろうと思われた。

「無理。絶対に勝てない……」

 ピピンがうわ言のように呟いている。

 それを見てアシュレイも悟るしかない。

「僕達は負けたのか……」

 両手から短刀をポトリと落として、アシュレイはガクリと膝をつく。

 そんなアシュレイの耳に、同意の呟きが聞こえた。

「ああ。私達の負けだ」

 プレリクスだった。

 いつの間にか光の柱が消えて、解放されていたようだ。

 呆然と立ち尽くしたまま動かないが、その言葉の通りとっくに諦めたのだろう。

 完膚なきまでの敗北で、決着したのだった。

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