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02-01

※作者からの注意喚起※

1章である01_Shrimp is absent yet.とは作品の傾向が違うと感じられる可能性があります。

求めてたのはこれじゃねぇって場合はそっと閉じたり妖怪ブクマ外しを呼んだり各自で対処してください。

 皆とだらだらスローライフを満喫していたら10年くらい経っていた……らしい。

 旧エルフ星回復プロジェクトが完遂されたことで月日の流れを漸く実感した。


 ムチムチ美人さんや元レディアマゾネスSPさん達はハニトラ込みのお仕事をしていたため、もともと帝国の現行技術による老化防止やらの施術を受けていたこともあり、深宇宙の探索中というか銀河間航行中の数年でも見た目に変化はなかった。

 新エルフ星周辺でダラダラし始めてからは、より効果の高い≪金剛城(こんごうじょう)≫由来の老化防止や寿命延長の処理をクルーの皆が受けている。

 そんな訳でこの10年というもの俺も含めた全員が見た目に変化はなく、ずっと宇宙に居るとまるで時間の経過を感じないのは仕方がない……と思いたい。ハビタット在住の頃はそんなことなかったし言い訳だ。


 旧エルフ星回復プロジェクトにしても、≪金剛城(こんごうじょう)≫でちょっと遠出する度にワームホールを発見し、5回に1回くらいギフトを拾わされてを繰り返していた所為で『ある程度』なんて程度ではなく完全に居住できる。

 拾ったギフトは人工惑星やテラフォーミングに関係したものばかりだというあたり、ギフトを配ってる人は俺に腰を据えた生活ではなく銀河間航行くらいの遠出をしてほしいらしい。


 加えて、エルフさん達的に回復された旧エルフ星は昔の旧エルフ星よりも居心地がいいとのことなので、じゃあ旧エルフ星に住みたい人は移住する? って訊いたらエルフさん達が一気に枝分けで人口を増やし、なぜか人口増加の流れで3人のエルフさん達が≪金剛城(こんごうじょう)≫に住み始めた。


 今回枝分けで増えたエルフさん達は20年~30年かけた教育を受け、その後長老衆や親世代の一部と共に旧エルフ星へ入植することになった。

 入植なのか帰還なのかちょっと話し合って入植になった。宇宙怪獣被災前の旧エルフ星と回復プロジェクト完遂後の旧エルフ星は別物であると結論が出ている。


 新しく≪金剛城(こんごうじょう)≫のクルーとなった3人のエルフさん達は駐在していたエルフさんの姉妹とのこと。

 姉妹だから趣味が似ていると言われましてもどう反応すればいいのか。エルフさん達の人口を増やすために来たと言われましても、じゃあ一緒に頑張って増やすかってなるはずもない。


 子供と言えば、俺の妻と言うか恋人と言うかな皆が溜め込んでいる自然受精卵はいつ育て始めるんだろうか。

 ≪金剛城(こんごうじょう)≫の技術でものすごい寿命が延びたらしいし、今の生活に満足している間は保留って言ってたし、俺の第一子が生まれるのは100年単位で先かもしれない。

 数十万が永住できる≪金剛城(こんごうじょう)≫が賑やかになるのは遥かな未来のようだ。その時には着床を待つ自然受精卵はどれだけの数になっているのか……。


 将来はともかく現在の≪金剛城(こんごうじょう)≫の人口というか人種(ヒトしゅ)クルーは、以前からの15人に10年の間に増えた3人と今回のエルフさん姉妹3人で合計21人。機械的知性はコミュニティ単位ですら俺は把握しきれていない。

 人種(ヒトしゅ)で以前からのクルー15人は内訳が俺1人、ムチムチ美人さん1人、元レディアマゾネスSPさん達10人、無機質美人のホログラム1人? 駐在エルフさん1人、ギフト化幼馴染殿1人。

 新エルフ星の星系に腰を据えてからの10年で増えた3人は、旧エルフ星出身の各種動物由来人種(ヒトしゅ)


