第77話「南瓜とセンコ国-7」
「えーと、アキト陛下でよろしいんですよね?」
「自分からそう言っておいて何を言っているのだ……」
俺は王様?の言葉に側室たちやエルフの男性たちの方を向いてその真偽を確かめる。
で、全員が同じように頷く。
どうやらこの人がアキト・センコ国王陛下らしい。
「いやまあ、ド田舎の出なんでぶっちゃけお名前ぐらいしかサク第一王子からは伺ってなかったんですよ。後、敬語とかも慣れていないんでその辺りについてもよろしくお願いします」
「ふむ。その外見……ああ、なるほど。君がクヌキ伯爵から話が上がっていたスパルプキンで、竜殺しの魔法使いか」
「ええとまあ、そう言う事です」
俺は王様の言葉に応じつつ視線だけでエルフの男性に後の説明よろしくと伝える。
エルフの男性は口を開けて呆けていたが俺の視線の意味に気づくとすぐに首を横に振って拒否する。だがしかし……
「とりあえず現在の状況説明はゴウキ第三王子の手の者である彼がしてくれるそうなのでー」
「なっ!お前!?」
「ふむ。訊いてもいいかな」
「えっ、あっ、はい!」
蔓を腕に巻き付けて無理やり表に出す。
大丈夫だ!君なら出来る!少なくとも今までの対応から察するに王様の機嫌を損ねるほどの不作法を君がするとは思えない!だからこれは出世のチャンスだと思いたまえ!!
「ふう。で、そっちのアンタは?第二王子の手の者で?」
と言うわけで王様への説明がなされている間に俺は王様をここまで連れてきたリザードマンの男性の方を向く。
ちなみにこのリザードマンの男性は未だに俺たちに対する警戒は解いていない。
「そうだ。ツルギ第二王子殿下に仕えている」
「ふむ」
うーん。恐らくだがこの人は俺やあっちの二人と違って本職の騎士様だな。なんか空気が俺らとは違う。俺たちへの対応的からもそれっぽい匂いがするしな。
「はぁ……結界を無視して城中の人間が眠らされるか……宮廷魔道士の者たちが卒倒しそうな話だな。使い方次第では戦が一瞬で終わる」
と、ここで話が終わったのか王様が頭を抱えながら何かを呟いている。
言っておきますが、【共鳴合奏魔法・秋の快眠セット】は結構魔力を使うんで補給無しだと俺も日に一度が限度ですからね?
「ああそうだ。陛下に質問ですけど、奴らの切り札について心当たりとかあります?」
「きさっ……!」
「お前っ……!?」
「落ち着け。切り札か……サクから聞いたのか?」
「ええ、こんな事をするからには何か戦況を一発でひっくり返せるような何かがあるのではないかと。で、俺の依頼には可能ならその切り札を潰す事も含まれていますから」
王様はリザードマンの男性を手で制しつつ俺の質問に対して何かを考えるような素振りを見せる。
何と言うかこりゃあ心当たりはあるけれども話して良いかどうかを迷っている感じだな。
本音を言えば、今俺がしている質問は俺に見えている物に関する裏付けに近いから迷っている暇があるならとっとと答えて欲しんだけどな。
後、やっぱりあのリザードマンは騎士だな。反応がまんま騎士のそれだし。
「城の地下に王と王に極近しい者のみがその存在を教えられている魔力貯蔵庫がある。レイたちが何かをするならその魔力を利用して何かをするかもしれん」
「「「……!?」」」
「……」
王様の言葉に俺以外の全員が絶句する。と言うか側室レベルでも知らないのか。よく第四王子は知っていたな。まあ、誰かが漏らしたか、偶然知ったかのどちらかだろうけど。
「知っていた。と言う顔だな。サクに教えた覚えは無かったのだが、まあレイが知っていたのだから不思議ではないか」
「まあ、地下に何かあるとは思っていたのは確かですね。これでも魔法使いなんで気配には敏感なんですよ」
ちなみに俺は第一王子から地下の事は聞いていない。単純にいつもの魔力視認で見えていただけです。
まあ、明らかに量が半端なく多いから探知能力に優れた魔法使いなら何かしらのものは感じ取っていそうだし、現に俺も何となく気配は感じてるからこれぐらいは言っても大丈夫だろう。
「なるほど。規格外と言う話も本当だったか……」
と、思っていたら普通に王様に溜息を吐かれました。
……。分からない方が普通ですか、そうですか、密閉処理が甘いからバレんだよ!もっとしっかりしやがれ宮廷魔道士!
「まあ、そう言う事なら王様たちは彼らの先導の元に脱出を、後半日ほどは城中の人間は寝てるはずですから、城外警備の兵に気を付ければ大丈夫でしょう」
「君はどうするつもりかね?」
「その魔力貯蔵庫とやらに行ってみます。そこまでが依頼なので」
「分かった。では君に入口を教えた後に我々は脱出するとしよう」
そうして俺にその魔力貯蔵庫とやらに行く方法を教えた後、多少もたつきつつも救出役と共に隠し通路に王様たちは入って行き、最後の一人が入ったところで隠し通路の入り口は閉じられる。
エルフの男性の話では第三王子の手勢が隠し通路の先に居るそうだし、リザードマンの男性が迷わず此処に来たという事は恐らく第二王子の手勢も同じ場所に来ているだろうからあちらについてはこれ以上の心配は不要だろう。
「さて、それじゃあ俺も急ぎますかね」
俺はそう呟くと、王様から教えてもらった魔力貯蔵庫とやらに向かう。
この時、地下の魔力塊はその形と色を少しずつではあるが変えつつあった。
上から順に
王様:アキト・センコ
第一王子:サク・センコ
第二王子:ツルギ・センコ
第三王子:ゴウキ・センコ
第四王子:レイ・センコ
以下第五王子たちや姫君たち
となっており、本来ならリオは王様と第一王子の間に入ります。何気に長子なんですよねー