02-20
【自律汎用駆逐艦シュリンプ】の建造は1隻目の建造を始めてすぐ見つかり、こっそりではなくなったものの恒星系警備隊2つに結構な数が配備されることになった。
小さい方のダブルで一番さんがシュリンプという単語にビクンと反応したので何事かと思ったら、背の小さい人の悪口に使われる単語らしい。海老は美味しいのに不思議な話だ。
自室にて、【自律汎用駆逐艦シュリンプ】を建造し続けるリアルタイム映像をぼんやり眺めながら小さい方のダブルで一番さんを抱えたままごろごろしていたらふと思いついた。
「警備隊に巡洋艦ばっかりはどうなのかと思って【自律汎用駆逐艦シュリンプ】を作ったけど、改めて考えると駆逐艦でも大きすぎる気がする。普通は駆逐艦1隻にコルベットやフリゲート何隻かで小隊作るんじゃないのかな」
巡洋艦の全長が1キロメートル未満。
駆逐艦の全長が500メートル未満。
フリゲートの全長が100メートル未満。
コルベットの全長が50メートル未満。
艦載機の全長が10メートル未満。
警備隊の主力艦が巡洋艦で、駆逐艦が巡回の主体。数が要るとなったら艦載機。
バランスどうこう言うなら駆逐艦と艦載機の間を埋めたくなってきた。
「また叱られるよー?」
≪金剛城≫のデータベースに接続して船の設計図を眺め始めたら、小さい方のダブルで一番さんに見ないようにしていた現実を突きつけられた。
「駆逐艦だって要らないって言われたじゃなーい? また船いっぱい作ったらまたお説教じゃなーい?」
「ぐぬぅ」
こっそり作った物に関しては大体お説教を受けている。最近だともう困った顔をされる割合の方が多い。
こっそり作らないと作る前に止められたりお説教を受けそうだからこっそり作るんだけどね。
「短期間の内に同じようなことで何度も叱られるのは芸がないよー」
「芸じゃないからね」
まるで叱られるために叱られるようなことをしていると誤解するのはやめて欲しい。
深く考えずにやりたいようにやると叱られることが多いだけだ。
「でもサイズ的な話で駆逐艦と艦載機の間がぱかっと開いてるの気にならない? それに艦載機は艦載機として使って、恒星系内に基地を作って配備するのは戦闘艇を使いたい」
「基地もコンテナを改装したやつにするから艦載機の方が良いじゃーん? てゆーかー、叱られるってわかってて叱らせてばっかりだと嫌われちゃうよー?」
「はい。諦めます」
嫌われるのはいかん。
気になるって言っても小さい方のダブルで一番さんを抱えてごろごろしてたらすぐに忘れる程度のことだ。変に固執しないでさっさと忘れよう。ごろごろー。
何しようかな、何もしなくていいかなと≪金剛城≫の中をふらふら歩いていたら、トレーニングルームで旧エルフ星出身者の内エルフじゃない3人に何か教えているしなやかスレンダーさんを発見。そっと物陰に隠れて観察してみる。
なにやら音楽に合わせた格闘技っぽい動きだが、ぶちのめしてやるぜみたいな物々しさはない。どっちかというと良い汗かいてるって感じに爽やか。
音楽が徐々に緩やかになって、それに合わせてしなやかスレンダーさんウィズエルフじゃない3人組の動きも緩やかになり、最後に音楽と同時に4人の動きも止まった。
「あれ? のぞき見かな? えっちだね」
「のぞき見は否定しようがないけど、見てたらえっちな何かだったの?」
もう邪魔にはならないかなと物陰から出ていくと、俺に気づいたしなやかスレンダーさんの軽い感じな言葉に殴られた。4人ともくすくす笑ってるから冗談なんだろう。きっと冗談だ。
「冗談だよ。見ちゃダメだったらトレーニングルームに入れないようにしておくし、それでも入ってきたらすぐに気絶させるから」
恐ろしい。でもしなやかスレンダーさんは様々な格闘技に精通してるそうなので、意外に苦しまず意識を刈り取られたりしそう。ああいうのは上手い人の方が苦しまないって誰かが言ってたような記憶がある。誰が言ってたんだったか。
「見ちゃダメじゃないんなら聞いても大丈夫かな。何やってたの?」
「私がやってたホロシャドウが楽しそうに見えたらしくて3人もやってみたいって言うから、その前の土台作りだよ」
ホロシャドウって、的を通るように手足を振り回すトレーニングだって前に聞いたのをしっかり覚えてる。マットだかミートだかを殴る蹴るトレーニングより、目の前にいるつもりの相手を殴る蹴るトレーニングに近いとかなんとか。試してみる? って聞かれてやったら手足痛めたのを凄く覚えてる。思い出して痛い。
実際に殴る蹴る方はインパクトの瞬間に合わせて筋肉の緩急を付けないととても痛い。ホロシャドウの方は的に当てたつもりで手足を引き戻そうとするととても痛い。どっちでも手足を痛めた経験があるのでおそらく間違えてはいない。
「休憩終了。次のセットやるよー」
しなやかスレンダーさんの号令でまた4人が音楽に合わせて爽やかに手足を振り回す。
あれって格闘技っていうかダンスみたいだし、俺に上手いことできないのは仕方ないと思う。俺は大人しく筋肉に負荷をかける系のトレーニングをやろう。