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03-05

「唐突ですがクイズです」


 食後にそのまま食堂でぼうっとしていたら、ギフト化幼馴染殿が対面に座って本当に唐突にそんなことを言った。

 俺の右側の椅子にしなやかスレンダーさん、俺の左側に小さい方のダブルで一番さんを座らせ、俺を含めた3人の前に丸い部分を押すと札が立ち上がる小道具を用意していると思ったらそういうことだったらしい。どういうことなのか。


「俺以外の参加者2名が寝ているんですが」


 ギフト化幼馴染殿によって食堂隅のリラクゼーションスペースから引きずられてくる最中も、テーブルに上半身を乗せられた後も、俺の両側の2人はぐっすり寝ている。

 なぜこの2人を選んでしまったのか。


「何も問題はないよ。その辺に転がっていたので数合わせに拾ってきただけだし、起きたら多分参加してくれるだろう。他に疑問は?」


 現状に関して疑問どうこうよりも、分かっていることの方がはるかに少ないのは明らかなのだから最初から順を追って説明して欲しい。でもクイズを出すことそのものには特に意味はないんだろうなと、なんとなく分かる。


「はい、ではクイズです」


 なにか聞いておく方が良いことはあるかなと悩んでも何も思い浮かばなかったのが分かったのか、ギフト化幼馴染殿がさっさと話を進め始めた。


「第一問。≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーの種族は全部で何種?」


「え。クルーの種族?」


「はい。≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーの種族です」


 いつの間にかかけてる眼鏡をスチャっとやって頷くギフト化幼馴染殿。なんだろう。煽られてるように感じた。


 まず最初のクルーが俺。プライマリーヒューマン。


 次に一気に11人増えて、ムチムチ美人さん、リーダーさん、先輩さん、大きい方のダブルで一番さん、小さい方のダブルで一番さん、ぎしゃーさん、しなやかスレンダーさん、デビごっこさん、ふわふわヘアーさん、ゆるくてふわふわさん、ツルスベさん。

 それぞれ、豚由来人種(ヒトしゅ)、馬由来人種(ヒトしゅ)、山羊由来人種(ヒトしゅ)、牛由来人種(ヒトしゅ)、鼠由来人種(ヒトしゅ)、恐竜由来人種(ヒトしゅ)、豹由来人種(ヒトしゅ)、翼手目由来人種(ヒトしゅ)、鳥由来人種(ヒトしゅ)、海月由来人種(ヒトしゅ)、鉱物由来人種(ヒトしゅ)

 ここまでで12種。


 その後は……無機質美人のホログラム……? いや、違う。機械的知性のコミュニティがクルーになった。で、その後が無機質美人のホログラム。これはどっちも機械的知性で1種だろう。多分。無機質美人のホログラムはもう無機質美人のホログラムって種族かもしれないけど。


 駐在エルフさんは植物由来人種(ヒトしゅ)で14種。


 目の前にいるギフト化幼馴染殿はプライマリーヒューマン。違うか。ギフトの超人がどうこうの身体になってるし、帝国の法律だとある程度以上の割合で改造したらサイボーグで一緒くたにまとめられるんだったか? 種族はサイボーグじゃなくてギフトでいっか。そうなると無機質美人のホログラムも種族はギフトってことで、2人の種族はギフトでカウントしておこう。

 ここまでで15種。


 奉仕過激派系の子、悪そうな顔でフォークぺろぺろしてた子、白手袋擦り合わせる拳の鋭い子の3人は種族は別だったかな。ああ、でもシルキーを名乗るって言ってたし、≪金剛城(こんごうじょう)≫においては彼女達はシルキーという種族って事にしよう。何由来なのか知らないけど。


 おっとり長女エルフさん、苦労人ぽい三女エルフさん、掴み所がない四女エルフさんは植物由来人種(ヒトしゅ)なので種族数に変動はなし。


「つまり≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーの種族数は16種」


 ギフト化幼馴染殿に何言ってんだこいつって顔を向けられた。


「ギフトなんて種族は存在しない。帝国の法的には私はプライマリーヒューマンだし、統括管理AIの彼女は当人の認識としては君に帰属するそうなので機械的知性だよ。あと奉仕家系の3人組がいうシルキーは3人組を指す言葉であって、種族としてはバラバラの人種(ヒトしゅ)だ。つまり16引く2足す3で、正解は17種だね」


