03-16
俺は考えた。余計な作業を増やして負担をかけてしまった分、どうやって≪金剛城≫クルーの皆を労う……労わる? べきか。
悩んだ俺は答えを見出した。なんか楽しいレクリエーションを企画すれば疲れとか吹き飛ぶし、丁度良さそう。
ならば考えるのは、どのようなレクリエーションにすべきか。
いや、考えるまでもないな。直近で異常高重力恒星系でピクニックして皆楽しんでいたんだから、今度も特殊な宙域まで足を延ばせば楽しめる期待値は高そう。
【特殊宙域探索母艦カリュブディス・ジェイ】の≪蟹江≫に搭載された機能をあれこれ使って楽しもうとしてたのに、目論見が外れたのは反省点だった。
なんかそわそわする落ち着かない不思議な感じに慣れるより早く予定してた期限を使い切っちゃって、楽しかったは楽しかったのになんか消化不良だったって何人かが言ってた気もする。俺もすごい共感できたから覚えてる。
よし。なにかしら特殊な宙域へピクニックするのは決めた。
じゃあ、どこへ行くかが問題だ。次こそ≪蟹江≫を十全に活躍させたい気もするけど、そっくりそのまま同じレクリエーションを連続するのは芸がない。
ふむ……≪蟹江≫が装備次第で色んな特殊環境に耐えられるから、先に装備を見繕って行き先に見当をつけるのも良いかも。
恒星の地表探索用装備?
イカれてやがる。ほとんどそのままパルサーやクェーサーへの接近及び探索にも対応か。楽しそう。
超高濃度ガス滞留宙域探索用装備?
液体どころか固体に近い状態のガスとか存在するのか。しかもそれが滞留する宙域。想像もできない。固体に近い状態って固体じゃないのかな。
他には光波やら電磁波やら次元波やらの異常宙域に対応する装備もある。つまりそういう宙域があるんだろうな。
リストをだらだら眺めていたら見つけてしまった。【深深度亜次元探索母艦マクロシェイラ・カエンプフェリ】などという名前を。
明らかに≪蟹江≫の装備と関係ないというか、完全に別の船だこれ。でも深深度亜次元ってよく知らないのに字面だけで心惹かれる。
新しい船か。新しい船を勝手に作ったらそれこそまた叱られそうな気がするっていうか、前例を鑑みるに確実に叱られる。でもそれで誰かの作業が増える訳じゃないのなら、もう仕方ない子ねみたいな感じで済まないかな。済みそう。
作っちゃおうっと。ピクニックの行き先も深深度亜次元に決定。
行き先が決まったので、なにか、こう、前回の異常高重力恒星系とは違って暇を持て余してしまった場合に備えて楽しめそうなことを用意しておこう。深深度亜次元って何か面白いものがあったりするんだろうか。
少し調べた範囲だと、深深度に限らず亜次元には結構な難破船が漂っている可能性が無きにしも非ず。
宇宙開拓初期くらいの技術が未発達な頃だと亜次元潜航機構関連の事故が多いそうだし、現行技術でも事故に深度設定の失敗なんかが絡むと救助も難しい。そうなると調査もろくにできないままなので、≪金剛城≫のセンサー類なら色んなものを見つけられそうな予感。
そういえば、前に異次元で探検ごっことかやったら何人かハマってたっけ。
建造している【深深度亜次元探索母艦マクロシェイラ・カエンプフェリ】用に探検ごっこで使えそうな高感度センサー類でも見繕っておこう。
ついでに船外作業に使える作業艇も、と思ったら蟹でいう足の部分が船外作業艇のドックになってる。【深深度亜次元探索母艦マクロシェイラ・カエンプフェリ】自体がドックに入る時には何度も折り曲げる必要があるほど異様に脚が長い所為で、そんな太さがあるとは気づかなかった。密かなギミックがあるとはやりおる。高性能の汎用作業艇だけ作っておこう。
今回はちょっと我慢できなくて船の外観をホログラムで確認してみた。見る度懐かしい気持ちになる≪千亀≫のホログラムを掌大で基準にしてしまい、【深深度亜次元探索母艦マクロシェイラ・カエンプフェリ】はびっくりするほど大きくなってしまった。
なぜ≪千亀≫を比較対象にしてしまったのか。≪千亀≫は【衛星圏内牽引船】なんだから、一番長いところでも30メートル未満だった。一辺50キロメートル未満の母艦と比べるのは明らかに間違っている。
今度は同じ母艦のくくりである【自律汎用母艦モンスターロブスター】の≪海老緒≫と、【特殊宙域探索母艦カリュブディス・ジェイ】の≪蟹江≫にしてみる。
うーん。≪海老緒≫より≪蟹江≫の方が大きく感じるし、【深深度亜次元探索母艦マクロシェイラ・カエンプフェリ】は更に大きく感じる。大きく感じるというか、質量的に明らかに差があったんだと今知った。
≪海老緒≫はモデルが海老だけあって、まっすぐ伸ばすと幅も高さもそんなにない気がする。ドックに入る時に限らず、いつも胴体部分を二つ折りにして使ってる所為で気づかなかったが、母艦としては小柄だ。
その点、≪蟹江≫はモデルが蟹だけあって、脚を別にしても前後にも上下にも左右にもなかなか大きい。ドックに入れるときは脚をたたむものの、こっちはそれ以外は脚を展開させてるので余計に大きく感じるんだろう。
そして最も大きく感じる【深深度亜次元探索母艦マクロシェイラ・カエンプフェリ】。
≪蟹江≫と同じくモデルは蟹でも、脚が50キロメートル超えてるってもう見た目がすごい。しかも蟹のくせにその長い脚は関節が3ヶ所で第四節まである。なんでかと思ったら、ドックに入る時はめっちゃ畳んで小さくなるために必要な関節の数だった。ドックに入ってる時の見た目がすごい窮屈そうで笑えて来る。でもその状態でも≪蟹江≫より大きく感じるどころか明らかに大きい。
うむ。ドックに入る時たたんでいる脚をドックの中でどうやって整備するのかとか気になる。竣工が楽しみだ。
皆に紹介するときに叱られるのは受け入れた。