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武器をこの手に

あれからまた1週間経ちましたが、まだまだ毎日更新で行けそうだぜ! というかキリのいいところまで行きたいぜ! 具体的にはクラス対抗戦終わるところまではなんとかかんとか……いつも読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。オラに少しだけ力を分けてくれ……!(プラセボ効果)

 翌日、日曜の朝、俺はオリザちゃんとふたりで王都へと向かっていた。


「いちちち……ジイさんたち、本気出し過ぎだろ……」


 身体のあちこちに包帯を巻いた姿で。

 俺はガラハドさんとジョニーさんの武器を飛ばし、さらに1人を転倒させて最後の1人にまで迫ったのだが、そこで相討ちとなった。

 ジイさんたち、強すぎる。

 4人目も行けるかと思ったんだけど、まさか……伸びる特殊警棒だとは思わないじゃん? 思いっきり左肩をどつかれて、今も紫色に腫れてる。

 終わってから、「あ~! 目がのう、これが老眼でなかったらの~!」とか「全盛期の反射神経があれば後れをとることなどなかったんじゃ!」とか言い訳言い出したあたりでこれはマズイとは思ったんだ。

 ジイさんたちに、火が点いた。具体的にはとんでもない厳しさで俺たちをしごき始めた。

 そのせいで全員が全員、かなりの傷を負うことになった——だもんで今日は休養日。「休むのも訓練」とかガラハドさんも言っていたけど、トレーニングの最後には4人のジイさんがいちばんくたびれてたもんな。それを背負って歩かされる俺、スヴェン、トッチョ、マールの4人。


「これ……女子にやらせていいトレーニングじゃないだろ!」


 オリザちゃんも太ももにアザができたとかで包帯を巻いていた。彼女が包帯を巻くとむしろゴシック系ファッションの趣がある。


「でもオリザちゃんも勉強になっただろ?」

「……まあ、な」


 むすっ、としつつもオリザちゃんは同意した。

 ジイさんたちのしごき方は半端なかったけど、俺が見てもクラスメイトたちがみるみる戦い方を吸収していくのがわかった。

 特に、貴族より平民クラスメイトたちの伸びは著しかった。トレーニング開始時にはなされるがままに叩かれていたのに、夕方にはジイさんたちの攻撃を見切るようになったのだ——初撃だけ、だけど。

 逆にトッチョみたいに道場でしっかり学んできた連中は適応に苦労していた。

 だから、だろう。


「今日は1日自主トレすっぞ! 貴族の意地、見せてやろうじゃねえか!!」


 と張り切っていた。うん、スヴェンもなぜかそこに紛れ込んでいたけども。だからここにいないわけで。


「で? リットはどうしたんだい?」


 学園を出たところでオリザちゃんが聞いてきた。


「ん~、なんか用事がある、って」

「用事ねぇ……」

「オリザちゃん、リットが気になるの?」


 おいおい、なんだぁ~? 俺の知らないところでふたりでこっそり会ってたりするのかぁ~?

