01-04
巡洋艦の組み立てが終わるまではまた軟禁生活に戻った。
変化と言えば前日にムチムチ美人さんに言っておけば借りてるドックへ行って蜘蛛蜂モドキ達の作業を観察ができるようになったくらいだ。
あまりに作業の推移が激しく船が組み上げられていくのを見てムチムチ美人さんがたまに物欲しそうな顔をしている。あげないよ。
いや、1機くらいならいいかな……やめておこう。
ムチムチ美人さんに色々教えてもらうのも区切りがつき、やることが無いので蜘蛛蜂モドキから渡された端末を弄繰り回してたら1レイヤーの大型コンテナに詰められている物品リストを見つけた。
コンテナ9個の内5個を占めるコンテナ式プラントという物に見覚えが無くムチムチ美人さんに確認してみると、涎をたらしそうな顔をしていたので多分これ単品でもギフトとして凄まじい価値があるんだろうな。
コンテナ式プラントは名前の通り色んなプラントをコンテナとして持ち運べるのがやばい。
更にその内の1つのコンテナ式工廠プラントって名前からしてやばい。
どんなものを作れるのかちょろっとリストを見ただけでもすごかった。材料さえあれば軍用アンドロイドを無尽蔵に作れるなんてそりゃあ俺にSPもつけられる。
とはいえ、個人的にもっとすごいと思ったのはコンテナ式汎用製造プラントだ。
完成品をスキャンして材料を用意すれば同じ物を好きに作れるんだからやばい。
技術があるなら完成品のスキャンデータに手を加えたりもできる。俺にもできるとは言ってない。
今組み立ててる巡洋艦は輸送能力が高そうだし、出来上がったら運送業で稼いで必要そうなものをあれこれ買ってスキャンして深宇宙にでも行ってみようかな。
食料もコンテナ式汎用製造プラントで作れるし俺が拾ったトゥルーギフトは多分素人でも深宇宙の探索ができるお得パックだったんだよね。
遥か昔には有人惑星のある恒星系の外を深宇宙と呼び、現代の定義だと
未知の領域には未知の資源があり、未知の何かを
帰還率数万分の一。
持ち帰った拾得物が有用だった幸運な命知らずは更に数千分の一以下。
特に気にせず生活してるだけでも成功者のドキュメンタリーとかは触れる機会があるくらいに深宇宙の探索は一般人でもなじみのあるコンテンツだし、俺も一般的な範囲で少しは知っている。
深宇宙の探索に必要なのは輸送力と無補給で活動できる事前準備とか聞いた覚えがあるので、俺が拾ったトゥルーギフトはぴったりだろう。
巡洋艦が組みあがるにつれておおよその外観が見えてきた。
いや、端末で確認も出来たんだけどなんとなくもったいなくて巡洋艦に関するデータは見ないようにしてた。
そしてその外観が……二つ折りにしたチューブみたいな……なんだこれってなったのでようやく端末で巡洋艦に関するデータに目を通したところ【自律汎用巡洋艦
プラウンが何かわからないので調べてみたら海老という生物だった。
確かに【自律汎用巡洋艦プラウン】はほとんど海老だ。
二つ折りにしたチューブの上側にあたる長い方の先っぽから比率としては細い多機能フレキシブルマニピュレーターがぴろんと伸びてるところとかよく似てる。
海老で言う頭に相当する部分の下には足のような多機能フレキシブルマニピュレーターもある。
あと生物の海老が卵を抱える辺りに大型1番コンテナ式プラントを最大で10個接続できるようだ。
想像以上に大きい船だった。
特型2番コンテナに詰められてたし、組み上げたらせいぜい2~3倍くらいの大きさだとなんとなく思ってたらもっと大きい。
具体的な数字を確認してみると全長900メートル、全高400メートル、全幅250メートルだった。大きい。
一辺30メートルの立方体に収まる【
コンテナ式プラントとは別に専用の改造を施した特型1番コンテナを3個接続してカーゴとして使えるとか、巡洋艦という名前からして戦闘能力に重心を置いている船のはずのくせに輸送能力がとても高い。
コンテナを運ぶだけなら牽引用のモジュールを着ければもっといけるとか過剰じゃないかな。
汎用って名前についてるくらいならそんなものなのか?
ムチムチ美人さんに否定されたので少なくともこの国の現行技術では違うらしい。
端末を弄ったり今後の予定を立てたりしている内に【自律汎用巡洋艦プラウン】が竣工を迎えた。
パッケージされていたのを組み立てたのは竣工ではないか。
これからしばらくは【自律汎用巡洋艦プラウン】、船舶登録名「≪
ある程度稼いだら≪
≪
深宇宙へ探索に行くことは決めているのでその前に予行練習がてら採掘業で多少稼いでおこうというつもりである。
ムチムチ美人さんにそういった予定を伝えたら微妙な顔で採掘権関連の手続きを手伝ってくれた。