試験発表を見に行くためのたったひとつの冴えた(本気か?)やり方
レビューいただきました、ありがとうございます! でも、更新速度のこと言われちゃうとおじさん困っちゃうううううう! ごめんよ! もっとサクサク更新したいんだけど「察知〜」の連載と「察知〜」の書籍4巻の作業と「察知〜」の書籍5巻の執筆と……って全部「察知〜」が悪いんじゃねえか! ウソウソ! 酒飲んで遊びに行ってるおじさんがいちばん悪いよね! おじさんもうちょっとがんばります! 具体的に言うと明日もう1話更新します! 明日……だけ……だけど……(目をそらす)
「え? ここまでしなきゃダメ?」
「ダメに決まってるだろ。君、自分がどれだけマズイ状況かいまだに認識が甘いんじゃないの?」
翌朝のリットと俺のやりとりである。
朝食を食べ終わり、テスト結果の発表は朝10時だと言うので俺はそれを見に行く気満々だった。掲示板に貼り出されるみたいなんだ——合格発表かよって感じだけど。
すると最初は「ボクが見てくるから部屋にいて」と言っていたリットも「最後かもしれないから絶対いく。いくったらいく」と俺が折れないところを見ると、
「これ穿かなかったらいかせない」
と、どこから調達したのかスカートを突き出したのだ。
え、えぇぇ……まさかの女装かよ……。
「これ穿いて、フードかぶって金髪のウィッグつけたらさすがに大丈夫……だと思う」
そこまでやってなお断言できないのか! 俺ってもしかして指名手配じゃ効かないレベルで追われているんじゃ。
「イヤならいいよ、部屋で待ってて。それがいちばん安全だし」
「……わ、わかったよ。穿く、穿きますよ……」
「師匠……」
気遣わしげにこっちを見てくるスヴェン。お前だけはいつだって俺の味方だよな……。
「師匠、俺もいっしょに穿きましょうか。ふたりで穿けば怖くない」
違った。いつもどおり頭が悪いだけだった。
俺よりお前のほうがデカイからね? 悪目立ちするからね?
着替えて1階に下りていくと、ロビーには1年男子が集結していた。上級生の皆さんはもちろん出てこない。もはや試験なんてどうでもいいというスタンスは揺るがない。
と——思っていたら、
「ソーンマルクスはどうしたんだよ」
ソファにいた。寮長ことフルチン先輩だ。
もしかして俺のことを気にしてくれていたんだろうか。
「んん? なんでこの寮に女子がいるんだ? ……おいおい、ちょっと可愛いじゃねえか。俺の部屋に来いよ」
いきなり俺を見てナンパしだした。やっぱり頭の中腐ってるな。「やっぱ寮長カッケェ」とかソファの後ろで言ってるトッチョもたいがい頭がおかしい。
「いいんですか、部屋にいっても」
と俺がフードとウィッグを外すと、全員が全員ぎょっとした顔とともに「ひぃっ」とか「げぇっ」とかいう声を上げた。
「ソ、ソーンマルクスだったのかよ……確かに女装ってのはおもしれぇ選択だな。まぁ俺もいっちょついていってやるわ」
「へ? 寮長——じゃなかった、フルチン先輩が?」
「言い直すんじゃねえよ! 寮長で合ってる!」
またまた、ご冗談を。「寮長」よりも「フルチン先輩」のほうが格式ある呼び名でしょう。
「……ま、なんだお前らがどんだけ勉強したのか気になってよ。俺が入学してからこれまで、黒鋼は最下位以外の順位は見たことねぇし、もし最下位だったとしてもお前の悔しい顔を見て楽しい」
やっぱりこの人はろくでもねぇな。
俺たちはぞろぞろと黒鋼寮を出て行くと、寮の前で女子たちに合流した。さすがは女子と言うべきか、一目で見抜いたよね、俺がソーマだって。
「や、ふつうに歩き方が男っぽい。ちょっとは気を遣えよ」
とはオリザちゃんのありがたいお言葉である。おほほ、歩き方も気をつけますことよ。しゃなりしゃなり。
掲示板のある広場へと向かうと遠目にも生徒が集まっているのが見えた。そこは2階に渡り廊下がある場所で、そちらにもすでに生徒が集まっていた。
貴族の子がやっぱり多いので話し言葉は丁寧だが、この中のどいつが俺のことを目の敵にしていたのかと思うと怖い——というかげんなりする。アンタたちから見たら俺なんて「レベル12」のかよわい一般市民でしょ? そっとしておいてくれませんかねぇ……。
「君。黒鋼クラスなの?」
ぼやっとしていたらみんなからちょっと離れてしまった俺は、肩を叩かれて飛び上がりそうになった。
そこにいたのはわざとらしく白い歯を見せつつ笑みを浮かべている——黄色のリボンをチョーカー代わりにしている「黄槍」クラスの上級生らしい。
うっほー、美形だな。男性アイドルグループでセンターにいそうなレベルだぞ。原宿歩かせたら即座にJで始まる事務所にスカウトされそう。
「金髪に黒い目、なんてエキゾチックなんだ。君みたいな逸材が黒鋼クラスとはもったいない……黄槍においでよ。俺がなんとかしてあげる」
ぱちこーん、とウインクまでしてきた。
……こいつら頭沸いてんじゃねえかな。エキゾチックジャパンかよ。まず俺男だし。お前がなんとかしてクラス変えるなんて無理だし。俺男だし。そもそもそういうことできるのってキールくんレベルの公爵家とかだろ? あと最後に俺男だし。
「あ、あのー……」
「よお、色男。俺んとこの下級生に手を出そうとはずいぶん肝が据わってるじゃねえか」
そこへずずいと間に入ってきたのは誰あろうフルチン先輩だ! さすがフルチン先輩! こういうときは頼りになるよフルチン先輩!
