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02-06

 ワームホールを探し、発見しては通過不可なので放置して次のワームホールを探す日々。

 もしかしたら、スポンサーみたいになってるギフターの方でまたトラブルでも起きているのかもしれない。

 ワームホールを探して銀河間を飛び回るついでに宇宙塵を採集して資源を備蓄しているので無駄ではないが、足踏みしているようでちょっとダレて来ている気がする。




 そんな訳で、≪金剛城(こんごうじょう)≫の技術で面白そうなものを見繕っていたら抗重力関連のものを見つけたのでオモチャにしてみた。

 じゃじゃん。抗重力フィールドを利用した個人用空中機動装置のメカニカルウィング。


 帝国の現行技術では人工重力を発生させることはできても、特定空間内の重力の中和が難しいとかで惑星の重力の一定範囲内に干渉して低減することはできない。≪金剛城(こんごうじょう)≫ならではのオモチャである。


 そもそも俺はハビタット生まれハビタット育ち故に惑星重力下環境になじみがないのは脇に置いて、惑星居住者的には重力をどうこうして飛ぶのはなんかロマンらしいのでこのメカニカルウィングを使って飛ぶのは楽しいはずだ。後で旧エルフ星出身者達も呼んで一緒に遊ぼう。回復した旧エルフ星に下りて惑星重力下で飛んでみるのも楽しいかもしれない。


「ふははは。我が眷属よ。とうとう貴様も重き戒めから解き放たれたのだな」


 ≪金剛城(こんごうじょう)≫の小型中型艦船用ドックでメカニカルウィングを使って飛ぶ練習をしていたら、翼手目由来人種(ヒトしゅ)のデビごっこさんがテンション高くやってきた。その後ろにはいつものように鳥由来人種(ヒトしゅ)のふわふわヘアーさんも居る。

 二人は由来生物が有翼つながりで仲が良く、もう一つの共通点としてプライマリーヒューマンではない明白な身体的特徴がある。


 デビごっこさんは胴体に四肢と頭がついたプライマリーヒューマンとほぼ同じ姿ではあるものの、肩甲骨の辺りから掌と同じくらいの大きさのコウモリっぽい羽が生えている。デビごっこさんは生体強化で解決しているが、仰向けで寝ると羽をバッキバキに骨折するらしい。

 ふわふわヘアーさんも同じようにほぼプライマリーヒューマンと同じ姿だが、髪の毛の一部が羽毛っぽくなっている。ふわふわヘアーさんは言ってしまえばキレイで丈夫な枝毛が多いくらいでしかなく、人によっては毛の軸みたいなものがあり抜け毛と一緒に出血することもあるそうだ。


 こういった身体的特徴は、『由来になった生物の特徴を取り戻そう』という200年前だかに一時期帝国で流行った回帰主義に曾祖父母世代が乗っかった名残とのこと。


 スクールで習ったような気もするし、言われてみればスクールでちょいちょい見かけたような気もする。

 小さい方のダブルで一番さんとかも耳がプライマリーヒューマンとは違ったりするし、ぎしゃーさんも前歯が結構とがってたりするので珍しくないと言えば珍しくない。


「今日は吸血鬼なの? それとも悪魔?」


 さっきの喋り方と内容だと悪魔なのか吸血鬼なのかわかんなかったので直接訊いてみる。


「え……あー……どっちでも良いよね」


「あなたさっき『今日は悪魔な気分だから後で眷属たちを迎えに行こうぞ』って言ってたじゃないの」


「あはははは。今日は悪魔らしーよ?」


 デビごっこさんは相変わらず刹那的というかなんというか。

 それに振り回されているように見えて世話を焼くのを楽しんでいるふわふわヘアーさんとは相性が良いんだろうきっと。


 折角だし、と二人にもメカニカルウィングを試して貰ったらちょっと練習してすぐに自由自在なアクロバット飛行を披露してくれた。

 ……きっと二人とも由来生物が有翼だから上手いだけだし。俺に適性がないとかそんなんじゃないはずだ。


 小型中型艦船用ドックで飛ぶ練習というか、デビごっこさんとふわふわヘアーさんが楽しそうに飛び回る下で俺がぴょんぴょんしていたら外のクルーも集まってきて気付けば皆で遊んでいた。

 群を抜いて上手いのが、やっぱりデビごっこさんとふわふわヘアーさんの有翼由来系二人組。

 次に上手いのが、体を動かすのは頭脳労働と言い切るくらい常軌を逸しているムチムチ美人さん。

 そこからしなやかスレンダーさんやゆるくてふわふわさんが続く感じで以下団子。

 俺と同レベルなのが旧エルフ星出身の全員。駐在エルフさんとエルフじゃない3人と駐在エルフさんの姉妹3人。


 ギフト化幼馴染殿は人種(ヒトしゅ)の体でできることはやろうと思えば大体できるようななんかもうすごいことになっているので枠外。俺を独占できる権利を賭けている≪金剛城(こんごうじょう)≫の各種競技会にも出禁を食らっているほどなので、エリート揃いの≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーでも太刀打ちできるのは極一部だけなことが多い。なお芸術的感性はパターン認識で補っている模様。


 そして気付けば一部の人達がメカニカルウィングに思い思いのパーツを付けて空中で格闘戦を始めている。


 あーあー触手パーツありだと海月由来人種(ヒトしゅ)のゆるくてふわふわさん一強になるのは分かり切ってるのにって思ったら、ゆるくてふわふわさんと今戦ってるのデビごっこさんか。あの人ノリでオッケーしたんだろうな。楽しそうに悲鳴を上げてる。


 牛由来人種(ヒトしゅ)の大きい方のダブルで一番さんや、馬由来人種(ヒトしゅ)のリーダーさん、恐竜由来人種(ヒトしゅ)のぎしゃーさんといったダイナミックでパワフルな人達は機動力を犠牲にパワーアシストアーマーみたいな重装甲を纏いメカニカルウィングでぐるぐる周回しながらガッツンガッツン衝突を繰り返している。豪快だわ。


 鼠由来人種(ヒトしゅ)の小さい方のダブルで一番さんは、メカニカルウィングからワイヤーかなんかを伸ばしてふわふわヘアーさんにぶらんぶらんしてもらってる。どっちも楽しそうなんでいいけど、由来生物を考えると捕食寸前って感じだ。俺もあれやってもらおうかな。


 ムチムチ美人さんや豹由来人種(ヒトしゅ)のしなやかスレンダーさん、山羊由来人種(ヒトしゅ)の先輩さん、鉱物由来人種(ヒトしゅ)のツルスベさんは駐在エルフさんを始めとした旧エルフ星出身の7人にメカニカルウィングの扱いを教えたりしてる。そっと俺も複製身体で混ざってるが上達の兆しが見えない。


 旧エルフ星出身の人達は新しいもの好きなんだけど、慣れるまでというかしっかり扱えるようになるまで結構時間がかかる人ばかりだ。食事とかも知らないものを出されるとものすごくじっくり吟味して時間をかけて食べたりする。

 国民性ならぬ星民性的なものなんだろうな。

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