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第51話「南瓜と後始末-1」

「こんの南瓜息子がぁ!」

「痛い!痛い!?このクソ親父痛いっての!!」

「やかましいわ!」

 拝啓リーン様。

 マウンピール村へ被害確認に来たらすぐさまタンゴサックにヘッドロックを掛けられました。割と本気で痛いです。

 くそう。アームロックなら効かないってのに……


「はぁ、このぐらいでいいっぺな。で、何があっただ?」

「おっ、終わっただべか」

「見事に極まってただな」

「一先ず村の男衆は全員集まっただべ」

「痛たたた……あー、わざわざすみません」

 で、タンゴサックのヘッドロックから解放されたところでマウンピール村の皆さんが夜中だと言うのに集まってきてくれ、篝火がいくつも焚かれる。

 なお、雨についてはいつの間にやら止んでいた。まあ、話をする分には楽でいいのだが。


「んな事いいだから、早く説明するさ。村からでも空に向かって走る雷や、カボチャみたいな形の雲が上がるのは見えでたからな」

「んじゃ、説明させてもらいます」

 と言うわけで俺はエントドラゴンとの戦いについて説明をしていく。

 具体的には三馬鹿がエントドラゴンを起こした事とか、トドメを刺すために爆発系の魔法を使い、そのせいで地面が揺れが起きた事とか。

 まあ、ミズキの事とか、元々ミズキと一緒に狩ろうとしていたことは黙っておくけどな。

 何でかミズキは人に自分の事を知られたく無さそうだったし。


「とまあ、こんな感じです」

「「「…………」」」

 で、一通り話し終わったところで一度マウンピール村の人たちは黙り……


「つまり原因はその三馬鹿だってことだな」

「その三馬鹿って昼間村に来てだ奴らだよな」

「だどもあいつ等森へ入る許可証を持ってたべ?」

「もしかして偽物だったんじゃなか?」

「有り得るな。高ランク冒険者にしでは態度が悪かた」

「今度、別の冒険者が来た時に確認しとくべ」

「んだな。もし偽物だどしたら絶対に許せねえべ」

 その直後にこんな量の文句の言葉が出て来た。

 うん。自業自得ではあるがあいつ等の名前って思い出してみればハンティングビーの件の元凶と同じ名前だし、仮に同一人物だとしたら擁護する必要性も意味も無いな。むしろ行方不明にしてしまった方が良いだろう。

 くっくっく。森の中は無法地帯なんだぜぇ……


「なんにせよ。お前さのおかげで村は助かったわげか」

「必ずしもそうとは限らない気もするけどな」

「そなに謙遜する必要はねえべさぁ」

「んだんだ」

 村の人たちはそう言ってエントドラゴンを倒して結果的に村を救ってくれた俺を褒めてくれるが……正直言ってなぁ……


「それでも村に被害も出しちまったしなぁ……」

 俺は篝火に照らし出されている村の人たちと建物を見る。

 するとどの建物も大なり小なり被害が出ており、集まっている村人の中には多少だが怪我人も混じっている。

 エントドラゴンの攻撃がマウンピール村にまで届いているはずはないので、彼らのしている怪我の原因は俺の【共鳴魔法・核南瓜】が起こした揺れだろう。

 それに、爆発の際に撒き散らした魔力の影響も出ているはずなので、その辺についても気になる。


「心配しなくても人に出てん被害はタンスに頭をぶづげたどか、慌てて家の外に飛び出して転んだとかそん程度なもんだし、その程度の怪我なら農作業で日常茶飯事だあ」

「そげに建物が多少傷ついただけならすぐに直せるっぺ」

「だからパンプキンが気に病む必要なんてねえべさ」

 と、俺の視線の意味を察したか村人たちが口々にそう言って俺を励ましてくれる。

 あーうん。やっぱりこの村の人たちは皆いい人ばかりだなぁ……これは敵わない。そして、これでもまだウジウジしてたらむしろ皆様に失礼だ。

 それならだ。


「分かりました。なら、せめて治療ぐらいはさせてもらいます」

「んなごとしなくでも……」

「それがけじめって事だな。南瓜息子」

「そう言う事です」

 タンゴサックの言うとおりにせめてのけじめとして傷の治療ぐらいはさせてもらおう。


「んだら、よろしく頼むだ」

「はい」

 そして俺はマウンピール村の皆の治療を【共鳴魔法・薬草】で行っていくことにした。



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 で、一通りの治療が終わり、ちょっと仮眠を取ったところで夜が明ける。


「と、そう言えばウリコは?」

「元気に寝てるだよ」

 俺はウリコの様子についてタンゴサックに窺っておき、その目で直に見る為に一緒にタンゴサックの家へと向かう。

 怪我とかはしてないはずだけど、やっぱり撒き散らされた魔力の影響とかが気になるんだよね。いやまあ、治療のために各家を回った感じだとどの家でも魔力酔いの患者はいなさそうだったけどさ。それでも、心配なものは心配なんだよ。


「帰っただ」

「お帰りなさい。あらいらっしゃいパンプキン君」

「お邪魔しますキミコさん」

 家に入ったところでキミコさんに挨拶をした俺は家の奥へと案内してもらってウリコに会う。


「だー!」

「ああなるほど……」

 そして鋼線蔓の籠の中で愛らしく手足をバタつかせているウリコの姿を見た瞬間にどうしてマウンピール村に魔力酔い患者が居なかったのかを俺は理解した。

 うん。ウリコの魔力量が明らかに増えている(・・・・・)

 多分だけど、ウリコってばこの辺り一帯の空気に含まれた魔力を全部吸収して自分の物にしてるわ。我が妹ながらとんでもないことしてるなぁ……しかもごく自然に身体強化紛いの事をして無闇に外敵を呼び寄せないように魔力を操ってるし。

 何と言うか将来がとても楽しみであると同時に怖いです。


「どうしただ?」

「いや、天才って居るんだなーと思ってさ……」

「「?」」

「ダー!」

 思わずそう呟いた俺の言葉はタンゴサックとキミコさんには理解してもらえなかった。

チートの度合いで言えばウリコ>パンプキンかもしれない

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