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01-18

 複製身体の同時操作にもすっかり慣れ、動かす身体が増えても現状の俺にはメリットも特にないなと扱いに困り始めたころ、ムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達に一緒にあれやろうこれやろうと声をかけられる機会が増えてきた。


 前からちょいちょい同じように誘われていたし一緒に遊んだりトレーニングしたりしていたが、複製身体がいつも4体稼働しているほど声をかけられるようになったのは集団の一員みたいな感じでちょっとというか凄い嬉しい。


 その時々で何をするでもない複製身体1体は大体食堂隅のリラクゼーションスペースに転がしておいて同じように複製身体を使っている面々の余ってる方とちまちまお喋りしたりを楽しんでいるので実質5体が全部稼働しているに等しい。


 時間当たりの経験密度が向上して前以上に充実した日々だ。今更ではあるものの女性とのコミュニケーションも大分改善されている気がする。やはり大事なのは慣れなのかもしれない。




 同じ人物が2人以上いる絵面に慣れることができない人もいるとあって双生児程度に区別がつくようそれぞれの複製身体の見た目を弄り回したのでストレスを強く感じる人もいなくなったころ、皆で食堂に集まり朝食を摂った後それぞれがやりたいことをやろうと散っていく前に、≪金剛城(こんごうじょう)≫のメインシステムを預けている機械的知性のマザーが大事な通知を送って来たのでもう一度席についてもらった。


 いつだかワームホールの跡地で拾った真球っぽい何かの解析が終わったらしいと伝えられ、一部がものすごいテンションを上げた。

 そして直後、解析は終わったが現状の≪金剛城(こんごうじょう)≫では何一つ分からないと分かったと告げられ喜んでいいのか落ち込めばいいのか当人もわかっていないだろう微妙な声がいくつかこぼれた。


 微妙になった空気を変えるべく多分あの真球っぽい何かもトゥルーギフトなので誰かが直接触れば何かわかるとは思うと俺が推測を口にすれば、そらそうだと頷かれた。やっぱり皆も同じこと思っていたようだ。

 じゃあ誰か触ってみる?


 防疫はじめできる限りの安全確認を終えて皆で真球っぽい何かを保管している部屋に入り誰が触るかって聞いたらやっぱり俺が触ることになった。


 回収したのも保管してたのも安全確認も全部俺がやったので俺の所有物というムチムチ美人さんの意見に誰からも異論は出されないので仕方なくぺたっと触れば、知ってるのが当然って感じに真球っぽい何かについて一通り理解した。俺が所有する船が回収のために接触した段階で所有者は俺に固定されてた。


 しかしデフォルトで≪金剛城(こんごうじょう)≫に搭載されたメインコンピューターと比べ物にならないコンピューター……コンピューター? だけどつるっつるの真球っぽい見た目でどこに他の機器を接続するんだろうか。


 何も考えず蜘蛛蜂に貰って以来ちまちま使ってる端末の有線接続端子を引き出して突き刺したらぐにゅっと刺さって何かをインストールされた。

 細かいこと考えても意味はないのでとりあえずそのソフトを立ち上げると音声対話式ユーザーインターフェースのマニュアルだった。

 より正確には真球っぽい何かから無機質な美人のホログラムが俺の目の前に投影された。


 端末にインストールしたのがなんなのか分からないけど多分必要ないよね。

 ≪海老介(えびすけ)≫の入ってたコンテナ開いた時のことを思い出したので贈り主は同じ存在じゃないかなとなんとなく思う。


 無機質美人のホログラムに興奮する一部を他の人と一緒に宥め、無機質美人のホログラムに言われるまま≪金剛城(こんごうじょう)≫の中枢へ真球っぽいコンピューターを運ぶとどろっと解けて部屋に浸透してしまった。


 理解できないがそんなこと言うともっと気にすべきことも多いのでそういうものとして棚上げした。出来なかった何人かは他の人が何かを言い聞かせていたのでその内現実との折り合いをつけるだろう。


 ナノマシンの集合体なら液体っぽくなっても不思議じゃないしきっとそういう物なんだよ。

 冷静になってみれば視覚的に変化が大きくてちょっとびっくりしたけどこのくらいのトンデモは今更にも思える。

 俺の身体が5体に増えてるのも下手したら発狂しかねないし。

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