01B-05(01-12~01-16)
01-12
青年よ。君は今深宇宙の探索という冒険をしているわけだが、ワームホールの発生に居合わせた偶然を楽しもうという冒険心を持ってみても良いんじゃないかな?
安全第一は生きる上でとても良いことなんだけど、≪金剛城≫があればこの距離でワームホールを観測するくらいなんのリスクもないからね?
いや、でもこういう安定志向は人生のパートナーに良い条件なのか……。
そんな感じでワームホールの観察を始め、まあそれを専攻してた経験のある一部以外は2~3日眺めてれば十分だ。
1ヶ月で消滅したワームホールの痕跡は何か良く分からない真球っぽい何かだった。
ああ、うん……。面倒事を回避するなら青年の主張の方が……しかしアレも厄介の種と決まったわけじゃないし大丈夫だよ青年。
青年はあの真球っぽい何かの件など手早く心の棚にしまったのか、自分に身体強化措置を施してはしゃいでいた。
うむ。私達は11人だからね。ピーマンの肉体そのままじゃきっと大変だろう。励むのだ青年。
青年がプールなどという狙ったような施設を増やしたので、当初から同胞達と企てていた青年向けハプニングも実行してみた。
うーん……ちょっと段階的に刺激を強めてみよう。
01-13
同胞の一部から『ここまであからさまにセックスアピールをしてもほぼ反応のない彼は何らかの意図をもって抑えているのではないか?』との懸念が示されたため、単刀直入に当人に尋ねることにした。
ぶっちゃけ一人くらい手を出されていてもなにもおかしくない状況下での迂遠な攻勢に焦れ始めていた。
まさか≪金剛城≫製のインプラントデバイスに性欲をピンポイントで抑制する機能があったなんて。
不能じゃなかったのは良いけど、それはつまり彼が反応する最低限の刺激を私達では与えられていないということなのでは……?
衣服等を含めた視覚的な攻勢を今後も続けていく。これは決定事項だ。
あはははは。インプラントデバイスの機能を確認するのはたーのしーなー。
≪金剛城≫の内部放送で何事かと思ったら、移住可能惑星の発見だなんて大事じゃないのよ。そしてスルーしようとした青年。
銀河間恒星系の移住可能惑星をスルーは何のために深宇宙の探索に乗り出したのか分からないよ青年。
あれ? 本当になんで彼は深宇宙になんて来たんだろう?
まさかその場の思い付きとかじゃないよね?
……ま、まあ、青年が私達との生活を楽しく感じていると同胞伝に聞けたので良しとしよう。
01-14
青年のガードの固さはあまりに手ごわい。
巡洋艦に12人の居住なんてどれだけ贅沢な空間の使い方なのかと説明しても納得しないとは……。でももうちょい押せば何か進展を得られそうだったかなぁ。
惑星降下探査用コンテナも興味が尽きないので使用はしますけどもー。
しかし、私たちがちょっと目を離した隙に衛星軌道上から惑星地表の探査を終わらせているなんて、驚くほどの手際の良さだ。
惑星に降下して遊んだもとい調査した収穫として、≪金剛城≫で過ごすよりも物理的な距離が近かったおかげか大分私達を意識するようになっていると思われる。
トンデモ論者達が楽しそうに語らう『今我等が存在する下位次元から抜け出し一つ高みへ進んだ敬愛すべき先達』とかいう人種の実在が現実味を帯びてきたのは収穫とは思いたくないかな。
あのトンデモ論者達がどれほど騒ぎ立てるかを考えるとちょっとね。
青年、本当にこの文明の支配領域中心へ向かうの?
いつもの安定志向はどこへいったのかな?
01-15
セクサロイドは認めませんよセクサロイドは。
青年の性的嗜好をまとめた資料を何度分析しても生身よりセクサロイドを好む結果なんて出ないんだけど、何か嗜好を大きく変える出来事でもあったのかしら?
機械的知性のコミュニティを≪金剛城≫へ迎え入れて生活が便利になったと思ったらあんにゃろうども。
10人の頼もしい同胞諸君、我等は決してセクサロイドに負けないぞ。気合を入れるのだ。
01-16
セクサロイドの件以外では機械的知性のコミュニティとは仲良くやっている。
そんなところへ青年が持ってきたタッグレースはとても良いレクリエーションだ。
よくやった青年。ハグしてあげよ――はいはい淑女協定ね淑女協定。アピールはOKでも直接接触の機会均等なんて誰が盛り込んだのやらまったく。
青年を中心に据えた12人での酒池肉林か。
それとも自ら勝ち取った権利における青年の一定時間独占か。
これは固く結束した同胞達とはいえ、いや同胞達だからこそ派閥が割れるのは仕方ない。
私は勿論、優勝を狙う。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
あの腐れ宇宙怪獣どもがああああああああ
などとヒートアップしたものの、まさか青年を誘惑しているつもりの私達の方が性欲に呑まれていたとはなんたる失態。
失態はどこかで挽回するとして、1日だけとはいえ青年を独占してプラトニックに触れ合うのは……これはこれでとても良いものなのではないかな?