第78話「南瓜とセンコ国-8」
「さて、ここがそうか」
王様と別れた俺はお城の地下、それも予めある事を聞いていなければまず間違いなく気づかないような奥まった場所にある重厚な雰囲気が漂う扉の前に立っていた。
扉にはスパルプキンの様に魔力を視認できなくても感覚的に分かるほどに大量の魔力を使っての封印が掛けられており、正しい方法を用いなければまず開く事はないだろう。
「まあ、その正しい方法を俺は使えないんだけどな」
ただ、王様曰く正しい方法が現王から血の繋がりが有る形で二親等以内の人間が自分の意思で魔力と血を扉に認識させると言うものらしいので、俺にはどうしようもないものである。
だって二親等以内と言う条件どころか、そもそも俺の身体に流れているのは血液じゃないもの。
「ま、しばらく待ちますかね」
と言うわけで無理矢理開こうとする際に発動する扉の防衛機構対策に自己強化をしつつ扉の警護をしていた兵士を一人だけ簀巻きにした状態で残し、残りは吸血で始末して魔力補給をした後に合図が来るまで待機する。
なんでも扉の防衛機構には敵対者を排除するような攻撃的なものだけじゃなくて、城の中に居る兵士を叩き起こした後に呼び寄せるようなものも有るらしいからな。
と言うわけで、その機能が有るせいで王様たちが脱出する前に破ろうとすると、あちらの脱出行動に問題が生じる可能性があるという事で合図が来るまでは待機である。
ブーーーーー!
「ぐっ!?こ……ガッ……」
「うん。合図が来たか」
なお、合図と言うのは王様たちが脱出した後にセンコノトを覆う防御魔法の一部を破壊することで俺の放った【共鳴合奏魔法・秋の快眠セット】を解除して兵士たちを起こすと言うものである。
まあ、実際には俺にも普通にアラーム音が聞こえたから確認用に兵士を生かしておく必要は無かったみたいだけど。
「さーて、それじゃあ気合を入れて行くとしますか」
残しておいた兵士を始末すると俺は片腕を回して調子を確かめつつ、全身に巡らせている魔力の量を増やしていく。
「ふん!」
俺は扉の隙間に手を無理やり差し込む。
すると扉に組み込まれた防御魔法なのか扉が発熱すると共に周囲から俺に向かって魔力の弾丸が放たれる。
「効くかよおおぉぉ!」
だが、俺はそれをエントドラゴンと戦った時以上のレベルで全身に施した強化魔法によって無理やり無視すると扉を封印している魔法へと腕力による物理的な干渉と魔力による魔法的な干渉を行い、その魔法を力技によって強引に破っていく。
「ふんがあ!」
そしてしばらく力を込め続けていると扉を封印していた魔法と迎撃用の魔法が限界を迎え、それらの魔法が破壊されると同時に余った魔力が無作為に基礎的な魔法に変換されつつ重厚な扉が開かれる。
「ふう。もう少し簡単に破れるかと思っていたんだが、想像以上に堅かったな」
俺は身体の調子を確かめながら扉の奥を確かめる。
するとどうやら扉の奥は階段になっており、地下の大量に魔力が集まっている場所へと階段は続いているらしい。
それにしても扉の封印魔法は想像以上に強固だったな。
俺の予想としては街を守護する防御魔法程では無くとももう少し簡単に破れるかと思っていたが、まさかこれだけ身体強化をかけないと破れないとは思わなかった。
きっとあれだな。初代宮廷魔道士とかその辺が魔法をかけたんだろ。それなら納得できるし、するしかない。
「と、いかんいかん。先を急がないとな」
俺は地下で魔力塊が揺らいだのを見ると急いで階段を降り始める。
地下で何が起きているのかは分からないが、先程街を覆う防御魔法が破壊された時点でこの先に居る奴らも起きているのは確かだし、魔力塊に動きがあったという事はこの先に居る人間が何かをしている事は間違いないだろう。
となれば、その地下で何かをやっている奴が目的を達成する前に制圧しなければ拙い事になる……と言うか俺にされた切り札潰しの依頼が失敗になる可能性が大である。
と言うわけで割と全力で急ぐ。
「ヒュロロロォォ!【ガストブロー】!」
しばらくの間階段を高速で飛んで降っていた俺の視界に一枚の扉が入ってくる。
俺はそれを手の平に集めた魔力球を起動して放った【ガストブロー】で吹き飛ばすと、階段を下っていた勢いそのままに扉の先に突入する。
「ここは……」
扉の先に広がっていたのは巨大な石造りのドームで、俺が入ってきた場所の真向かいには先に続いていると思しき扉が設置されていた。
だが、俺は真向かいの扉に向かって進まず、その場で身体強化のレベルを再び上げ始める。
なぜならば……
「グガガガガ、よく来たなぁ……」
「折角手に入れた力を試すいい機会が巡って来たもんだ……」
「キュッキュッ、油断は禁物ですよお二方。方法は分かりませんけどここまで来ている以上実力は確かなのですから」
「「「ゲハハハハ」」」
「「「グフフフフ」」」
「「「ケーケェケェッケ」」」
その広間には無数の人ならざる者。異形の化け物たちが居たのだから。
力技バンザーイ