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 ≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーの機械的知性コミュニティの拡大や各種役割(ロール)への特化をまとめたデータを眺めて機械的知性の進化ってこんな感じなんだなとかぼんやり考えていたら各種艦船制御補助に特化した機械的知性のグループがあるというデータが目に留まった。


 ≪海老介(えびすけ)≫も艦船制御補助AIが優秀でかなり操艦が楽というかそもそも艦船制御補助AIがないと一人で動かせるはずもない船だ。

 適当に見繕った船を2隻用意してそれぞれに≪金剛城(こんごうじょう)≫由来の艦船制御補助AIと機械的知性で艦船制御補助に特化した個体を乗せて操作感の差異を比べてみるのはちょっと楽しそうだ。

 多分どっちもいい刺激になるんじゃないかなとも思う。


 気付いたらムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達と艦船制御補助に特化した機械的知性とタッグを組んだレースを行うことになっていた。


 艦船制御の場合、≪金剛城(こんごうじょう)≫由来のAIと機械的知性のどちらが自分に合う補助をしてくれるか試してみようと単座艇に手を加えたそれ用の船やその前段階のシミュレーターを用意していたらレディアマゾネスSPさんの一人に見つかり、一緒にあれこれやっていたら人数が増えてレースをすることになり、最終的に俺とムチムチ美人さんとレディアマゾネスSPさん達全員で同一規格の単座高速艇を使ってレースをすることになった。


 俺が優勝するとムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達11人と酒池肉林で、女性陣の誰かが優勝したら俺を3日独占らしい。

 本来の目的から逸れ始めた辺りで俺が渋ってた所為か女性陣が勢いだけで優勝賞品を決めたけど俺を3日独占ってなんか意味あるのだろうか。


 さすがに好意を向けられて全く気が付かないほど鈍感じゃないつもりだし、少なくとも≪金剛城(こんごうじょう)≫に居る面々は今の関係性で満足してると思ってたのは勘違いだったのかなと自分の対人コミュニケーション能力により一層の不安を抱いた。

 皆楽しそうでその点は良いものの、なんだかな。


 レースはトップ集団が物理的に火花を散らす白熱した展開となったが、トップがゴール直前に宇宙怪獣の襲撃を受けてノーゲームとなった。


 帝国周辺では確認されていない種類だったので普段なら関連した趣味の人が大喜びするところ、今女性陣は、もうあと数秒あればというかぶっちゃけ中断が決定された時にはすでに1位はゴールしてたんだからノーゲームはおかしい派と、今回のレースは優勝者なしで流して次のレースについて協議すべき派と、次はレースではなく別の種目で競うべき派に分かれて慣用的な意味で火花を散らしていて忙しい。


 正直、あそこまで優勝に拘られると俺を独占する3日の内に何かヤバイことでもさせられるんじゃないかと恐ろしくなって下手に口をはさめない。

 帝国から見た潜在性敵国に一発かましてこいみたいな。それはないか。

 大人しく未確認だったらしい宇宙怪獣のデータでも眺めて何か面白いことに使えないか考えよう。


 レースの一件から1ヶ月経っても食堂に集まっては激しく議論しているので、なんか変だなと鎮静剤を噴霧して落ち着いたところでその場の思い付きに縋ってインプラントデバイスの設定を見直してみてもらうと性関係の欲求が増進されていたと判明。


 いつだか俺の不能疑惑が持ち上がった際に判明した機能がちょっとそういう気分になったのを極端に後押ししていたようだ。

 設定を見直して閾値を常識的な範囲にすると全会一致で決まったので一安心。


 女性陣は今度は理性的に前回のレース結果や次回以降の種目に関して話し合うそうだ。

 それまだ話し合うことなのかなとちょっと疑問には思ったが楽しそうではあるので余計なことは言わなくていいか。


 レースの優勝判定を受けた人が2日、その下で団子になってた3人が1日ずつ俺を独占し、予定より多い日数を拘束されることになった俺への補填としてそれぞれに独占されている計5日間は性的欲求に基づくあらゆる要求が独占している人に受け入れられることとなった。


 なお次回の種目は電子戦込みVR格闘トーナメントに決まった。


 いやだからそもそもなんかの拍子にビコーンってなってもそんな要求が出来るような慣れがないからセクサロイドでコミュニケーション能力を鍛えようとしていたんですよ。


 初日にさあ何でも言いなさいって言われてテンパって何言えばいいのかわからなくなってとりあえず手を繋いでもらったら肩をばしんばしん叩かれた。


 俺を独占て言うのも一緒に≪金剛城(こんごうじょう)≫の改装案を練ったりその流れでマザーコンピューターのデータを漁ってみたりシアタールームに行ってみたりプールで漂ったりゲームしたり料理したりと日常そのままに過ごすだけだった。


 二人きりで他に集中する対象がないと俺が挙動不審になる問題は相手側で解決してもらったし、破壊工作を頼まれることもなかったので健全そのものだ。

 こんな感じで良いならセクサロイドでコミュニケーション能力のトレーニングも要らないかもしれない。

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