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うれしはずかしご対面(with 学園長)

珍しく連日更新してしまったので前話未読の方はお気をつけください。


 学園長の部屋がどこにあるのかなんて俺は知りもしなかった。だけど学園の中心部に、白騎クラスの寮と寄り添うように建っている3階建ての建物が学園長の居場所らしい。

 3階建てまるごと全部学園長のものとか、いったいどんな執務してんだよ……。

 わかってる。ただの見栄だよね? さすがに貴族のあれやこれやがわかりだした俺からすればこれが見栄の塊だってことくらいはわかる。

 入口を守る衛兵に軽く手を挙げ、建物に入ると、入口はホールになっており、天井からはシャンデリアが吊り下がっていた。マジックランプの明かりが煌々とホールを照らし出している。

 トーガン先生は階段を上がって2階へと進む。

 壁には歴代の学園長の肖像が掲げられており、中には胸像もあった。……こんなところで仕事するなんてちょっとイヤすぎない?


「——学園長、1年学年主任トーガンでございます」


 廊下はやたら長かったが、いちばん手前の扉でトーガン先生がドアをノックした。

 そう言えば、学園長になんて会ったことなかったな……入学式にも出ていなかった気がする。話してたのはジュエルザード第3王子だけだったし。

 トーガン先生がドアを開けると——そこには「執務室」と言うには広すぎる部屋があった。黒鋼クラス並の広さなんだが?

 レースのカーテンからは太陽の光が燦々と射し込んでいて、木製のタイルでモザイク模様になっている床はぴかぴかに磨かれていた。

 ずずいと奥には暖炉があって、時期的にはもちろん火は入っていないけれども、その側には応接用なのかくつろぐためなのかソファがコの字型に置かれてあった。

 座っていたのはふたりだ。

 ひとりは総白髪のジイさんで、アフロヘア? と言いたくなるほど頭が大爆発である。どうかこの人が学園長ではありませんように。眉毛も長くて目が隠れ気味であり、筆の先みたいなヒゲが左右に飛び出していた。

 ジイさんは貴族らしい金の掛かってそうなびらびらした服を着ており、胸にはこれ見よがしに勲章を5つもくっつけていた。座っているのに両手でついている杖も真っ黒で、なんか高そうだ。

 その向かいに座っていたのは金髪のお兄さん——オッサン? 年齢は30台だろうか。20台後半ってことはないと思うんだけど。さらりとした金髪を右から左に流している童顔は年齢をうかがわせない。

 着ている服はジイさんに負けず劣らず金の掛かってそうなものだけれど、勲章はなかった。どうかこちらが学園長でありますように。


「……学園長、黒鋼クラス1年、ソーンマルクス=レックを連れて参りました」

「ああ、ああ、トーガン、ありがとう。君もここにいなさい」

「はい」


 ちくしょおおお! ジイさんのほうだったよ学園長!

 ん、じゃあそっちの年齢不詳は何者だ? 副学園長? そんなのあるんかな。


「ソーンマルクス=レック、こちらへ……そこだと声が届かなくてかなわん」


 しわがれた声で学園長が言うので、俺はのろのろとソファへと向かった。俺知ってる。ここで勧められもせずにソファに座ると減点なんだろ? 就活かな?


「……なにをぼけっと突っ立っておる。座らんか」


 あ、座るの? はいはい……うおっ、ソファ柔らかい。


「して、ソーンマルクス=レック。お前がここに呼ばれた理由はわかるか」

「——トッチョの決闘の件でしたら、あれは完全に私刑(リンチ)でした。それに多人数対1人でやり合うことは向こうも了解済みで——」


 コツ、コツ、と杖で床を叩かれたので俺は口をつぐんだ。つーかジイさん、めちゃくちゃ俺のことにらむんだもんよ。眉毛に隠れた目がぎょろって。

 霊安室みたいな沈黙が訪れる。怖。


「質問に答えよ」

「——ここに呼ばれた理由は、見当はつきますがはっきりとはわかりません」

「よろしい」


 なんか雲行きが怪しい……っていうか雲行きが怪しくない日なんてなかったわ。


「ソーンマルクス=レック。どんな手を使って上級生を不当に襲撃した?」

「不当ではありません。ていうかどんな手を使っても10人からを相手にひとりで襲撃なんて——」


 コツ、コツ。

 ギョロッ!!

 ——だからこええっての!


「……正面から腹にパンチくれてやりました。俺なりの教育です」

「きょっ——」

「ぷっ」


 学園長は目を剥いたが、童顔オッサンは噴き出していた。その後、「失礼」なんて澄ました顔してるけど。


「ソーンマルクス=レック」


 この人俺をいちいちフルネームで呼ばなくちゃいけない縛りでもあるの?


「教育とは我らがなすものであり君のような平民の生徒が行うそれは単なる暴力である」

「犬だってしつけがなっていなければ叩かれますよ」

「……君は(たっと)き血筋を犬と言ったのかね?」

「一般論であり他意はありません」


 コツ、コツ。

 ギョロッ!!

