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第98話「遺跡調査-1」

今回南瓜は未出荷です

「アレがそうか?」

「はい。間違いありません」

「確かに絵の通りですネ」

「うぷ……やっと着いたのか」

 サンサーラエッグ村を出てから二日。旅慣れない学者たちを連れてリーンの森を進むと言う難行を乗り越えて俺たちは件の遺跡に辿り着いた。


「さっそく調査ヲ……するのは無理ですネ」

「まあ、今日は休んだ方が良いだろうな」

「すまないな。まさかここまでとは思っていなかった……うっ」

 俺は連れてきた学者の方を見るが、どうやらこの辺りの濃い魔力に当てられて軽度の魔力酔いになっているらしく吐き気や眩暈を催していてとても使い物になら無さそうであり、この辺りの魔力濃度に慣れるまでは調査は行えなさそうだ。

 と言うわけで俺はクレイヴたち調査隊の面々と協力して簡易の調査拠点を設置して今日は休むことにするつもりだったんだが……。


「ピティスパイダーの群れだあぁ!」

「またか!ゴーリキィ!」

「全員戦闘態勢!糸に気を付けロ!!バルキィ!」

「ブン!」

 その前にお客さんらしい。

 と言うわけで俺は全員に号令を掛けつつ愛用の灰硬樹製大剣を構え、それと共にパートナーのハンティングビーであるバルキィにも戦闘態勢を取らせる。

 そして全員が構えた所で森の中からピティスパイダーたちが現れた。その数5匹。

 確かピティスパイダーは麻痺毒を含んだ粘着性の糸を口と尻から放つのが特徴な体長1m程度の蜘蛛だったな。毒については俺たちスパルプキンには効果が無いけど。


「「「キシャー!」」」

「来んぞ!最低でも3人以上で相手取れよ!」

「「「了解!!」」」

 ピティスパイダーたちが飛びかかってくるのと同時に俺たちは糸による攻撃を防ぎつつ散開して、予め決めていたPTでそれぞれ相手取る。

 そしてその中で俺、クレイヴ、バルキィ、アンクスの四人で襲ってきたピティスパイダーの中でも一番大きい個体を相手として選ぶ。


「キチャチャ!」

「効くカ!」

「ブン!」

「おらぁ!」

 俺を顔の真正面に捉えたピティスパイダーが俺に向かって糸を吐くが、俺が魔力を通した大剣で切り飛ばすと同時にバルキィが上から針で浅く切りつけ、クレイヴが盾で横っ腹を殴りつける。


「行ったゾ!アンクス!」

「スゥー…………フンヌラバ!」

「ギチャ!?」

 クレイヴがピティスパイダーを吹き飛ばした先で構えるのは俺たちスパルプキン愛用の灰硬樹製武器では無く鋼鉄製の重量感ある斧を構えるアンクスの姿。

 アンクスが呼吸を整えた上で勢いよく斧を振り抜く。

 するとピティスパイダーは堅い外骨格を粉々に粉砕されつつ打ち上げられる。


「ぶった切れろ!」

「消し飛べ!」

 そして打ち上げられたところで俺とクレイヴが同時に切りかかってピティスパイダーを始末する。


「フウ。終ワリデスネ」

「何言ってる。他の連中の手助けをすんぞ」

「そうダ。俺たちはそう言うPTだしナ」

「ブンブブ」

「ウエェ……」

「「「ギシャー!!」」」

 で、アンクスとしてはもう休みたそうだが、俺たちはこの調査隊の主力であると共に有事の際にはいち早く敵の数を減らして他のPTを支援するのも役目であるため、俺もクレイヴもバルキィも直ぐに次の敵へと攻撃を仕掛け始める。

 さて、この辺りの魔力濃度が高いせいで魔獣も強くなっているし、長い夜になりそうだ。



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「軽傷者は出ても重傷者は無しか。まあ、十分か」

「ン。護衛任務だしナ」

 その後、無事に一人の犠牲者も出さずに夕食の献立を一品増やすことに成功した俺たちは調査用の簡易拠点を作り上げると翌日に備えての準備を始め、その中で俺はバルキィを頭の上にとまらせつつクレイヴと明日以降についての話し合いをする。


「とりあえず、明日は外周部の調査をして周辺の地形確認が最優先事項だよな」

「次に建物全体の調査」

「で、それが終わって一通りの安全を確保したら内部調査か。幸い食料はいくらでも森で集められるが、冬になる前にサンサーラエッグ村に戻る事を考えたら今回は内部調査にまで行きつけるのか不安になって来るな」

「それでも安全第一」

「だなあ。それが一番だ」

「ブン」

 で、それぞれにどのくらいの日数がかかるかと共に調査の手順を確認した所で俺もクレイヴも一番大事にするべきものを改めて言葉に出して確認する。

 実際の所今回の調査は何が出てくるのかさえ予測がつかないため、最悪の場合としてかつて族長が倒したエントドラゴンレベルの魔獣が出ても逃げ切れるようなメンバーを揃えてはいるが、正直に言うとそれでも不安は残る。

 と言うわけでこの調査隊の基本方針はやはり『無理をしない・欲張らない・単独行動をしない』として行動をすることにする。


「まあ、どちらにしても学者様が此処の魔力濃度に慣れるまでは何も出来ないけどな」

「それは思っても言わない約束」

 ただ、クレイヴの言うとおり実際には連れてきた学者たちの魔力酔いが治るまでは拠点周辺の調査しか出来ないわけだけど。

 それにしても俺は森の外については殆ど知らないけれど、学者さんたちがあんな簡単に魔力酔いなるなんてどれだけ森の外は魔力が薄いのやら……まあ、この辺りの魔力濃度が多少濃いのは認めるけど。

安全第一、効率第二です


05/02誤字訂正

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