そこに気がつくとはやはり天才か……(バレバレ)
ついに……今日!「学園騎士のレベルアップ!」が発売されます!
是非ともお買い求めのほどよろしくお願いいたします(直球)。
サイン本も一応作ったんですが、どこの書店にあるかはわからないです、ごめんなさい!!!
あ、アニメイト・とらのあなには購入特典SSが配られると思いますので、読みたい方はそちらにどうぞ。
「ソーンマルクス。米程度じゃなく、他にないのか?」
米程度ってワケじゃないんだけどね、俺にはさ。
でも先生がそこまで言ってくれるのか……。
「うーん……あ! それじゃ先生、1つ頼まれてくれませんか?」
「いいぞ。なんでも言ってくれ」
「じゃあ……」
俺は、
先生は腕組みし、「う~~」とうなり、顔を赤くして天を仰ぎ、顔を青くして首を横に振り、額に浮かんだ汗をハンカチで拭う。
「………………ソーンマルクス」
「はい」
「…………………………すまない…………それは、無理だ……」
「その結論が出るまでにずいぶん悩みましたね!?」
「いや、なんとかしてやりたくていろんな手段を考えたんだが……どうしても合法的には無理だ。非合法でも可能性が低すぎる」
いや、先生? 非合法ってなに? 可能性が高かったら法律くらい犯しちゃうよって話ですか?
この人、妹さんのことでやらかした無茶といい、危ういところがあるよね……。先生にしたらいけない人種では……。
「まあ、大丈夫です。もしできればいいなって思ってただけなんで……でも先生がそこまで言うってことはよほど難しいんですね。『学園長に魔法を教わる』っていうのは」
そう、俺が先生に頼んだのは「学園長への仲介」である。目的は「魔法を教わる」こと。
せっかくスキル「魔導」なんてものがあって、それがすくすく成長しており、いまは30レベルのちょい手前くらいまでなっている。
だけど俺は魔法の使い方もどんなものがあるのかも知らない。この世界では希少中の希少だというし。
それを学園長がサラッと使ったものだから興味が湧くってものじゃんね?
「学園長はな……平民が相手となるとことのほか頑なになられるのだ」
「あー、平民嫌いってヤツですか。やっぱり高位貴族なんですかね」
「高位貴族なのは間違いないが、それだけでもないような気がするが。——すまないな、ソーンマルクス。なんでも言ってくれと言いながら、なにもできなくて……」
深々と頭を下げた後、先生は去っていった。
「『
スヴェンが叫ぶと、走ってきた鹿の首が切れて飛んだ。ぷしゃーと噴き出る血の量がえげつないんだが、何度もやっていれば返り血を避けるのも慣れたもの。スヴェンはひらりと横にどいて血をかわした。
森林の大地に、血が吸われていく。
「……なんてことはない、相手だ」
カチン、と剣を鞘に収めたスヴェンだったが、鼻の穴が大きくなってひくひくしているあたり、鹿を仕留めたことがうれしくて仕方ないんですね。わかります。
今は日曜の昼過ぎだ。これで仕留めた鹿は3頭目なので今日は店じまいだな。
「スヴェン、そういうときは『またつまらぬものを斬ってしまった』って言うんだぞ」
「……! なるほど、師匠。勉強になります」
「勉強じゃないから」
「すばらしい決めぜりふ! 『また……つまらぬものを斬ってしまった……』なるほどぉ!」
やべぇこいつ聞いてねぇ。すでに練習まで始めている。俺のオリジナルだと思われると困るんだが……このセリフはあくまでも斬鉄剣を持っている、いつだって和服で怪盗3世と組んでいるあの人がオリジナルだ。
とそこへ、ヒィウッ、と風を切る音が聞こえ、俺の真横の木になにかが突き刺さった。
ぎくりとして見ると、ビィィンと震えたそれは1本の矢。
——ごめんなさぁぁぁいぃぃぃ!? ケガはありませんかぁぁぁぁ!?
だいぶ離れた場所から走ってきているのはオービットだ。その周囲には○×◇の3人がいるが、どうやら向こうで狩りをしていた流れ矢が飛んできたみたいだな。
矢は放物線を描いて、意外と遠くまで飛ぶ。狙いの先になにもないかは確認するだろうけど、落ちた先に誰かがいるかまでは注意しづらいものだ。
「大丈夫だ! でも気をつけろよ!」
俺が手を振ると、
——すみませぇぇんんん!
