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01B-06(01-17~01-21)

01-17


 ギフテッド対策室の内情についてどこまで話すか悩んだものの、派遣される人員の選定に関するさらっとした疑問だけだったので助かった。

 休職中でも今はまだ帝国の公務員という立場なのでその辺の情報漏洩はね。


 それよりも。


 まさか青年が5人に増えていたなんて。

 これはもう私達11人と酒池肉林したいという意思表示なのでは?

 ……いやいや、ちょっと落ち着こう。種族的に獲物を定めたら前のめりになるのは仕方ないとしても、こんな事ばっかり考えていたらまた前と同じく気付けば冷静ではなくなっていたりしかねない。


 私も来る日に青年を挟み込むべく2人に増えてみたが、これは便利だ。

 自分が二人という、一部を除いた人種(ヒトしゅ)が本能的に有している恐怖を克服すればこれほど急激にスペックアップが出来るのはすさまじい技術だ。

 ふむ……私が青年を挟むつもりだったが、青年に挟まれるのも……ふむふむ……。




01-18


 いやー、自分だけの時間と青年や同胞と一緒に過ごす時間を同時に確保できるなんて複製身体は便利だね。

 青年の保有するギフトが増えて、しかも≪金剛城(こんごうじょう)≫のメインコンピューターが急激に強化されるなんて便利だね。

 細かいことは良いんだよきっと。

 ≪金剛城(こんごうじょう)≫のクルーが増えたことを喜び歓待しようじゃない。


 ……わかってたけどギフトがギフトを生み。ギフトがギフトを呼ぶこの状態は心が疲れるぅ。

 青年に癒して貰おう。




01-19


 初回のレース以来何度かの行われた競技会でパッとしない成績ばかりだった私の時代が来た。

 人型ロボットの操縦は私が一番のようですね。

 超高反発ボールのバスケも、サバゲもチャンバラも、人型ロボットを操作するならば対等に戦えるっ。


 青年を独占できる2日間を掴みとって見せる。

 そしてそろそろ私のメインウェポンで撃墜して――ちょっと興奮しすぎているようなので落ち着きましょうかね。危ない。


 うう……まさか人型ロボットに搭乗している時の肉体的疲労がこれほどだなんて……2日間を勝ち取ったのに1日中介護させてしまうなんて……。

 しかしこれはこれでそういうプレイなのでは?




01-20


 巡洋戦艦……戦艦……防衛拠点……。


 これを知ってしまった以上、私も10人の同胞もギフテッド対策室には……いえ、帝国に戻るのは無理でしょう。

 帝国の上層部に存在する一定数のボンクラ共を考慮すれば、これだけ長くギフテッドと一緒にいた私達が戻って無事済むなんて思っていませんでしたけど、これが決め手ですね。


 大人しく元の生活に戻れば記憶を吸い取られ、その後ボンクラ共が現代における超級の戦力を知って何をするか。

 とっくに≪金剛城(こんごうじょう)≫を降りるつもりはありませんでしたけど、これは青年に対して私達を受け入れてもらえるよう迫るカードになり得ますね。


 あのヤバイ資料ホロを見たからってなぜ母艦の建造……。




01-21


 そろそろ隣の銀河へと到達する。

 つまり、おそらくは、帝国が存在する銀河における現行文明では初めて銀河間航行を成し遂げることになる。


 なにより重要なのが、私と10人の同胞達が青年に完全な≪金剛城(こんごうじょう)≫のクルーとなりたい意思を伝える瞬間が近づいているということだ。

 断られないとは思う。でもぶっちゃけプロポーズみたいなものだし落ち着けるわけがない。同胞達も心なしかそわそわしている。


 ハーイ。私達の乙女心を弄ぶかのようなタイミングでイベント発生。

 誰も何も悪くない。悪くないんだけどね。もうそろそろか、もうそろそろかとその時に向けて覚悟を固めていたのにもおぉぉぉ。

 救難信号なら人道的に放置するわけにはいかない。グッバイ一度固まった私の覚悟さん。


 そして出会った植物由来人種(ヒトしゅ)。俗な言い方をするとエルフになるんだろうなこの外見的特徴。


 今、豚由来人種(ヒトしゅ)であり、オークと呼ばれることもある種族として脈々と受け継がれてきた私の血が――別に騒いだりしない。

 なんでかオークとエルフは一部の創作物で大人気だけど、私個人としては別にエルフに思うところもないし当然か。


 有人惑星が回遊性宇宙怪獣の襲撃を受けるなんてなんという不運。

 それも無機物も容赦なく貪るタイプだなんて、安全航路航行中の進路上にワームホールが突如発生するくらいの確率じゃないかしらねぇ。具体的には長い帝国の歴史上では一例しか確認されていない。


 ま、青年もやる気みたいだし人道に則って救助活動に励みますかね。

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