「だいたい合ってたな」


 結果的に誤差1種なら正解も同然だ。


「過程も結果も間違ってるんだから不正解に決まってるだろう」


「おーぼーだ」


 俺の種族カウントが間違っているっていうなら、ギフト化幼馴染殿がプライマリーヒューマンっていうのも間違っていると主張する。明らかにプライマリーヒューマンじゃないだろその身体。

 なんだったらカウントの根拠となる法律を帝国のものではなく≪金剛城(こんごうじょう)≫独自のものにすべきだ。


「では第2問」


 第1問は不正解のまま覆らなかった。無念。

 しかしちょっと不自然なくらい間が開いても第2問が出題されない。


「勢いで始めたから最初の1問しか考えてなかった。どうするか……」


「あるある」


 デビごっこさんはこういう時も強引に次の展開を広げるからすごいなと思う。強引過ぎたり全く関係ないところへ行くことも多かったりで、もう少し計画性を持った方が良いとは思うけどすごいことはすごい。でもあの人全部分かっててやってそうな感じもあるしなー。危ないとか取り返しつかない事態は起こさないもんな。


「あ、第2問。インプラントデバイスと日常用ナノマシンの共通点はなんでしょうか」


「小さい機械」


「ブー。もうちょっとこう……こう、ね、別のやつ」


 さも突然思いついたと言わんばかりの第2問に条件反射の如く答えたら、意図した答えではなかったのか曖昧な感じに再回答を求められる。


「もうちょっと具体的に方向を示してくれませんかね」


「えー、インプラントデバイスやナノマシンその物ではなく、こう、周辺を含めてみたいな?」


 さっぱり分からない。

 じっと目を見つめるとギフト化幼馴染の視線が泳ぐのは、無計画アンド問題の方に問題がある自覚のためだろう。第2問が無かった時点でもうやめておけばよかったのにね。ね。ね?


「インプラントデバイスは、脳に存在する全く機能していない部位にインプラントされる。この、脳に存在する機能していない部位は、(あたか)もインプラントデバイスの為に用意されたスペースのようだと言われることもある」


 俺とギフト化幼馴染殿が見つめ合って不毛な時間を過ごしていると、しなやかスレンダーさんが何やらインプラントデバイスに関する知識を披露してくれた。

 いつの間に目が覚めたのか、まったく気づかなかった。


「ナノマシン、より正確に言うと日常用ナノマシンとも呼ばれる人体補助用ナノマシンは、人体に存在する何の機能もしていない内臓のような肉の塊にナノマシンプラントを定着させることで、人体内での生産が可能となる。この内臓のような肉塊は、(あたか)も以下略」


 急に喋ったしなやかスレンダーさんに驚いてそっちに顔を向けていたら、今度は逆側の小さい方のダブルで一番さんがナノマシンについてなにやら教えてくれた。最後のところ雑なのは面倒くさくなったからと思われる。まあ言いたいことは分かる。

 しかしこの人もいつの間に起きていたのか。


 しかし、つまりはそういうことなのだ。2人が答えを教えてくれた。

 ギフト化幼馴染殿に視線を向けると、彼女は一つ頷いた。

 やはりそうなのか。


「インプラントデバイスと人体補助用ナノマシンの共通点。それは、なんか不思議な内臓だ」


「合ってるけど、もうちょっと表現とかね。そもそもこれスクールで習ったからね」


 正面と両側で溜息を吐かれて正解者無しの判定。

 まあ、しなやかスレンダーさんと小さい方のダブルで一番さんがほとんど答えを言ってたから、俺に回答権が無かったという解釈なら納得。

 俺の両側の2人が起きたので、俺とギフト化幼馴染殿を含めた4人それぞれが好きに出題する形式でクイズを続行。


 でもスクールでの勉強なんて日常生活に使ってない内容はとっくに忘れてるに決まってるだろ。3人して俺を狙い撃ちにするのはやめろ下さい。

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