第45話「竜と南瓜-1」
「ふうん。結局そう言う事になったんだ」
「まあな」
タンゴサックと和解した数日後、俺は拠点近くでミズキと会話しつつ水路掘りの際に出た土も混ぜて畑を耕していた。
森の土と言うのは場所にもよるが基本的に栄養が豊富であり、こうして土に混ぜ込むことによって栄養を補給することが出来るわけだ。
「まあ、近場の村の人間たちと仲が良いに越したことは無いわよね」
「だな。それ以上に充実感とかがあるけど」
俺はマウンピール村で貰ってきた種を適当に畑へ蒔く。
ちなみに貰ってきた種と言うのはトマトやナス、キュウリなど実に多種多様である……カボチャの種は何故かなかったが。
まあ、それはさておいて少々疑問に思うだろう。
こんな適当に蒔いて大丈夫なのか?と。
「で、魔力を問題がない程度に撒くと」
「流石は同じ植物だけあってどれだけ蒔けばいいかをよく分かってるわね」
俺の手から緑色の魔力が細かい粒子の様になって畑に降り注ぎ、蒔かれた種の中へと無理が無い程度に吸収されていく。
これがある程度適当に種を蒔いても大丈夫な理由で、こうして魔力を注ぎ込むことによって生命力を基本に様々な部分が強化され、より良い作物が出来上がるそうだ。
いやー、流石は魔法である。
ちなみにこの情報の出元はマウンピール村に来た冒険者の一人である。実家が農家だそうで、その時に旅の魔法使いからそんな話を聞いたそうだ。
実際今やった感じから察するに効果は十分にありそうではあるしなー
「それにしてもよく種まきをしながら編み物なんてできるわね」
「まあ、この辺は慣れだな」
で、タンゴサックから息子として農作業の一つもやって見ろと言われて農作業をやっているのだが、その裏では余った蔓を使って森の中で回収してきた鋼線蔓と言う蔓植物を使った籠を作っている。
この鋼線蔓はまるでワイヤーの様に硬いが柔軟性も必要程度には有している蔓植物で、森の中では他の植物を支えにして成長する植物であり、堅い岩にも根を張れる強い植物であり、葉や蔓からは防虫成分を放出している。
で、共鳴魔法の触媒として使えばワイヤーの様に細くなった後に対象者へ接近してきた生物を感知して攻撃する【
籠を作っている理由としてはまあ兄としてタンゴサックの子供に贈り物の一つでもするべきだと思ってである。
このぐらいはしないと顔向けは出来なさそうだしな。
「随分と丈夫な揺りかごになりそうねー」
「まあなー」
で、そうやって農作業と編み物をしつつ、時々現れる野生動物たちを吸血で仕留めたり、魔法の基礎修行もこなしたりしている。
この魔法の基礎修行と言うのは量を増やすのももちろんそうだが、属性変化に関する修行も含んでいる。
現在の俺は量に関しては比較対象が無いのでよく分かっていないが、属性変化についてはリョーコさんの件で純粋な闇属性の魔力に触れたおかげなのかだいぶスムーズに変化できるようになってきている。
具体的に言えば極々僅かではあるが赤系の色も出せるようになったし、黄色や青、それに黒もだいぶ原色に近い色をそれ相応の量出せる様になってきた。
で、そうして成長してきたからこそ分かったのだが、純粋な白……つまりは光属性の魔力や無属性の魔力を生み出すのは火属性と同等かそれ以上に難しいと言う事だ。
いやね。言い訳になるかもしれないけど色を薄める、色を抜く。って言うのは予想以上に難しいんだよ。例えて言うなら色々な材料を混ぜ合わせて作ったスープから原料を取り出して元の水に戻したり、ピンク色の絵の具を白と赤に分けて取り出すとかそんな感じ。
ちなみにこの例えで言うなら黒……闇属性はは闇鍋のごとく何でもかんでも一緒に煮込んだり、三原色全てをごちゃ混ぜにするような物なので比較的作り易い。
「あ、出来たわね」
「ま、複雑な編み込みとかはしてないしなー」
俺は出来上がった鋼線蔓の籠を拠点の中に蔓を伸ばしておいておく。
「と、そうだ。パンプキン。一ついいかしら?」
「何だ?」
と、ここでミズキが俺に何か相談事があるのか今までの雑談からは少し雰囲気を変えて声をかけてくる。
「いやね。前に言っていた頼みごとをそろそろお願いしようかなと思って」
「ああ、その話か。で、頼みごとってのは?」
俺はミズキの真剣な顔を見て、真面目に聞くべきだと思って気持ちを正す。
「まあ、今すぐってわけじゃないんだけどどういう頼みごとなのかぐらいは伝えておこうと思ってね。パンプキンも知っているかもしれないけど、あっちの方に巨大な樹があったでしょ」
そう言ってミズキは森の中を指差す。
えーと、確かあっちには巨大な樹のパワースポットがあったはずだな。後、確か不自然に周囲に木が無かったはず。
「その木には下位だけど竜が住んでいてね。今は大人しいけど梅雨明け頃に毎年暴れまわって食うわけでもないのに森の動物を襲って虐殺して生態系を乱すのよ。それにマウンピール村を初めとして森の周囲にまで少なくない被害も出るわ」
「あーつまりは……」
俺はその言葉にミズキが何をしてもらいたいかを理解し、
「ええ、準備が整い次第その竜を私と一緒に倒してほしいのよ」
ミズキは俺の考えを肯定するような言葉を発した。
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