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02-16

「皆さんの出身国である帝国がI.M.S.I.と戦端を開きました。続けてそれを察知した複数の国家が帝国及びI.M.S.I.と戦端を開き、それを察知した複数の国家が帝国及びI.M.S.I.と戦端を開いた複数の国家と戦端を開きました」


 皆で御飯というには若干顔ぶれの足らない食事の後、今日は何をしようかなとだらだら食堂に残っていた面々に無機質美人のホログラムが淡々と入り組んだ報告をくれた。

 ぐるっと見渡すと旧エルフ星出身者が1人もいないので、だから最初に皆さんの出身国って表現をしたんだろうなというのは分かった。


「絶対にわざと分かりにくく言いましたね」


 胸部にあるウェイトのスタンドとして俺の両肩を使用する大きい方のダブルで一番さんが律儀にツッコミを入れた。


「ぎしゃー」


 ぎしゃーさんのテンション上がってる時の声が聞こえた。今の無機質美人のホログラムの話でテンション上がるところあったかなと視線を向けると、ぎしゃーさんの手元にあるホロウィンドウに集中しているようなのでこっちとは関係なかったらしい。


「脂ハゲ一行がなんか良く分からないけど最前線送りになってる。これ皆に教えてあげないと」


 最前線ということは関係あったっぽい。脂ハゲ一行ってなんだろう。文脈的には人だとは思うけど、最前線に送られたと聞いて喜ぶ相手ならあんま掘り下げない方が良いか。


「美味しいアレでパーティーしても良いかな?」


 艦内ネットワークでのやりとりが一区切りついたのか、ぎしゃーさんがちょっともじもじしながらおねだりしてきた。可愛いのでヨシ。


「なんか好いことあったんでしょ? ぱーっとやろうぱーっと」


「ありがとう」


 ぎしゃーさんがふにゃっと笑う。うむうむ。


「ありがとうございます。ではさっそく仕込みに取り掛かります」


 俺を抱え込んでいた大きい方のダブルで一番さんがさっと立ち上がるなり颯爽と調理室の方へ去って行った。あとでちょろっと顔出したらつまみ食いさせてもらえないかな。

 というか、いつものスケジュールだと皆で揃う御飯は40時間くらい先なのに今から料理を仕込み始めたらどんな物が完成してしまうのか。すでに楽しみになって来た。


 緊急コールで招集がかかったため、40時間どころか1時間も待たずに疑似恒星光のサンルームでバーベキューパーティー開始。

 俺と同じようにギフト化幼馴染殿と旧エルフ星出身者はなんのパーティーなのかもよく分からないまま、ムチムチ美人さんと元レディアマゾネスSPさん達のテンションになんとなく流されてとりあえずはしゃぐことになった。


 肉食系の皆さんの強い要望により、美味しいアレは基本的にバーベキューで食べることが多いのでここに疑問はない。

 俺がいつだかお土産に渡した宇宙怪獣のお肉を調理する際、未調理食物を扱う数少ない機会を出来る限り有効活用して楽しもうとアレコレ調べた結果行きついた至高の調理法だとか。

 ハビタット生まれハビタット育ちハビタット在住だと調理なんてまず無縁だもんなぁ。


 疑似恒星光のサンルームに10時間前まで存在しなかったプールがあるのも、日光浴しながら水遊びも贅沢でいいしいつかやろうと話した覚えがあるので問題はない。

 ゆるくてふわふわさんなんてもう水に浮かんで漂い、美味しいアレのステーキにかぶりついてご機嫌になってるのでプールはすでに存在意義をまっとうしていると言える。


 解せないのは一部がパーティー開始と同時に全裸になって大きな焚火を囲んで踊り始めたことだ。なにあれ。

 すごい楽しそうだし、見てる方も混ざりたくなってくるのが困る。

 ああ……混ざりたそうにしていた先輩さんが踊ってる何人かに手招きされてとうとう混ざってしまった。

 踊りとしては単純な動きを繰り返してるだけなのもあって、混ざるハードルは脱げるかどうかって1点だけなのがズルイ。


 俺以外女性だけっていうのが逆に混ざりにくい。ここにいる女性はほとんどが恋人というか伴侶というかな仲になっていても全裸で踊るのはちょっと躊躇する。

 そんな事を悩んでいる内に、旧エルフ星出身者が全裸組の外側でもう1つの輪を作って別の踊りを始めた。服を着ている分飛び込み参加のハードルは低いが、見てすぐ俺にマネできる感じじゃないので別のハードルが高い。


 結局大きな焚火を囲んだ踊りの輪には加わらないグループのところで、踊りを眺めながら食べたり飲んだりに落ち着いた。

 気を利かせてくれたのか、無機質美人のホログラムが疑似恒星光の光量を落として夜っぽくしてくれると揺らめく火に照らされた踊りの雰囲気ががらっと変わって神秘的になった。

 そうすると今度は誰かが詩のない歌をハミングし始めて、なんとなく皆で合わせる。


 踊ってるグループが疲れて飲み食いし始めたのでなんで焚火があったのかを尋ねると、旧エルフ星出身者達が開けたところで肉を焼くなら大きな焚火が必要だと用意したとようやくわかった。

 しかし、踊りの方は皆が皆、自分以外の皆に合わせて始めただけだと言うので明確な答えは出なかった。


 いっそあの踊りは≪金剛城(こんごうじょう)≫のバーベキューでスタンダードにしようという流れになったが、皆が本気なのかは次のバーベキューパーティーまで答えが出そうにない。

 毎度あの踊りをするとなるとそれはもうバーベキューパーティーではないのではないかとは言えなかった。

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