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01-27

 トゥルーギフトになった親友が他に行く当てもないしトゥルーギフトとしての所有権が俺にあるしで≪金剛城(こんごうじょう)≫のクルーとなって早3ヶ月。


 彼女のなんかすごい身体に納められていた技術データを活用して≪金剛城(こんごうじょう)≫やそれに連なる各種船や施設に機械的知性の機体が劇的な進歩を遂げたらしい。


 真球っぽい何かがどろっと浸透した中枢のコンピューターとかも数段は高性能になったと言っていた。

 無機質美人のホログラムがなんか上機嫌だったので共感したかったんだが正直なところ俺が日々を過ごしている範囲では以前との違いが分からないので、すごいねとかそうなのかとか返すほかなかった。なんとなく罪悪感がある。


 トゥルーギフトになった親友は問題もなさそうなのでさておいて、旧エルフ星を旅立った恒星系間移民船団に関して進展がないなと思っていたら丁度発見したと教えられた。

 予測航路からずいぶん離れたところで恒星系間移民船団に加わった若い世代のエルフさん達を中心とした、本来の恒星系間移民船団の1割にも満たない規模の集団を捕捉し接触したとの報告だ。

 何かは分からないが何かがあったのは明らかな報せだった。


 もうちょっと詳しく聞いてみたら、旧エルフ星で平和に暮らしていた頃から存在した反エルフ思想の集団が移民における不安の矛先をエルフさん達に向けることで善き先達を自任し惑星の文化文明を導いていたエルフさん達を排斥し、その反エルフ思想の集団が恒星系間移民船団の指導者となり少数派となった親エルフの人々を恒星系間移民船団からパージしたとのこと。


 うん。反エルフ思想の集団が掌握した方は攻撃的っぽいし、俺が支援するつもりなのはエルフさん達なので今回みつけた親エルフの集団を新エルフ星に連れて行ってこの件は終わりだな。


 恒星系間移民船団親エルフ派を≪金剛城(こんごうじょう)≫に回収して新エルフ星に連れて行くとエルフさん達に喜ばれた。


 エルフさん達と親エルフ派は反エルフ思想の集団によって恒星系間移民船団から切り離されたため予定していた恒星系には辿り着けなかったが、エルフさん達とついでに拾ってきた親エルフ派の方が先に新天地に辿り着いたのは世の中の廻り合わせを感じる。


 なお恒星系間移民船団が目指している恒星系には彼らの移住可能な惑星が存在しないので、エルフさん達を排斥した恒星系間移民船団はようやくたどり着いた恒星系で調査に時間と資源をつぎ込んだ挙句次の恒星系へ移動せざるを得ない。


 更に言うとあの近辺の恒星系に彼らの移住可能な惑星は存在しないし、恐らく最初に発見するだろう移住可能な惑星は過酷な環境なので移住するかどうかでまた恒星系間移民船団は割れるかもしれない。


 うーん……エルフさん達に八つ当たりした奴らの不幸で飯がウマイ。


「君は変わらず良い性格をしてるね」

「俺は親エルフ派なのでエルフさん達に優しくないやつらに優しくないだけだよ」


 恒星系間移民船団の目指す恒星系周辺の調査結果を眺めてとてもいい気分になっていたらトゥルーギフトになった親友が俺の考えてをいる事を察して苦笑している。


「エルフさん達にコンプレックスを抱くのは仕方ない環境だったろうし嫉妬するなとは言わないけど、それをぶつけるにしたってタイミングとやり方が気に食わない」

「私だって同じ思いさ」


 その辺を脇においても、俺が恒星系間移民船団を支援しようと思ったのは旧エルフ星に残っていたエルフさん達の同じ惑星の同胞に対する献身に心打たれたからだ。

 ぶっちゃけエルフさん達を支援するついでの恒星系間移民船団への支援だったのでエルフさん達が居ない方の集団に関わる気は無い。


「ま、あんまり面白くない話はやめよう。それより、最近どう?」

「雑な話の振り方だなぁ。この身体には慣れたし、クルーの皆は優しいし、欲しいものがあったら≪金剛城(こんごうじょう)≫の施設ですぐに作れるし……君が未だに好意に鈍感なのを除けば理想的な環境だね」


 鈍感って程でもないんじゃないかなと言いたい。


「スクールに居た頃、いい雰囲気になっても何もしなかったことを言ってる?」

「自覚はあったようだね」

「あれは就職か進学か決まらないまま下手なことしたら双方にとって良くないって二人で決めたことだろー」

「そうだね。鈍感というのは正しくないな。枯れてるって言い直そうか。もっと若さに任せて多少は後先考えない行動に踏み切っても良かったんじゃないかなって今いうのはズルイから言わないでおいてあげよう」

「全部言い切ってるしその言い方こそズルイだろ」


 親友殿に乗せられてあれこれ言い合っていたら気づけばペロリと頂かれてしまっていた。

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