第52話「南瓜と後始末-2」
「やっぱり酷い事になってるなぁ……」
マウンピール村の建物の修理手伝いをした翌日。
俺はエントドラゴンを【共鳴魔法・核南瓜】で吹き飛ばした現場に来ていた。
で、その現場を上から眺めていたのだが、予想通りと言うべきか何と言うべきか爆発点を中心に周囲の木々は根こそぎなぎ倒され、その魔力濃度の濃さから動物どころかぺんぺん草もまともに生えてはおらず、中心部には深さも相当ある巨大なクレーターが出来上がっていた。
まるで隕石か何かでも落ちたかのようである。
「とりあえず下に降りて探索するか」
俺は高度を下げてクレーターの底に着地すると周囲を見渡したり、空気中の魔力濃度がどうなっているかを確かめていく。
「ふむ……」
空気中の魔力は意識するとまるで霧のように見えてくるが、そうして漂っている魔力はエントドラゴンの物も混じってはいるが大半は俺自身の魔力なので魔力酔いの心配はしなくても良さそうである。
が、上から見てもそう感じていたがクレーター内には俺以外の生命は殆ど存在していないし、塵も残さず消し飛んでしまったのかエントドラゴンの身体を構成していた物はまるで見つからない。
うーん。エントドラゴンの角とか爪とか、と言うかドラゴンって全身余すところなく各種素材として使えそうだったから残らず消し飛んでしまったのは非常に勿体無いな。
次はこういう事にならないよう【共鳴魔法・胡瓜刀】の様な任意の範囲を攻撃対象にする攻撃で仕留めたいところだ。
モゾッ……
「ん?」
と、ここで俺は背中側で何かが動いた気配がしたためにそちらの方を振り向く。
が、そこには何もない。
ああいや、植物の芽ぐらいなら有るか。
モゾモゾッ……
「…………」
目の錯覚……だろうか?
今、植物の芽が動いた気がする。と言うか一気に成長した気がする。
あれ?そもそもさっきは一つしか芽が出ていなかった気がするんだが、今は芽が二つ出ている?
いやいや、そんな馬鹿な。雨後の筍だってもう少しゆっくり出て来て……
モゾゾゾゾッ!
「!?」
俺はクレーター内の地面からいくつもの芽が出たのを見た瞬間思わず飛び上がっていた。
「これは……」
そしてクレーターの上空で様子を見守る俺の前で俺が何が起きているのかを理解する暇も無く事態は進んでいく。
まず最初にクレーターのあちこちから芽が出て来た。
次にその芽は一気に成長していくつもの葉を付け、蔓を伸ばした。
それからいくつかの蔓の先端に黄色い花を付け、クレーター全体を黄色い花畑に変えた。
「魔力濃度が……下がってる?」
そして無数の黄色い花が咲き誇るころにはクレーター中の魔力濃度は目に見えて薄くなっており、その代わりにクレーター中に生えていた植物たちは大量の魔力を蓄えた果実をつけ始めていた。
「ああなるほど……そう言う事なのか」
やがて出来上がったのはとても見覚えのある果実。と言うか俺の頭と同じ形をしたカボチャだった。なお、恐らくだが一本の蔓につき一つしかカボチャは実っていない。
この時点で俺はなぜこうなったのかを理解した。
推測でしかないが恐らくはこういう事だろう。
まず、【共鳴魔法・核南瓜】でエントドラゴンを爆破した際に爆弾化した俺の体の一部から種が周囲にばら撒かれた。
そして、ばら撒かれた種は土中の栄養に今まで降り注いでいた大量の雨の影響を受けて発芽、発芽した直後に今度は空気中の魔力を吸収することで急成長したのだろう。
加えて言うなら今この場で芽生えてきたカボチャたちは言ってしまえば俺の子供たちでもあり、その魔力の色は恐らくだが俺に近しいものになる。だから、霧のように濃い魔力を吸い尽くしても一切問題を起こさ無いと考えられる。
と言うかだ。
「俺の種子って事はもしかしなくても……」
「「「パンプキーン!!」」」
「ああやっぱり……」
で、俺の呟きが契機になったかどうかは分からないが、果実の部分に突然三つの穴が開き、震えたかと思ったら、一瞬にして蔓をまとめきった後に元気よく飛び上がりつつ声を上げた。
その姿は小さな俺と言ってしまっても違いないものであった。
「「「ーーーーーー!!」」」
生まれたカボチャたちはお互いにお互いの顔を見ると一度笑いあった後に何故か踊りだしたり、周囲を見渡したり、何かしゃべり合っていたりする。
ああうん。とりあえずこいつらをこのままにしておくのは拙いな。
「ちゅうもーーーく!」
と言うわけで大きな声を上げてクレーター内に居る全員の視線をこちらに向けて、勝手に何処かに行ったりしないようにする。
で、改めて彼らの姿を見て気づいたのだが、南瓜頭や魔力の色は俺と一緒だが、よくよく見れば微妙に俺とは差異がある部分もある。
具体的には身体が俺の様に蔓を自分の意思で纏め上げているのではなく、勝手に人型を取っている感じで関節技もしっかりと効きそうな感じだ。
それから俺の様に空を飛べる感じもしない。ジャンプはしてもすぐに着地してしまうあたり恐らくは空を飛べないのだろう。
ちなみに身長はおよそ1m程で三頭身である。ここら辺もまた俺とは違う部分だな。俺は人型を模している時は身長170cm以上で七頭身以上を目安に模しているわけだし。
「全員こっちに集まれー」
「「「ーーーーー!!」」」
と言うわけで俺とは微妙に似て非なる彼らをクレーターの中心部に集めると、俺は彼らがどういう存在なのかを確かめ始めるのであった。
変なの生まれました