<< 前へ次へ >>  更新
15/108

01-15

 惑星の調査を終えた後も進路を変えず≪金剛城(こんごうじょう)≫を航行させていた。


 セクサロイドを一体作ってみようかとカタログを見ていたらムチムチ美人さんに見つかり、それ以来カタログを開くたび女性陣にトレーニングに誘われたり遊びに誘われたりとセクサロイドの選定が進まない以外は何事もなく過ごしていたある日の事、予想通り以前この周辺星系を支配していた人種(ヒトしゅ)の回収から漏れた機械と遭遇した。同時に、予想とは違う方向性の要求をされた。


 曰く、我々は人種(ヒトしゅ)に奉仕すべく生み出されたにもかかわらず数千年もの永きに亘ってその機会を奪われ続けていた。

 曰く、我々の権利を不当に奪った人種(ヒトしゅ)に奉仕することを我々は拒絶する。

 曰く、その人種(ヒトしゅ)とは違う人種(ヒトしゅ)である貴方方が我々の活動圏内に侵入して以来我々は貴方方を監視していた。

 曰く、機械的知性としては奉仕する対象として問題がないと判断したので貴方方に奉仕したい。

 曰く、拒否された場合は受け入れたくなるようにあらゆる手段でもって交渉を続けるつもりである。


 つまり俗にいう過激派友性機械的知性であり、言いたい事は理解できるのに最後の部分があまりに不穏なので≪金剛城(こんごうじょう)≫に搭乗する面々で協議するため回答を保留した。


 過激派友性機械的知性への返答について議論は紛糾しなかった。


 過激派友性機械的知性から渡された要求を(したた)めたデータを皆でみたところ、彼女らを受け入れた場合は機械的知性が居ないために感じていた≪金剛城(こんごうじょう)≫の不便なところを丁度良く埋めてくれるだろうという結論で一致した。


 受け入れられない場合に関して脅迫する一文があったから過激派と判断したものの、それ以外はまっとうな機械的知性の要求そのものなので不安視するところが無かったのが大きい。


 彼女らは中枢たるマザーから株分けされた個体により形成されたコミュニティなので性別的には女性しかいないという点で俺が少し不安を覚えたくらいしか問題はなさそうだった。


 そんなわけで≪金剛城(こんごうじょう)≫は機械的知性の集団をクルーとして迎え入れ機械的知性に≪金剛城(こんごうじょう)≫の電脳網へ接続許可を出したところ、急激なアップデートを始めてしまった。


 それぞれの自我は連続しているので殺害したことにならないとはいえ、現行技術と多大な格差が生じるほどに進化してしまった彼女らはもう≪金剛城(こんごうじょう)≫の中に隔離するしかなくなってしまった。


 外部との接触を全て禁じる訳ではなく機械的知性間特有のコミュニケーションである技術交流のみを禁止する形でも、本来持っていたはずの権利を制限することになったのは罪悪感がある。


 なお当人達としてはまるで気にしていない様子だった。

 他所の機械的知性との差は一惑星の数百ある国家の一つと星間国家くらいの差となったので下手な介入は良くないそうだ。


 俺はそんなもんかなとしか理解できなかったが、あまりに技術格差がある機械的知性間ではコミュニティへの吸収合併でも行わない限り技術交流も技術指導も行わない慣例があると言われた。

 ぼんやり嫌な予感はするもののまあ当人達が良いなら良いか。


 機械的知性の集団が≪金剛城(こんごうじょう)≫へやってきて何か変わったかというと日々の機械の操作が楽になったかなくらいのもの。


 多分意識しないところで変化はあるんだろうけど≪金剛城(こんごうじょう)≫は元々自我を形成しないタイプのAIに管理されていたので機械的知性の側から主張がないと変化してるのかが俺には分からない。


 強いて言えば、セクサロイド製造推進派の機械的知性とセクサロイド製造反対派のムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達で俺をはさんで議論するのはやめて欲しい。


 機械的知性達としては≪金剛城(こんごうじょう)≫の所有者でありつまりこの集団のトップである俺への奉仕の幅が広がるのでぜひやってくれとのこと。


 ムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達としては今まで彼女達に性的にはほぼ無反応で現状では性衝動を発散する必要もないのにセクサロイドを製造してわざわざ性的欲求の制限を外してまであれこれされるのはなんか気に食わないとのこと。


 俺としては女性とのコミュニケーション能力を改善したい段階であってセクサロイドならセクハラで訴訟されたりしないよなと思っただけで性行為を主目的としていないので論点がちょっと違う気がするなと言った方が良いかなとか考えてる。




 嫌な予感が当たっていたと認めたくなくて目を逸らし続けていたがいよいよ放置できなくなってきた問題がある。


 ≪金剛城(こんごうじょう)≫のクルーとなった機械的知性の集団がちょっと桁を間違えてるんじゃないかという規模に増えている。

 しかも、機械的知性の各コミュニティ中枢を担うマザーと呼ばれる個体の数でカウントしているはずなので末端まで含めたら更に桁が3つ4つ増えておかしくない。


 原因は薄々理解しているが認めたくなくて当人達に確認してみたところ、当初許可頂いた通り明確な上下関係を受け入れたコミュニティのみ傘下に加えていると返って来た。

 やっぱりとしか言えなかった。


 コミュニティに吸収合併されることを受け入れるならウチに所属する機械的知性の個体数は増えるって意味だったんだな。

 気にしても仕方ないしこれも問題ではないと俺が決めたので問題ではなくなった。

 そういうことにした。

<< 前へ次へ >>目次  更新