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01-08

 宇宙怪獣のお肉というお土産は味、市場価値、気遣いなど各種評価項目でも総合評価でも合格点を貰えたのに、ついでに行政の方へ出して貰おうとした不可触領域での宙賊の活動観測データは凶悪犯が人種(ヒトしゅ)絶対殺すAI達に撃沈されていたと知って表情が明るくなった後、でもやっぱり不可触領域の詳細な観測データなんて扱いに困るとげっそりしていたのでムチムチ美人さん個人としては嬉しくなさそうだった。


 それはそれとして人種(ヒトしゅ)絶対殺すAI達の正式名称であるI.M.S.I.をちゃんと覚えておきなさいと言われてしまった。


 不可触領域での各種探索データは基本的に個人の財産として認められ、放出してもよいものは行政が買ってくれるので次回からはその辺りも意識してみると良いとのアドバイスも頂いた。

 今回の不可触領域での宙賊の活動観測データは査定しておいてくれるそうだ。

 お仕事お疲れ様です。


 秘密基地の建造は順調に進んでいる。


 付近まで接近してきたI.M.S.I.も宙賊も居ないが一応拠点防衛用の兵器類は敷設したし備えも十分だ。

 ぶっちゃけ何か目的があって秘密基地を作ろうと考えた訳ではないので中長期目標を捻りだすのに一番苦労したほどだ。


 今の長期目標は【生産研究型防衛拠点テストゥーディニダエ】の建造。ハビタットほど多くは永住できないが名前の通り研究開発や製造関係に特化し自己推進力を有した宇宙建造物らしい。

 ≪海老介(えびすけ)≫とセットで拾った大型1番コンテナの大きさしかないコンテナ式プラントになぜか設計図や建造のための建設ドローン制御データが入ってたので作ってみることにした。


 本来帝国内ではハビタットやそれに推進器を乗せたようなものは行政と提携した事業に付随したものしか民間での所有はできないが、俺が秘密基地を作っているのは不可触領域であって帝国領域ではないので法的な問題はない。


 法的に所有が認められていない以上不可触領域で建造した【生産研究型防衛拠点テストゥーディニダエ】を帝国領域へは持ち込めないが、深宇宙の探索で使う気になったら現行技術より高性能な亜次元潜航機構を使って亜次元経由で深宇宙に持っていくので不可触領域の周囲に領有されていない宙域が無くても大丈夫。


 亜次元潜航機構のギフトを持ってるやつらに下手な手出しをした結果他国へ移られると面倒になるのは分かり切っており、現行技術では亜次元に潜航はできても極浅い亜次元までだし、亜次元に存在する物には干渉できるほど安定しないので法整備は進められずなあなあで個別対応してる感じ。


 ギフトに匹敵する性能の亜次元潜航機構作れるってバレたらやばい。

 俺に下手なことしたら≪海老介(えびすけ)≫が暴走しかねないよバリアーもどこまで俺を守ってくれるか定かじゃない。バレないように気を付けよう。


 秘密基地建造計画は全体が順調だが、特に採集活動が捗っている。


 どういう理屈かは理解できなかったのは脇に置いて、俺が採掘場として使い始めたI.M.S.Iのゴミ捨て場的な宙域だと思っていたところはこの星系の様々なものが流れてきているようで、宇宙砂や多くはないが多様なガスも滞留していて有用な資源へ変換できている。


 あとI.M.S.Iの機械的知性的には人種(ヒトしゅ)でいう身体に相当するのはメモリーキューブ諸々を格納したコアのみでそれが入っていないハードウェアは衣服のような認識らしく、廃棄されているスクラップなんかは死体というより再生できない衣類の残骸っぽい扱いをされているならと分解するのに遠慮がなくなったのも資源の貯蓄が捗っている理由だ。


 I.M.S.I.の機体に対する認識を知ったとき思い出したのは、I.M.S.Iの機械的知性の一部で規格機体のマイナーチューンナップが流行ってて、俺がスクールに居る頃一部で流行った改造制服っぽいと感じたこと。

 人種(ヒトしゅ)絶対殺すAI達でも文化が人種(ヒトしゅ)と似てるのは不思議だ。


 資源の貯蓄量と建造ドローンの製造数が予定を超えたのでとうとう【生産研究型防衛拠点テストゥーディニダエ】――を建造するための工廠艦――を建造するための工廠――を建造するためのマイナープラネットの造成に着手した。


 建造ドローンの大量製造中に丁度いいマイナープラネットを見繕って秘密基地建造予定地まで牽引するのはなかなかの大仕事だった。


 【生産研究型防衛拠点テストゥーディニダエ】が完成したらマイナープラネットを利用した工廠は撤去してマイナープラネットも資源にしてしまうので最低限の大きさだけが条件だったのに、その最低限の大きさを満たすものを見つけられず、秘密基地建造予定地周辺でひたすらスキャナーを動かし続けることになった。


 星系内の様々なものが流れ着く宙域ということは隕石が降り注いでいるに等しいわけで、大きな物体がそう多く残っているはずもない。

 最終的には流されてきている途中のマイナープラネットを捕捉したので、それを確保するためだけに慣性中和フィールド発生装置を急遽コンテナ式汎用製造プラントで作ることになった。


 ちょっと段取りに失敗したものの結果的に上手くいっているので何も問題はない。

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