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01-06

 近隣の複数の星系で宙賊の一斉摘発を行ったとかの影響で、初めて宙賊に襲われて以来何度も同じように宙賊を撃退や後処理を繰り返しすっかり慣れた。


 更には毎度宙賊船を生け捕りにしているので収入が格段に増加。

 もう本業の輸送よりそれに付随して得る宙賊の生け捕りによって稼ぐ額の方が収入における比重が大きいくらいだ。

 ムチムチ美人さんにはお世話になっている分、植物の長期保存パッケージが好きらしいと聞いてからは珍しいのを出先で見かける度買って帰るようにしている。

 

 始めの内は消え物がいいかなと出先のハビタットで食べた美味しい菓子類をお土産にしていたところ、お世話になってる分のお礼をお菓子で償却しようとするとムチムチ美人さん的にはカロリーの収支調整が難しいとのことで他のリクエストをたずねたら植物の長期保存パッケージという返答を貰い、お土産の内訳はお菓子1に植物の長期保存パッケージ4くらいの割合で落ち着いた。


 ぶっちゃけムチムチ美人さんに委託した業務からクレジットで払う方が面倒はないんだけど、あくまで通常業務の一環なのでそれで報酬を得るのは一発で解雇らしい。役所勤めは大変だ。


 宙賊のおかげでクレジット貯蓄が想定よりもはるかに早くなったので運送業は凍結して深宇宙の探索に備えた採掘の練習を始めることにした。

 練習といっても操作手順の確認がてら実際に採掘をして小金を稼いでおこうってだけだ。


 ≪海老介(えびすけ)≫には組み立て段階で採集器モジュールをマウントしてあるので採掘許可のある宙域へ行ってアステロイドを照準し採集器のビームを照射する。

 宙賊の襲撃や難癖付けてくるかもしれない採掘屋を警戒しつつじっと待つ時間は蜘蛛蜂モドキがくれた端末をいじったり、出港前に更新してきた鉱物相場のデータを眺めたりして過ごす。


 さすが≪海老介(えびすけ)≫は採掘だって簡単だ。気になるのはやるのは採掘なのにモジュールの名前が採集器となっていること。

 蜘蛛蜂モドキがくれた端末で調べてみるとアステロイドを対象にするときは採集器のビームを収束するが、ビームを拡散に切り替えればガスや宇宙砂を分解して吸引できるらしい。


 単純に、掘るだけじゃないので採集という理由だったか。採算は気にしなくていいし、使い勝手を試しに来てるんだし、各採集器で何を吸入したか分けて確認できるし、採集器のいくつかはアステロイドじゃなくて周辺宙域に拡散モードで照射してみよう。


 カーゴに吸入した鉱物で何ができるのかなとコンテナ式汎用精製プラントやコンテナ式汎用製造プラントで調べたり、精製した金属がどの程度の値段になるのかと帝国内の鉱物資源相場のデータを眺めているとちょっと面白いことに気づいた。

 カーゴに溜まった鉱物資源の一部をコンテナ式汎用精製プラントに放り込むと、帝国内では高値で取引されている実用性の低い観賞用鉱物になる。


 というかこの宙域で採掘された記録がない鉱物を精製できるのはさすがトゥルーギフトということか。

 コンテナ式汎用精製プラントってなんなんだろうな。

 細かいことは気にせず、その観賞用鉱物が女性に人気らしいので程よい大きさの置物でもコンテナ式汎用製造プラントで作ってムチムチ美人さんにあげよう。

 コンテナ式プラント二つを試運転してムチムチ美人さんへのお土産もできる。

 完璧。


 正直、植物の長期保存パッケージはかさばるしあればっかりをお土産にするのもどうかと思っていたので丁度いいと渡してみたら顔が引きつってた。高価すぎたっぽい。


 ムチムチ美人さんが思わずといった感じでこぼした独り言から判断するに、俺が個人的に物をあげるのは規則としてセーフでも職場の人間関係で面倒くさいみたいだ。

 なんかごめん。


 ついでに存在しないはずの鉱石を採掘したうえ加工して持ち帰ったことに対して注意された。

 今回掘ってきた分は直接ハビタットの行政に持ち込んだのでまだ誤魔化せるものの、俺が直接市場(しじょう)に流したらフォローのしようがないのでその辺は過去に採掘された資源のリストを元に気を付けるようにと。

 はい。考えたらずでした。


 採掘器のデータを確認したらアステロイドの採掘は何の問題もなく、宇宙砂を採集していた採集器が希少資源を集めていたので吸入後のカーゴを分けて混入しないようにすると設定した。


 自分で何か作るつもりで抱え続けるにも置いておく場所がないから、希少資源は行政に買い上げてもらえばいいかな。

 コンテナ式工廠プラントでもっと大きい船を作るなら資源を溜め込んだりする場所を用意しないとな。


 ≪海老介(えびすけ)≫を拾うまでは一般人らしく自分の居住するハビタットがある恒星系くらいしか興味を持ってなかった。

 ≪海老介(えびすけ)≫を拾って、深宇宙の探索に繰り出してみようと決めてようやく帝国領域の全体像だとか隣接国のことだとかに意識を向け始めた。


 そうしてみると、帝国領域内に食い込むような形で広がる不可触領域を身近な物として認識するようになった。

 正式名称は忘れたけど使い捨てにされたAIが進化して人種(ヒトしゅ)絶対殺すマシーンになって一部宙域を占拠してるとかだったはず。


 それで兵器類にAIを搭載するのがなんかの協定で禁止されて、AI取っ払ったドローンに人の脳みそだけ乗せた有人兵器ってやった国が内部から崩壊したとか授業でやったのを覚えてる。


 今も不可触領域が警戒線を引くだけで放置されてるのは、電子戦で人種(ヒトしゅ)絶対殺すAIに対して人側が不利なのと確保した領域の外に人種(ヒトしゅ)絶対殺すAIが出てこないのが理由だってのも授業で言ってたのを覚えてる。


 不可触領域って帝国領域外だし秘密基地作れないかな。さすがに≪海老介(えびすけ)≫でも危ないかな。

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