 なんて下世話なことを思ったんだけど、違った。


「いや……アイツさ、家が食料系の卸をやってる商会だっていうなら、どうしてさっさと肉を出さなかったのかなって」

「え? そりゃ、実家に迷惑かけらんないからでしょ。貴族が圧力掛けてるような取引相手、ふつう持ちたくなくない?」

「ま、それはそうなんだけどさ。でも、リットの実家のことをアンタも知らなかったんだろ?」

「それは、まあ……」

「同室のお前が苦労してるのに、アイツはなにもしなかった」

「——オリザちゃん、そういう言い方止めてくんない。リットはよくやってくれただろ」


 俺が怒って言い返すと、オリザちゃんは横目で俺を見る。


「別にいいさ。アンタがアイツを信じるっていうならそれで。でも、秘密を抱え込んだままの付き合いって、疲れないか? これからも同じ部屋なんだぜ」

「…………」


 それは、そうだ。

 オリザちゃんは彼女なりに心配して言ってくれたのかもしれない。ちゃんと、リットとわかり合えと。

 でも——それを言うなら俺も秘密を抱えているんだ。

 マテューの部屋に忍び込み、いろいろ知ってしまった——。


「うん……ありがと。帰ったらリットと話してみる」

「そうしな」


 と言ったあと、「さて」とオリザちゃんは背伸びをひとつして、


「アタシの装備、どんな仕上がりになってっか、楽しみだぜ!」


 俺たちが向かったのは「穴蔵鉄血鍛冶工房」だ。

 工房に着くと、デコさんとボコさんのふたりが出迎えてくれた。


「お〜、来おったか! 武器はできとるぞ!」


 デコさんがオリザちゃんに渡したのは、黒革でできたブーツだった。

 パッと見ではただのコンバットブーツだが、これにはいくつかの仕掛けがある。


「おおっ。なかなか渋い出来じゃん」


 オリザちゃんが喜色満面でブーツを受け取った。


「まずはこの部分じゃな」


 引っかけてパチンと金属で固定できる金具がついている。ここには、足の甲側にプロテクターや、突起のついた攻撃的な金具を取り付け可能だ。反対にかかと側にもつけることができる。

 付属品(アタッチメント)システムである。

 これのいいところは、移動時は外しておいて戦闘時につける、といったことが可能なところにある。これから先、森での演習があったときにも威力を発揮するだろう。


「おお~。簡単な取り付けなのに、しっかり固定できるんだな!」


 付属品を取り付けたり外したりしたオリザちゃんは、その場で飛び跳ねている。


「動きやすい!」

「そうじゃろそうじゃろ?」


 作り込んだであろうボコさんは得意げに鼻の下をこすった。


「それで、例の仕掛け(・・・・・)もついておるぞ。使い方はここに書いておくからしっかり使いこなすことじゃな」

「ありがとうな、デコさんにボコさんよ! 使うのがすげー楽しみだよ!」

「ま、まあ、これくらいたいしたことはないぞ」

「う、うむ、楽しんでやらせてもらえた」


 オリザちゃんの笑顔&感謝に、なんだか照れている凸凹コンビ。

 俺は、オリザちゃんってもしかしたらオッサンキラーなんじゃないかという気がした。


「じゃあ、お金払って行くか、ソーマ」

「いや。俺の用事もあるんだ」

「ん? アンタもなんか頼んでいたのかい?」

「まあね」


 俺はにやりとした。




 鍛冶工房を出て学園に向かう途中で、オリザちゃんはお兄さんとばったり出くわした。王都に住んで官庁勤めだというお兄さんと会うのは数か月ぶりということらしく、ふたりで食事をしにいくことにしたようだ。


「兄貴なんてどーでもいいんだけど、ここで放っておいたら実家で親父に怒鳴られるから、しょーがなく食ってくる」


 と、わかりやすいツンデレの言葉を残して。オリザちゃんのお兄さんは、優しげなインテリさんだった。

 それはともかく、黒鋼寮に帰った俺は、早速クラスメイトたちを呼び出した。

 ちょうど昼飯が始まる少し前の時間であり、みんな寮にいた。疲労のあまり「もっと寝かせてくれ」と言うヤツや、身体が痛いと泣き言を言ってるヤツもいたけれども、全員集合だ。


「いったいなんだよ、全員呼び出しって……ってなんだこれ?」


 ロビーのテーブルに、白い布を掛けられてこんもりしているものがある。ちなみに置いたのは俺だ。

 怪訝な顔をしながら、トレーニングを切り上げてきたトッチョが触ろうとするのを止める。

 ふっふっふ。あわてなさんな。


「さて。統一テストのときには俺、みんなにハチマキを配ったよな」


 クラス全員でがんばっていこう、という意味を込めてのハチマキだ。

 では対抗戦ならなにがあればいいか?

 と考えたときに思いついて——デコさんとボコさんにお願いしたんだ。


「まさか、ソーマ。今回も俺たちになにか?」


 トッチョが聞いてくるので、俺はうなずいた。


「これは俺からみんなにプレゼントだ」

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