01-17
最低限の安全確保を目的に≪金剛城≫より先行させる調査船も本来は必要なんじゃないかと唐突に思い立って先行調査高速艇という雑な名前をつけて船をデザインしてみた。
特に理由もない思い付きの産物なので完成させて満足したらパッケージして倉庫に放り込むか解体するつもりだったのだが、機械的知性のある個体が出来たらその船を本来の目的に使わせてくれませんかと提案してきた。
必要かなとムチムチ美人さんに聞いてみたら安全に配慮するのはとても良いことだとぼんやり肯定された。
安全面により配慮した先行調査高速艇バージョン2を機械的知性に預けてみたのが結構前の話。
今ではその先行調査高速艇バージョン2は何隻も作られローテーションを組んで進行方向へ30度のコーン状に放っており、そのうちの1隻が隣の銀河までの行程を折り返すところまで≪金剛城≫が到達していると報告をくれた。
となると帝国のある銀河とその隣の銀河の距離は10万光年くらいかもしれない。航行のデータを見れば正確な数字もわかる。
ムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達に伝えたらまた誰かの琴線に触れてはしゃいでくれるかな。
もうすっかり日常の一部になりつつまるで飽きを感じさせない生育食材料理を作る面々に感謝してご飯を食べ終わったとき、ふと美人に囲まれている現状を自覚して疑問を覚えた。
彼女たちがここに居るのはトゥルーギフトを拾った俺を帝国が籠絡しようとしたからだが、性別や種族が違う場合にはそれに応じた人員が派遣されるのだろうか。
センシティブな内容なのでやんわりムチムチ美人さんに聞いてみた。
「はい。ケースバイケースですね。私が知っているのだと、同じピーマン……プライマリーヒューマンの女性で派遣された美男美女に囲まれてちょっとげんなりしてましたね。派遣されるのは超法規的に調査された結果を基にギフテッドの性的欲求を向けられると判断された人員なので、その女性は確か性別に関係なくイケちゃう人だったはずです」
美男美女の部分で俺が不思議そうにしたのでそれを見て後半が付け加えられた。
というか超法規的って俺にトゥルーギフト関連の説明をしてくれた鬼畜じゃない眼鏡の人もそんなこと言ってたような気がする。いや、言ってなかったかも。
トゥルーギフトに関して俺に説明したのはムチムチ美人さんだった気もする。
そういえばあの鬼畜じゃない眼鏡の人もムチムチ美人さんも所属はどこだったんだろうか。
ムチムチ美人さんはいつも特別ドック傍の事務所みたいなところにいたけどあそこはなんの部署だったのか。
なんか大して気にならない気がしてきた。また思い出すことがあったら聞いてみよう。
ある日、実は俺は2人居るんじゃないかとムチムチ美人さんに聞かれた。
答えはノー。5人居るんです。
≪金剛城≫で生活を始めて2年ほど経つが、≪金剛城≫に出来ることは未だに把握しきれていない。
そんなわけで暇がある度ちまちまと≪金剛城≫のマザーコンピューターのデータを漁っており、1ヶ月ほど前に見つけた技術によって俺の複製身体を作り1つの自我でそれらを操作することがつい数日前に可能となった。
俺の人格は1つで5箇所に同時に居るというよくわからないすごい技術だ。
ちなみに脳が5つに増えたことで身体を操作するのに関係のない余剰処理能力が60パーセントほど生じた。
脳が1つ増えるごとに15パーセントのボーナスみたいな。
ボーナスの方はぱっとしない数字だが、この技術によって操作できる身体の数は個人差があり俺の5体というのは初期値としては多い部類っぽかった。いえーい。
いつものごとく女性陣の一部がこの技術に食いつき自分の適性を確認していた反面、一部は明らかな忌避感を見せていてちょっと意外に思った。
いや、意外でも何でもない。自分が増えるって一般的には多分気持ち悪いもんな。
おそらくその辺りの感覚も適性に表れていて、そうした忌避感の強い面々は適性ゼロで2つ目の身体操作はできないと結果が出た。
乗り気だった人達も操作できる身体の数は多くて2体だったので俺の適性はこの集団の中ではずば抜けていた。
反面、ムチムチ美人さんなんかは脳が2つになって余剰処理能力が60パーセントで、他の人も脳が2つになって余剰処理能力が40パーセントから50パーセントとなったので俺の性能の低さが浮彫になった。
脳が5つで60パーセントアップはあまりに俺の脳が低性能過ぎないかと≪金剛城≫のマザーコンピューターで調べると平均値の下程度だったので一安心。
そういえばムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達はみんなエリート中のエリートみたいな人達だったのでこの脳性能格差もきっと当然だ。