03-11
複製身体が増えたことは≪金剛城≫のクルーというか、恋人だったりお嫁さんだったりする女性陣に大層喜ばれた。
完成したばかりでまだ本体とそっくりな複製身体は一部のお洒落さん達に連れていかれ、本体や他の複製身体とは微妙に違う髪型だったり髪色だったりに変化を付けられている。
更に極一部からは皮膚をメタリックにしたいとか悪魔の角や羽を付けたいとか言われているものの、そういったオプションパーツは取り外し可能な簡単なもののみと制限させてもらっている。本体との差が大きすぎると接続や操作に支障が出る場合があるらしいのでリスクは避けたい。
フリーな体をフラフラを歩かせて何をしようかなと考える。
特に理由はないけど、いつも行かないようなところへ行きたい気分。プラント各種を集めてある区画へ行ってみよう。
≪金剛城≫で長距離移動するためのコミューターに乗ってやってきたプラント区画。
いつの間にかプラントの種類が増えてるなーとか、エルフさん達や海老蝦蛄さん達の移住に協力した経験のもと拡張してそのまま休止してるプラントを有効活用できないかなーとか、それでも空きスペース多いし拡張は暫く要らないなーとか、あれこれ考えつつ歩いていたら掴み所がない四女エルフさんと遭遇した。
「俺も人の事言えないけど、珍しいところ歩いてますね」
「植物関係のプラントがどんなものか、前から気になってた。まさか他の人がここへ来るタイミングと重なるとはびっくり」
まずプラント区画全体の把握を済ませたらしい。何があるのか知らなければ何を見学したいのかも決まらないので当然だ。
そして最初は食料生産プラントのうち、植物系の生成プラントを見てきたところ。で、次は植物系の生育プラントへ向かうとのこと。
折角なので掴み所がない四女エルフさんの予定に便乗させてもらうことにした。
生成プラントは見学しても正直よく分からないのが良かったそうだ。
よく分からない物がよく分からない加工を施されてよく分からない状態でパッケージされ、それを加工機にセットして料理になって出てくるまでを見学。更に試食もしてきた結論が全体的によく分からなかったというのは、とても親近感が持てる感想だしそれが良いというのもちょっと分かる。
俺もスクールに居たころ食料生成プラントの見学行ったときに同じような感想を抱いた。
しかし、今一緒に見ている生育プラントはとても面白い。
中でも掴み所がない四女エルフさんお気に入りとなったのが、彼女にも馴染みがあるらしい水耕栽培プラント。大変贅沢に空間と水を使用した、綺麗で見ごたえのある施設。
≪金剛城≫のそれと規模や効率は違うものの、旧エルフ星では結構一般的な農業形態だったそうだ。
そこで俺が感じたことといえば、水耕栽培の生育プラントで作られた植物系食料は、帝国だとヤバいくらいの金額で流通してるんだろうなという即物的なもの。
ハビタットの一般的家庭で生まれ育った俺じゃあ、そのまま生きてたらお目にかかることもなかった超の付く高級嗜好品の山、山、山。日々美味しく料理してくれる人達にも併せて改めて感謝。次の御飯は野菜尽くしの煮込み系料理とかお願いしようかな。
プラントを管理している機械的知性がいつの間にか傍に居り、順路上にあるそのまま食べられるものをちょこちょこくれるようになった。
気づけば掴み所がない四女エルフさんも俺と並んで一緒につまみ食いしている。食べ物を貰う時には隣に居て、そうではない歩いて見学してる間なんかは順路から逸れてふらふらとどこかへ行ってみたり。
たまにちょっと調理した植物系食料をくれるのはどこで調理してるんだ。焼いただけの野菜や果物も美味しい。
ふと思い出して、以前はエルフ四姉妹で固まって行動することが多かったのが、最近はバラけてることが多いようなので前はそんなもんだったのかと尋ねてみる。
「前の星に住んでた頃も、今の星に引っ越した後も、一緒に暮らしたり別の家で暮らしたりその時々で……みたいな?」
まず、エルフさん達の一般的なご家庭は2パターン。一人暮らしか、仲の良い数人の共同生活。
この時点であれ? 夫婦とかお子さんの居る家庭はどうなってるの? ってなわけで、本筋はさておきもう少し掘り下げて聞いてみる。
一般的なエルフさんの家族構成について詳しく教えてもらったところ、エルフさん達の人生の内、親子という関係性に因る小集団を形成した状態で過ごす時間の占める割合が小さいらしい。夫婦に関しては一回脇に除けて置く。
エルフさん達は種族の全体を見て、そろそろ新しい世代をこのくらいの数増やしておこうという形でエルフさん達が言うところの枝分けだったりパートナーとの行為だったりで数を増やす。
そしてそのまま種族をあげてというか、種族全体で町一つみたいなものなので町を挙げてというか、ともかく全体で協力してゆったりと新しい世代を育てる。その期間が大体50年くらい。
エルフさん達は1000年単位で生きるそうなので、その内親子として過ごす時間が50年ならざっくりアンド多く見積もっても人生の200分の1。俺の感覚でいうと確かにものっそい短い。実際のところ1000年単位というだけあって長老衆とかは1万年近く生きていたりもするそうなので親子として過ごす時間はもっと短い。
で、脇に置いてあった夫婦に関して。
エルフさん達的には昨今と表現するここ1万年くらいのエルフさん達は、パートナーを見つけて子供を作るよりも枝分けで自分の別の可能性を模索するのが主流らしい。
エルフ四姉妹の上の上の世代あたりから、なんとなーくパートナー見つけるの面倒くさいなーで枝分けにより人口を調整するようになっていったのが始まり。
それを見て育ったエルフ四姉妹の世代から下が、わざわざ苦労してパートナー見つけて仲を深めるよりも楽だし手っ取り早いし、なにより自分が別の生き方をしていたらどうなっていたかを知ることのできる枝分けの方が良いよねって感じになったそうだ。
勿論今でもパートナーを見つけて生殖活動を行った結果新しく生まれるエルフさんも居るし、枝分けで増えたエルフさん達にそこはかとなく可愛がられたりするとのこと。
話しのシメに、だからエルフ四姉妹と俺との子供はエルフさん達が結構楽しみにしていると悪戯っぽく囁かれてゾクゾクしました。
家族計画の策定は金剛城≫の女性クルーが統一見解を出すまで先延ばしにされておりますので、その場のノリで俺を押し倒すのはお控えくださいますようお願い申し上げます。