 さすがに3度目ともなると慣れてきた。


「ソーンマルクス=レック。これは学園長判断である。まったく反省も見られず凶暴性を残したままであり今後の学園の治安上君は不良であることは間違いない。すなわち、争乱を起こした罰として退学とす——」

「失礼します!!」


 バンッ、と扉が開くと——なんとジノブランド先生が入ってきた。

 え? なになに? トーガン先生もぽかんとしてるんだけど。

 ジノブランド先生は汗だくで、今走ってきたって感じでこっちに大股でやってきた。


「……無礼千万」


 学園長がギョロッとにらむと、ジノブランド先生は一瞬怯んだが、ソファのすぐ手前、トーガン先生の横で直立不動した。


「学園長。ソーンマルクスは悪くありません。彼が悪いのならばそれはすなわち担任である私の監督が至らなかったからです。彼を退学にするのではなく、私を馘首(クビ)にしてください」

「心配するな。仲良くふたりともクビにしてやろう」

「学園長!」

「トーガン先生。これ(・・)は君のところのだろう?」

「……はっ、申し訳ありません。ジノブランドくん、場を弁えなさい。今さらなにを言っても覆らない」


 おい、おいおいおい。

 俺だけじゃなくてジノブランド先生もクビになるのか? それはさすがにおかしいだろ。ていうか無駄死にもいいところじゃん。せっかく先生、悪役に徹してたのに。

 俺が抗議しようとしたときだ。


「いや、そうでもない」


 童顔オッサンが口を挟んだ。

 え。ここであなたがなんか言う? ていうかあなた誰——と俺は童顔オッサンの顔をマジマジと見てしまう。


「閣下。よもや今のやりとりの中にこの者の『可能性』とやらを見いだしたのですか」


 ジイさんが「閣下」呼ばわりしている。まさかこの童顔オッサン、偉いのでは?


「ええ。彼ならば十分この学園に通う資格はあるでしょう。それに担任教員も今回の話は関係ない」

「それはなりませんぞ、閣下。まるで反省していないこの生徒にかような判断を下すとは……初めから結論ありきであったと言われましょうな」

「結論ありきであるならば、最初からソーンマルクスくんは退学になどなりはしませんよ。私の家、グランブルク家、それに4の貴族家からの推薦状もある」


 え、なになに? この童顔オッサン——ではない、この素敵なお兄様は俺のことを擁護してくださったの!?

 あとグランブルク家って、えーっと……アレだ、リエリィの家だ!

 マジかよ……リエリィってば俺のために骨折ってくれたのかよ……。

 突然の展開についていけなくて、俺とジノブランド先生は視線を交わす。


「4の貴族家はフェンブルク家やラングブルク家と言った黒鋼クラスの生徒の家ではありませんか。しかも男爵家。反対に、彼の退学を求める手紙は15の家から来ているのですぞ」


 うおおおい! 俺、嫌われすぎな!

 ジノブランド先生、かわいそうな者を見る目をこちらに向けないで!


「ははは。それらはソーンマルクスくんに痛めつけられた子どもの家でしょう? むしろその事実が雄弁に物語っているでしょう、彼らはソーンマルクスくんと正面から戦い、敗北したのだと。彼が卑怯な手を使ったと言うのなら、決闘による再戦を求めるはずです」

「むう……」


 おお! すごいぞ閣下様! もしやワンチャン退学なくなるんじゃない!?


「ですが、学園長の立場で考えれば、彼をお咎めなしともまいりますまい」

「……もちろんです」

「ではこうしましょう。彼にひとつ、条件をつけるのです」

「条件?」


 と、聞いたのは俺だ。なんかよくわかんないけど、とりあえず俺をめぐって「退学させろ」派と「そんなこと言うなよ」派が戦ってるんだよな。

 で、退学させないならさせないで、俺はなにかしらの落とし前をつけなきゃいけない——と。


「そうだよ。シンプルなものさ、君がこの先ずっと学園で1位を取っている間は退学させないとする。2位以下に落ちたら退学だ」

「なるほど……」


 って納得できるかァァァァァァ!? ずっと1位ってなに!? 確かに今はいいけど、これから先どんどん勉強が専門的になっていったら俺たぶん負けるよ!?


「あっ……ってことは、今回の俺って1位だったんですか?」

「そうだよ」

「クラスは!? クラス順位は!?」


 俺が食いつくと、閣下は苦笑いなさった。


「自分のことよりクラスの順位が気になる、か……面白いじゃありませんか、ねえ、学園長?」

「……この者はクラス順位を賭けにしていましたからな」

「またそうひねくれたことを言う。これが順位表——」


 と、閣下が紙切れを差し出したときだった。

 ひらり、と炎が——蝶の形をした紫色の炎がやってくると紙切れを燃やしていく。

 え……?

 なにそれ?


「閣下。その紙は極秘にて他人に見せてはならないと約束したでしょう」

「……ふっ、まさか学園長の魔法を見られるとはね」


 魔法……?

 え、今の魔法?

 マジで!? 学園長、魔法使えんの!?


「ソーンマルクスくん。あとは大人の話だよ。君は掲示板を見に行きなさい——ジノブランド先生も、彼をしっかりサポートするように」

「は、はいっ」


 なんだか俺はとんでもない「条件」で退学を免れたようだった——んだけど。


「あの! ひとつだけその『条件』、追加できますか!?」


 俺は立ち上がりながら言った。

かくれござらぬ貴賎群衆の、花の”なろう”の花小説、あれあの作家を見てお心を、お和らぎやという。産子・這う子に至いたるまで、この小説のご評判、ご存じないとは申されまい!

まいつぶり、ツノ出せ、棒出せ、ぼうぼうまゆに、臼・杵・すりばち、ばちばちぐわらぐわらぐわらと、羽目をはずして今日お出でのいずれもさまに、ブクマいただかねばならぬ、評価いただかねばならぬと、息せい引っぱり、電脳世界のなろうの元締もとじめ、ヒナプロさんも照覧あれと、ホホ敬って、「学園騎士のレベルアップ!」は、いらっしゃりませぬか。

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