とオービットがぺこぺこ頭を下げ、○×◇がなんだか言い合っている。どうせ矢先の確認を○×◇に任せていたのに、適当になっていて、その罪のなすりつけ合いでも始まっているんだろう。
「……しっかしすげーな、これ」
幹に刺さった矢を見ると、
「師匠、オービットが覚醒したのは【弓術】の『
「うん。弓を引くときに、いつもより強く引けるような感覚があるらしい。しかもこれまでと同じ狙いでいいんだとか」
「純粋な威力向上ですね」
「ああ……弓は遠距離だからな、そのパワーが底上げされるだけでかなりの戦力アップになる」
「…………」
スヴェンがソワソワしている。どうせ「模擬戦したい」とか思ってるんだろうな。オービットは嫌がると思うぞ。剣対弓の1対1とか圧倒的に剣が有利だろうが。
とそこへ、
「……あのなあ!」
さっきからずっとそこにいたオリザちゃんが、口を開いた。
「あ、ごめんごめん、オリザちゃんをのけ者にして」
「ちっげーよ! そこじゃねーよ! おかしいだろ!? あれからずっと考えてたよ。そこのスヴェンがエクストラスキルを使えるようになっているのは『天稟が特殊だから、剣に特化してる』って言われればまあそんなもんかって思った。でもな! オービットまでどうしてエクストラスキル使えるんだよ!?」
「お、おう……」
「そんなに簡単に覚えられるもんじゃねーんだよ!」
そういやオリザちゃん、俺たちと同じチームに入ったからいっしょに森でも行動していたけど、鹿狩りじゃあまり役に立てないからついてきているだけだったんだよな。
それでも文句言わずにいっしょにいてくれたのは、アレか、いろいろ考えてたのか。
「それなら、同じじゃないの。オービットも弓に特化した……」
「アイツの天稟は『
「ッ!?」
「ハッ、アタシが気づかないとでも思ったかよ? そんなに驚いた顔して」
「お、驚いた……。まさかオリザちゃん、クラス全員の名前と天稟を覚えてるの!? そんなに仲良くなりたいの!? 友だち100人できるかな!?」
「驚くのはそこじゃねーだろーが!?」
「えぇっと、まぁ、その……」
「……どうせアンタにゃ、他にも秘密があるってことだろうね。座学とは言え平民が学年1位を獲るなんておかしいと思った。天稟は『
お、おお……すっげー、当たってる!
俺の秘密、早速バレそうです……と今ここにはいないリットに向けて念じてみる。木々の切れ目、上空に浮かんだリットの顔は苦虫をかみつぶしたようだった。言っちゃダメってことですね!
「そ、それもあるけど、俺はいろんなスキルを勉強してるんだよ。だからその人に合ったスキルを伸ばしてやる手伝いができる」
「ふぅーん……」
疑わしそうな目で見てくるオリザちゃんである。
「そんじゃアタシはどうなんだ?」
「オリザちゃんは【蹴術】伸ばしてるんだからいいじゃないか。それともなにか、その戦闘スタイルに思うところがあるの?」
「……まーな。こういうときだって役に立たねーし」
「あー、なるほどね」
役に立たない自分、というものをオリザちゃんは歯がゆく感じているらしい。
「オリザちゃんは【蹴術】を中心に伸ばしたほうがいいのは変わらないと思うよ」
「そうか?」
「狩猟がすべてじゃないんだし。格闘で強い貴族だっていっぱいいるんじゃないの?」
「そりゃ、まぁ」
あと、オリザちゃんが蹴らなくなったら○×◇に恨まれそうだし。
「オリザちゃんに必要なのは、ズバリ装備だね」
「装備?」
「たとえばそれ、オリザちゃんが履いてるのはブーツでしょ」
この狩猟、片道10キロという道程があるのでみんな装備は軽装になってはいるが、武器だけはきっちりしたものを持ってくるようになっていた。
ただオリザちゃんは「蹴り」が武器だ。ごてごてした金属ブーツもあるにはあるらしいが、10キロ歩くのには邪魔過ぎるために編み上げのブーツである。ひらりとしたショートスカートから伸びる生足は「これが13歳かよ……!」と思わず唸ってしまうのだが、それはまあともかく、野獣を蹴り飛ばすには少々弱いブーツである。
「ブーツに手を加えるだけでもやりようがあると思うよ?」
「どうやるんだ? いや、明日の放課後付き合え! 王都に買い出しに行くぞ」
「え、ええっ!?」
どうしてこうなった。
俺はどうやら明日、オリザちゃんと放課後デートをしなければいけないらしい。
「一応言っとくけど、デートとかじゃねーからな?」
俺がなにか言う前に釘を刺された。わ、わかってるし! それくらい!
とりあえず、あと1週間くらいは毎日更新続けます。「原稿ストック」なんていう素敵なワードはもう忘却の彼方です(自転車操業)。
昨日、「異世界転生/転移」のファンタジー部門ランキングで4位まで上がっていました。「ブックマーク」「評価」へのご協力、ほんとうにありがとうございます。
多くの人に読んでもらえることが、やっぱり書いていく力になります!
書いていく力になったなら1日2回くらい更新しろって? おいおいそんなこと言っていいのかい? 発売日だし更新しちゃうよ?
というわけで今日の夕方にも1度更新します! 書籍版、書店でお見かけの際にはよろしくお願いします〜!