俺が心の中で連呼しているとちらりとこっちを横目で見てきた(それはそれは残念そうな目で)。なぜだ。心を読まれたか。
「ッ、貴様! このお嬢さんにも手を出そうというのか!」
「バァカ。俺とこいつは夜にしっぽり密会する仲だぜ」
へー。寮から抜け出してさまようよろいを回避することを「密会」っていうんだー。勉強になるなー。
じゃねえよ!
「あでっ!?」
誤解を招きまくるフルチン先輩のケツに膝蹴りを入れた俺はふたりを置いて掲示板へと向かう。
「なにやってたの?」
「エキゾチックジャパン」
「はあ?」
リットはわけわからんって感じの顔をしたが、俺も知ったことではないしこれ以上俺の女装黒歴史に情報を盛らんで欲しい。
俺はきょろきょろと周囲を見回したが、キールくんとリエリィの姿はないみたいだった。リエリィはともかくキールくんは白騎の白ブレザーだから目立つはずなんだが、ここにいる白騎がすごく少ない。しかもひとりふたりという感じでばらけていて、たぶんだけど、掲示板に貼り出される内容をメモしてくる係なんだろう。
そこへ、ざわつきが一気に大きくなる。
来た。
遠くから、学園の事務員が大きな張り紙を数人がかりで抱えて持ってくる。
「き、来たよ、ソーマ」
「お、おう」
リットが俺の袖をくいくいくいくい引っ張ってくる。こらこらこらこらそんなに引っ張るなあわてるなまだまだあわてるような時間じゃなななななな。
「師匠、落ち着いて」
まさかスヴェンに言われるとは思わなかったけど、スヴェンの、13歳にしては大きな手で背中をさすられるとスーハー深呼吸する。
「いよいよだな」
「ドキドキしますっ」
「…………」
オリザちゃん、ルチカ、トッチョも俺のすぐ近くで張り紙が運ばれてくるのを見つめている。
マルバツシカクの3人衆もオリザちゃんから半径2メートルの距離に陣取って、いつでも蹴りを受け入れる準備を整えていた……ってお前らマジこんなときまでなにやってんの?
「掲示板から離れてください。成績表が通ります。……はい、ではこれより成績表の掲出を行います。まずはクラス別順位の発表、次に個人成績の掲出となります。それらはすべて1年生から順に行われます」
きたー! 1年生からだって!
やべぇ、めっちゃ心臓がバクバクいってる。
こんなふうに緊張するのって人生でも初めてかもしれない。銀行に債権放棄をお願いしに行ったときだってこんなに緊張しなかったぜ……イヤな汗が出てきた。
1年生のクラス別順位が書かれた表が、運ばれていく——。
「ソーンマルクス=レックはいないか」
「!?」
声に、ドキンとして俺たち全員が振り返った。
「へ? ト、トーガン先生?」
そこにいたのは学年主任のトーガン先生だ。白騎クラスの担任も務めているはずである。
そんな人がどうして——。
「いないのか? 寮にいるのかね」
「あ、俺です」
「いや、女子ではなくソーンマルクス=レック……ソーンマルクスくんかね? 君、どうしてスカートなんぞを穿いている?」
「……その、深い事情がありまして」
「まあ、構わん。君を呼んでくるよう言われているのでついてきなさい」
「え、えっ!? 今からあの、成績の発表が……」
「掲示は1週間に渡って行われるから後で見なさい。急いで」
え〜〜〜!? あと5分もあれば貼り出されるんですが!?
脚立に上る事務員をちらちら振り返っていると、トーガン先生は俺の手をつかんだ。
「急いで、と言ったんだ」
「ちょっ、うわ!?」
「ソーマ!」
リットたちも俺を止めようとしたいみたいだったが、相手は学年主任だ。さすがに難しいと思ったのかもしれない——俺は見たくて見たくてたまらなかった成績表から剥がされて運ばれていく。
「ト、トーガン先生! 歩きます、ちゃんと歩きますから! ていうかいったいどこに行くんですか、こんな朝から……」
言いながら俺は、いやーな予感に襲われる。
学年主任が出張ってくるほどだ。
これはもうアレですか。クビの宣告ですか。
「学園長がお呼びだ」
ほらぁぁぁぁぁぁぁあ!
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