 なお≪金剛城(こんごうじょう)≫に居住する人員の内、複製身体は別カウントとする。

 複製身体を含めると多分60人に足りないくらい。俺はもう増えないみたいだけど、俺だけで本体含め10人いる。

 駐在エルフさんは種族的特長なのか適性だけだと50人とか動かせるが、種族的価値観により複製身体を作るくらいなら単為生殖で増えるとのことで複製身体は1体も使っていない。もし駐在エルフさんがその人数で迫ってきたら俺の命は吸い尽くされていたかもしれない。


「節目ということで今後の活動方針について皆さんで話し合いたいと思います」


 パラパラと参加者の拍手が聞こえてくる。誰か進行役代わってくれないかな。


「ここ10年ほど無目的に……旧エルフ星回復プロジェクトに皆で注力してきたけど、何かあれやりたいとかこれやりたいとか見つかったりした?」


 すっと無機質美人のホログラムが手を挙げた。

 他に誰も続かないので掌を向けて促してみる。


「支援者より、ワームホールの先へ興味を向けるよう指示を与えられております」


「はい中断」


 今の言葉を理解した一部というか、旧エルフ星出身の6人と無機質美人のホログラムを除いたメンバーで円陣を組んで話し合う。

 旧エルフ星出身の人達は他所でギフトがどういった扱いをされているかを俺達の話でしか知らないので、さっきの無機質美人のホログラムの発言の本質を掴めなくても仕方ない。


 ヤバない?

 ヤバヤバ。

 どないしよ?

 どないもならんと思う。


 そんな感じに話し合いは終わった。


「厳正な協議の結果、先ほどの提案は誰も聞いていなかったと決まりました異議のある方は挙手をどうぞ」


 円陣を組んだ面々は誰も手を挙げない。

 旧エルフ星出身の面々も空気を察して手を挙げない。

 無機質美人のホログラムも義理は果たしたとでもいうような顔で手を挙げない。


「満場一致を得られ、嬉しく思います。今会議において、今後の方針を考えるための提案はまだ何も為されていないものとします」


 全員が同意を示す拍手をくれた。良かった。


 ワームホールの向こう側に居ると目されている、帝国の存在する銀河にギフトを配っているギフターに関しては一切の情報がない。

 すくなくとも、俺の出身国である帝国にはギフターの主義主張や動機目的に関して一切の資料が存在しない。無機質美人のホログラムの助力を得たムチムチ美人さんが断言してた。発覚していないから犯罪ではないとも言っていたが、それは立件されていないのであって犯罪ではないという表現は適切ではないのではないかという疑問はそっと俺の心の棚にしまい込まれたままだ。

 ムチムチ美人さんの犯罪行為はさておき俺は明らかにギフターに狙い撃ちされていると感じているが、それだってギフトを拾う数や頻度からそうなんだろうと思える程度でしかない。


 そんなギフターが無機質美人のホログラムを介して俺たちの行動に干渉しようとしたなど、そんな事実はありえない。そういうことになった。


「まあ、そもそもワームホールの向こう側が安全かどうかも分からないのに突っ込みたくはないよ」


 ギフト化幼馴染殿が特に何も考えていないような顔でそうおっしゃった。


 あー……言っちゃった……。

 視線を巡らせると、ムチムチ美人さんと元レディアマゾネスSPさん達の目が虚無ってる。たぶん俺の目も似たような虚無を映し出してる。

 ギフト化しても幼馴染殿は本当、一言多いっていうか粗忽っていうか。子供とは言えない年齢になっても、ギフト化して良く分からない体になっても、昔と本質は変わらないんだなぁ。


 ≪金剛城(こんごうじょう)≫の活動方針を検討する集まりは、一部の参加者が虚無をのぞき込んでしまってすぐには戻ってこられなくなったので解散。


 数日後、ちょっと減って来た一部の資源を溜めるべく≪金剛城(こんごうじょう)≫の超巨大採集器を使い光速の数倍の速度で宇宙塵を集めていたらワームホールの発生に立ち会うことになった。

 1日と経たず消滅したワームホールの後には中型1番コンテナが残され、そのコンテナの中にはワームホールの向こう側を安全に観測する機器やワームホールを発見する機器と、それらの製作や使用に関する各種データを納められたメモリーキューブが収められていた。

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