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放課後デート(煮えたぎる鉄血☆鍛冶工房編)

本日2回目の更新ですのでお気をつけください。

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 月曜が座学で良かったと心底思うぜ。1日武技の授業で放課後に王都に行くとかなったらさすがに体力がきつい。

 あ、一応言っておくけど「月曜」とかいう呼び方は俺が心の中でそう呼んでいるだけな。こっちの世界にもちゃんと曜日の考え方があって、違う呼び方がなされている。

 週の最初は、過去の聖人であるアルキオラ=クリュンティヌスが悟りを開いた日を意味する「アルキオラ=クリュンティヌスの授智(じゅち)曜日」。庶民はこれを略して「アル曜日」。ただこれを貴族が言うとあまりに不敬、かつ教養なしと思われてしまうのでみんな曜日じゃなくて日付を指摘するんだわな。

 な?

 バカバカしいだろ?


「おい、お前ら……!」


 黒鋼寮の前、授業が終わってそれぞれ準備してからベンチのところで待ち合わせをしていたんだけども、女子寮から出てきたオリザちゃんは、


「おお、可愛い!」


 黒のニーハイソックスにチェックのスカートという鉄板の組み合わせ。上はボタンダウンのシャツにスカーフをネクタイみたいに巻いていてこれまたふだんの印象とは違って、きちんとした身だしなみ。


「か、可愛いじゃねえよ!? なんなんだよ、お前ら! 制服じゃねーか!」


 そう、俺たちは制服のままである。黒のパーカーだわ。

 俺は背中にリュックを背負っていますがねえ……。


「いやさ。王都に行くのになに着ていったらいいのかって聞いたら、『庶民が気取って私服を着ても浮くだけだから制服でいい』ってリットが」

「うんうん。大体ソーマがろくな私服持ってるわけないじゃん」


 俺の横にいたリットがうなずいている。

 今日の王都行きはオリザちゃんが発案ではあるけど、チームみんなで行くべきではという話になっていた。


「それはまあ、そうかもしんねーけど……! あー、もう、それじゃアタシも着替えてくる!」

「いやそのままでいいよ。オリザちゃん可愛いじゃん」

「かっ、可愛いとか簡単に言うんじゃねーよ!」


 そういう言葉を言われ慣れてないのかな。顔真っ赤だ。可愛い。


「え、えぇっ、着替えちゃうんですか!? せっかく可愛いのに……」


 とそこへ、女子寮から出てきたトッチョの双子の妹、ルチカが言う。

 そのルチカは制服姿だけどな。


「ん、ルチカも王都に行くのか?」

「いえ、そうではなくて……」

「ルチカ! こっちだ!」


 男子寮の扉が開いてトッチョが顔を出した。


「あ、うん。今行くから——チーム会議だってお兄ちゃんが張り切ってて」

「ほー」


 トッチョのところもチームでまとまろうとしてるんだな。いいねいいね。

 ルチカが手を振って男子寮へと入っていき、


「それじゃ俺たちも行くか」

「……はぁ。まあ、いいよ、この服のままで……で、お前が背中に背負ってるのはなんなの?」

「これは個人的なアレがソレなんだ」

「言う気がねーならそう言えよ。それじゃスヴェン(修行バカ)はどこだよ? チームで行くはずだろ」

「スヴェンはちょっと……な」

「どーせ修行だろ。なに思わせぶりな顔してんだよ」

「なーんだ知ってんじゃん」


 オリザちゃんの言うとおり、王都に行くくらいなら剣を振っている。それがスヴェンである。

 さて、そんなわけで俺たちは王都へと向かった。

 とは言っても学園は王都に隣接しているので、王都方面の門を出れば、歩いても10分ほどで着いてしまう。

 そんな王都だが、俺がここに来たのは2回目だ。

 1回目は入学試験だったから、来たと言っても馬車で試験会場に直行して、そのまま帰ってきたような感じだ。


「おー、人いっぱい!」


 だもんで、俺が王都の街を歩くのは実質的に初めてみたいなものだ。


「大声を出すなよ、恥ずかしいだろうが。まあ田舎出身のアンタはこんな光景見たことないかもしれないけどな」


 ふふん、と自慢げにオリザちゃんが言う。


「は~? バカにするなよ? これくらい見たことあるけど?」


 週末の原宿とかマジやべーんだぞ? テレビで見たわ。


「なーに強がってるんだか。ああ、そう言えば王都試験がここだったっけ? それで見たってことか」

「言うてオリザちゃんだって別に王都出身じゃないだろ」

「バッ、そ、それはそうだけど、アタシは何度も王都に来たことがあるんだよ」

「そうなの? じゃあ道案内お願いできる?」

「…………」

「……オリザちゃん? もしかして方向音痴系女子?」

「なんだよそれ! べ、別に地図が読めねーとかそういうんじゃねーからな! アタシが出かけるときは必ず使用人がついていたから……」

「森に入るときは、必ず誰かといっしょに入るんだよ?」

「子ども扱いすんじゃねーよ!」

「ぷぷ」

「てめぇー!」

「はいはいはいはい、そこまで」


 と俺とオリザちゃんの間にリットが入ってきた。


「今日の目的、わかってる? オリザ嬢の装備品でしょ? イチャイチャしてたら日が暮れるよ」

「イチャイチャなんかしてねーよ!」

「ごめんごめん。オリザちゃんが可愛くてつい」

「てめぇソーマ!」

「ストーップ!」


 俺とオリザちゃんの間でリットが声を上げる。


「はぁ〜……。何度も言わせないでよ。鍛冶工房だってもうちょっとで店じまいっていう時間だからね? わかってるの? ふたりで騒ぎたいならボクを連れてくることなんてなかったじゃん。ただの道案内(ガイド)として連れてきたの? 確かに道くらいならわかるけど。地図書いてボク帰っていい?」

「そ、そうじゃないよ……ごめん、リット。急ぎます」

「…………」


 俺は素直にうなずいたが、オリザちゃんはなんだかちょっとだけ驚いたような顔でリットを見ていた。


「じゃ、こっちだよ。『穴蔵鉄血鍛冶工房』は歩いて15分くらいかかる」

「あ、穴蔵……なに?」


 なんかすごい名前が出てきたな。


「『穴蔵鉄血鍛冶工房 花の都なんざカンケーねえ! 俺たちゃ汗と血を流し鉄を打つ王都支店』が正式名称」


 なんかすごい名前が出てきたな!


「ソ、ソーマ、一応言っておくけど、別にボクが決めた名前じゃないし、ふだんから利用しているわけでもないから。学園の黒鋼クラスはたいていここにお世話になるって聞いたから、それで知ってるだけだから」


 言い訳がましくリットは言ったが、すいすいと通りを進んでいく。

 表通りから裏通りへ、裏通りから表通りへ。街路樹に囲まれた用水路の橋を渡り、半ば崩れた階段を上り、石畳を踏み、露出した地面を歩き、やがて俺の鼻は煙臭さを感じ取った。


「おお、あの辺か」


 もくもくと黒煙の立ち上っている一角が見える。

 立ち並ぶ建物は少々ぼろく、くたびれている。壁の塗装が剥がれていたり、屋根が修繕してあったり。

 ただ、走り回っている子どもたちの表情は明るいし、台車を引いたオッサンが売り物について声を上げている。活気のある場所だ。

 だけども、


「リットくん、マジでここなのかい……?」

「異世界転生/転移」のファンタジー部門ランキングで2位まで上がっていました。「ブックマーク」「評価」へのご協力、ほんとうにありがとうございます。

これが1日2回更新の効果なのか……?(戸惑いの目)


ここまでお読みいただいて、

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