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第58話「南瓜の村-5」

「随分と賑やかになった物ね……」

「だろう」

「ブブブブブ(これからよろしくお願いします)」

「ええ、こちらこそよろしく」

 数日後、リーダーの巣が完成した所で俺はミズキを呼び、顔合わせをすることにした。

 そして顔合わせの結果としては……まあ、滞りも問題も無く受け入れてもらった感じかな。

 ミズキも種族全体に対しては立場上手を貸せなくてもリーダー個人なら手を貸してくれそうな感じだし、リーダーも時折ならミズキに蜜をあげてもいいかなと思っている感じだ。

 ま、仲が良いに越したことは無いよね。結局はそう言う話。

 なお、リーダーの言葉を普通にミズキが理解して会話をしているが、精霊であるミズキはハンティングビーの言葉が普通に分かるらしい。流石は自然の権化。

 まあ、リーダーも女王蜂化して普通のハンティングビーよりも知性が高くなったのか自然に俺たちの言葉が分かるようになったっぽいけどな。


 ちなみに、現在リーダーの巣では続々と次世代の働き蜂が産まれており、彼らとリーダーが連れてきた働き蜂は俺たちスパルプキンと協力をしつつ順調に巣を拡大したり、蜜を作っていたりする。

 早々に安定した協力関係が出来たようで一安心だな。


「それにしても、これだけの規模になると拠点と言うよりはちょっとした村よね」

「ブンブブブ(私も空から見た時は村だと思いましたよ)」

「あー、やっぱりそう見えるのか」

 ミズキとリーダーの言葉を受けて俺は周囲を見る。

 すると見えてくるのは俺の住む建物にスパルプキンたちが住んでいる建物が数棟。加えてハンティングビーの蜜蝋で作った大きな巣に小規模ではあるが畑にため池。そして、そこで暮らすスパルプキンたちにハンティングビーたち。

 うん。どう見ても村だなこれは。


「そうなると村の名前とかも考えないとなぁ……」

「まあそうよね……」

「ブブブブブ、ブブンブブ(確かに分かり易くするための名称は必要ですよね)」

 どうでもいいが、現在この会話はため池の畔で井戸端会議みたいな感じでやっている。

 具体的には俺が地面に根を下ろし、リーダーが俺の用意した止まり木に止まり、ミズキがため池の上に肘をついて寝転がっている感じ。

 威厳も何もなさそうに見えるが、これが一番楽なんだからしょうがない。

 なお、リーダーにはミズキは見えていないが声は普通に聞こえているし、精霊が居る場所からは独特の匂いがしているとかで普通に知覚出来るそうだ。その辺りの感覚は種族差の一種なので分からないが、随分と興味深い現象ではある。

 ま、ハンティングビーの知覚方法についてはさておいてだ。


「よし。ちょちょいと案を出しちまうか」

「そうね。早めに決めておいても損は無いだろうし」

「ブブブブー(それでいいと思います)」

 早い所、村の名前を決めることにする。


「カボチャ村」

「却下。流石にダサすぎる」

「ブ、ブブブン(では、パンプハニー村とか)」

「可愛過ぎね?」

「じゃあ、アキューム村とか」

「ブンブ……(湖のおまけみたいです……)」

「「「むう……」」」

 が、とりあえずの第一案は全員、他の二人に否定されて却下である。


「うーん。そうなるとだ……村の成り立ちとかから考えるか?」

「それを言ったらパンプキンが作ったで終わりじゃない」

「ブンブブ、ブブブブブ?(そもそも、リーンの森ってどうしてそう言う名前なんですか?)」

「ああ、そこから説明しておくべきよね」

 と言うわけでミズキがリーダーにリーンの森に関する説明をしているのを見守りつつ、俺は村の名前を考えておく。

 カボチャ村はとりあえず否定されたから……パンプキン村、カボハチ村、フェアリー村、イエロフラワ村、うーん、どれも違う気が……


『サンサーラエッグ』


「ん?」

「どうしたの?」

「ブブブ?(どうしました?)」

「いや、今どこからか『サンサーラエッグ』と言う名前が……」

 と、ここで突然啓示の様に頭の中に声が響いてきた。


「『サンサーラエッグ』って……意味は?」

「うーん。エッグは転生前の記憶から卵っていう意味になるけど……サンサーラは分からないな」

「ブブ、ブンブブブ(でも、語感は良いですね)」

 俺の言葉にミズキは首を捻り、リーダーはそれでも語感の良さから褒めてくれる。

 ただ、二人とも反対意見を持っている感じではないな。

 ……。と言うかだ。今気づいたんだが、これってまさしく(リーン様)の啓示なんじゃ……ここってリーン様が隠れている森なんだし。

 で、その事を言ったら……


「そう言えばそうだったわね……パンプキンなら何度か聞いたことがあるらしいから聞こえてもおかしくないだろうし」

「ブブブブブ(一番格の高い方から言われた従うしかないですね)」

「リーン様。こっちにまで声を伝えてきて大丈夫なのかなぁ……」

 二人とも同意を示してくれたが、俺も含めて全員微妙な表情はせざるを得なかった。

 と言うか、夢の中と言う比較的距離が近そうな場所で声をかけるならともかく、平時のこういうタイミングで声をかけるのって大丈夫なのか?

 色々と不安になる。


「まあ、とりあえず村の名前は『サンサーラエッグ』でいいか?」

「ええ、構わないわ」

「ブブブブブ(賛成します)」

 でも、とりあえずの議題として村の名前は『サンサーラエッグ』で決定である。サンサーラの意味についてはいずれ調べるけどな。


 さて、これからサンサーラエッグ村はどうなっていくんだろうな。

サンサーラエッグと言う名前にはちゃんと意味があります

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