01-22
≪海老緒≫から荷物を運んだりそれぞれに割り当てられた部屋に手を入れたりと、エルフさん達が仮設居住区に腰を落ち着けるまでの10日ほどはアステロイドみたいになってしまった惑星をどうにかできないものか無機質美人のホログラムにシミュレートしてもらっていた。
10年くらいかければある程度のところまで回復できるという思いのほか希望の見える結果が出てなんとなく安堵して、エルフさん達の代表が直接挨拶をさせて欲しいと伝えてきたのででムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達と一緒に会いに行ってみたら下にも置かない扱いをされた。
皇帝陛下の行幸だかのホロ映像を思い出した。
そんな仰々しい対応されても困る……ムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達に任せたりとかできないかな。
できない? ですよね。
でもスクールまでは平々凡々な生活を送りスクールを出た後はしがない木っ端運送業屋という由緒正しい経歴の小市民な俺には控えめに言って耐え難い。
エルフさん達の惑星ではかろうじて恒星間移民を理論上行える技術はあってもそもそも宇宙の開拓に積極的ではなかったので俺の立場を説明するにあたりギフトという物について説明することになった。
宇宙の開拓に積極的ではなかったのは端的に言うと惑星における指導者というか尊敬すべき先達として仰がれていたエルフさん達が内向的な気質の種族なのと、エルフさん達的には大規模な移民が必要になったら居住可能なまま惑星を遊星に作り変える技術を構築していこうって数万年規模の見通しを立てていたそうだ。
母星が襲われるまで宇宙怪獣の脅威を測りかねていたというので知らない災害に備えられているはずもない。
お互いの事情を説明し合ったり個人を紹介し合ったりしていると、旅立っていった恒星系間移民船団を心配しているのだろうと俺でも分かった。
植物由来人種だからなのか単為生殖も可能なエルフさん達は最悪でも一人が母星の各種データと共に生き残れば母星は滅びないという達観のようなものがあり、そういう意味ではまとまった数を≪金剛城≫に拾われたエルフさん達にとって種族と母星は既に救われたと認識している。
そうなると個人的な親交なりがあった人に意識が向き気になってる感じだ。恒星系間移民船団への助力も頼みたいけど俺達にそんなことが可能なのか分からないし、それ以前に対価を出せないから言えないんだろうなあ。
ちょっと無機質美人のホログラムにその辺模索してもらおうと思ったら直ぐに対処の案を渡された。
まず第1案として先行調査高速艇バージョン2で痕跡を探って追いかけ発見次第≪金剛城≫の超高性能ワープ能力で接触し、エルフさん達を合流させるなり支援するなりを決めようと提案したら、大雑把な方向しか分からないどこへ行ったかも定かでない恒星系間移民船団の捜索と支援はエルフさん達が断った。そこまでさせられないと。
なので妥協の第2案。先行調査高速艇バージョン2で痕跡を探って追いかけ、エルフさん達の送り出した恒星系間移民船団を見つけたら改造を施す為の工廠艦と、それに備えて資源を集めつつ移動する採集船と輸送船に、それらの護衛船という集団を機械的知性に任せて送り出すと決まった。
超小型人工ワームホール式通信が可能なら相対位置を常に把握できるし機械的知性なら最悪の場合でも中身を全部≪金剛城≫に退避させれば人的損耗は皆無に抑えられるという判断だ。
その恒星系間移民船団支援船団の護衛に巡洋戦艦の≪海老蔵≫と戦艦の≪海老宗≫を編成しようとしたら過剰だからやめろとムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達のみならず無機質美人のホログラムにも言われた。
物凄く渋々諦めた。
恒星系間移民船団の支援とは別口でエルフさん達の母星を回復させるプロジェクトの土台となる設備を構築したら、≪金剛城≫のクルーになった機械的知性の故郷といえる惑星へ行くことが決まった。
機械的知性の提案により、エルフさん達はとりあえずそっちへ移住する。
エルフさん達の母星は実際に回復したら俺に好きにしてほしいとのこと。
実は機械的知性の故郷もそういうことになってたのでエルフさん達は俺という個人の所有する惑星を借りるような形だと言われた。
物件の賃貸とは規模が違い過ぎてちょっと理解に苦しむものの気にしても仕方ないので棚上げしておこう。
エルフ星回復プロジェクトのために隣の星の衛星に拠点を構築したり近場のアステロイド帯で必要な資源を採集している内に2ヶ月ほど経っていた。
エルフ星回復プロジェクトもあとは機械的知性に任せていいというのでエルフさん達の移住を行うべく、以前に一度スルーした機械的知性発祥の惑星へ出発そして到着。
超小型人工ワームホール式通信可能な先行調査高速艇バージョン2が既に≪金剛城≫クルーの機械的知性発祥の惑星近傍に到着しているのでその座標を目印に≪金剛城≫をワープさせたので移動が決定した1時間後には惑星の静止軌道上へ固定を済ませていた。
超小型人工ワームホール式通信可能な先行調査高速艇バージョン2に関してはそういえば前に許可してた気がする。
気付いたらコントロールルームに居ることの多くなったエルフさんのまばたきが物凄い多くなってたのは面白かったけどなんかあったんだろうか。
湿度が合わなくて乾いたとか?
コントロールルームは温度も湿度も一定のはずだけど。