01-28
翌朝、人間関係に大きな変化が訪れてどうしようかと悩みつつ食堂へ二人で行くと親友殿がムチムチ美人さんやレディアマゾネス元SPさん達とハイタッチを交わしていた。
彼女達ともなんだかんだその内一線を超えるのかなと思っていたのでそのことで確執が生じたらとか考えていたのに寧ろ親友殿が称えられている。
案外俺の考えすぎだったのかなと釈然としないまま食事を済ませたら複製身体がそれぞれ別の人に連れていかれてしまった。
女性陣はすでに打ち合わせを済ませていたのか一巡するまでスケジュールは完璧だった。
俺のストレスが蓄積しないように配慮されている辺りが完璧。
複製身体含めれば俺が5人いると言っても女性の方が数倍居る訳で複製身体を増やすことはできないかしっかりと調べた。
頑張れば増やせるらしいので試しに確認してみたら2体増やせた。
もしかして俺才能あるんじゃないのってちょっと浮かれてたら俺の他に複製身体を使ってた人は1体増やせたり、複数の自分で俺を攻めるスキンシップに興味を持ってた複製身体を使ってなかった人が複製身体を使えるようになってたりして人数比が縮むどころか大きくなった。
複製身体そのものを増やすんじゃなくて身体の一部のパーツを2本に増やす方がいいのかな。
そもそもそんな性欲の強い人はおらず、ぴったりくっついてダラダラしたり一緒にスポーツする方が好きな人が多かったので特定のスキンシップに必要な俺のパーツが足りなくて人間関係の和が乱れることはなかった。
女性側の複製身体の数を除外すれば俺7体に対して女性14人なので淑女協定に則ればそこまで無理のある比率ではない。
なぜ駐在エルフさんと無機質美人のホログラムにも頂かれてしまったのかは気にしても仕方がない。
イチャイチャはとても良いものだ。
植物由来人種でも人種は人種なのでそういった欲求やその対象に大きな差はなかったということだろう。
無機質美人のホログラムに関してはここを深く考えると他の棚上げしてる諸々も突っ込んでしまうので考えない。
ホログラムとはいったい……。
「あれこれ一区切り着いた感じだけど、なんかやりたい事とかやり忘れてる事とかあるかな?」
皆とイチャイチャしてる間に恒星系間移民船団に参加していたエルフさんや恒星系間移民船団の親エルフ派の人達は新エルフ星にしっかりと腰を落ち着けることができている。
旧エルフ星回復プロジェクトも予定通り進んでいて今のところこれと言ってやることもない。
本音としてはもう皆と≪金剛城≫でダラダラして余生を過ごすのでもなんの問題もないが、≪金剛城≫の技術を使えば俺の寿命もエルフさん達くらいにできるのでちょっとくらいメリハリ付けた方が良いかなとも思う。
「確か、帝国のある銀河とは別の銀河で宇宙に進出した文明を発見したと言っていたよね。そっちへ行ってみたりとかはしないのか?」
ふぅ……トゥルーギフトになった親友殿は分かっていないようだ。
「その表現だとエルフさん達も含まれているぞ。つまり、我々は隣り合った銀河で発生した文明同士交流をしている。……とても親しい感じの交流を」
ふと視界に入った駐在エルフさんが物足りなさそうな顔をしていたので最後に付け加えたらパっと表情が明るくなった。長生きしてるのにこういうところかわいいなー。
長生きは関係ないか。恋愛は知識として知っていても生殖活動は植物的なやり方での、しかも受粉すらしない枝分けという実質単為生殖しかしたことなかったらしいし。
「はいはい。じゃあエルフさん達以外のお隣銀河の文明との交流はしないのかい?」
親友殿が面倒くさそうに左手をひらひらさせている。
やはり親友殿は分かっていない。
ムチムチ美人さんやレディアマゾネス元SPさん達に視線をやると虚無を感じさせる表情だった。
多分俺も似たような表情をしている。
駐在エルフさんと無機質美人のホログラムはぼんやり俺達を眺めているがあの辺りはどんなことを考えているのか分からない。
「そんな面倒くさいことするわけないだろう」
親友殿が口元を引きつらせている。
でも全く接触した経験のない異文化と関わるなんて専門にしてたり趣味にしてたりする人達に任せるよ。
生憎と≪金剛城≫のクルーにはそういう人は居ないんだ。やりたいって人が居たらやってたかも知れない。
やりたい人が居たら?
「お前が率先してやってみたいというなら皆に検討してもらうぞ」
「いや、私が悪かった。そうだな。確かに面倒くさいばっかりだ」
親友殿もとりあえず思いついたのを提案しただけだったか。
他に誰も何も言わない状態で何かきっかけを作ろうとしてくれたならちょっと良くない対応の仕方だった。
ここで蒸し返すよりは後で謝って全力でお礼をしよう。
「しかし困った。基本的な欲求が満たされているとやってみたいことが出てこない」
「基本的な欲求というよりも、≪金剛城≫さえあれば現状では大概の欲求が満たされていますもんね」
ムチムチ美人さんの言葉にレディアマゾネス元SPさん達も駐在エルフさんも親友殿も頷く。
無機質美人のホログラムはなんらかの欲求があるのかも定かではないのでそっとしておこう。
「よし。じゃあ今は無理に案を出そうとするのはやめておこう。誰かが何か思いついたら皆で考えてみるってことで」
俺達の宇宙的スローライフはこれからだ!
――01_Shrimp is absent yet._完――