第41話「帰って来た南瓜-4」
「【ガストブロー】っと」
俺は土煙の近くにまで移動すると適当に魔力球を生み出して【ガストブロー】を起動し、土煙を吹き飛ばす。
「うわぁ……」
そして土煙が晴れた後に見えた光景に俺は絶句する。
なぜなら土煙が晴れた後に広がっていたのはアンレギラットの生体【オーバーバースト】を起こす前とは全く違った光景であり、爆発した場所を中心に木々はなぎ倒され、土はめくれ上がっていた。
と言うかぶっちゃけそれなりのサイズのクレーターが出来上がっていた。
「それにしてもアンレギラットレベルでこれかぁ……」
俺は出来上がったクレーターのサイズに対して思わずそう呟く。
アンレギラットの魔力量はそれほど多いものでは無い。にも関わらずまるでダイナマイトでも爆発したかのようなこの威力。
爆発した場所が密閉空間であったことを考慮に入れても凄まじい威力と言う他無いだろう。
と言うかアレだな。アンレギラットレベルでこの威力って事は……この前の呪返しって結構ヤバい事になっている気がする。
「…………」
ああうん。気にしないでおこう。所詮は自業自得だ。悪いのは呪いをかけた向こうだ。
「こんのバカボチャアアアァァァ!!」
「!?」
と、ここでミズキの怒声がアキュームの方からしてきて俺は思わず身を竦める。
そして声がした方に目をやればそこにいたのは巨大な水の槍を投擲する態勢に入ったミズキの姿があり……
「歯ぁ!食いしばれええぇぇ!!」
「のぐあああぁぁぁ!!」
次の瞬間俺は猛烈な勢いの水流に押し流される形で地面に叩きつけられた。
と言うかミズキさん……来るの妙に早かったすね……。
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「で、結局なにやったのよアンタは」
「いやー、ただ単純に水路を掘るだけだと勿体無いし、どうせなら研究も進めつつやろうかと思ってアンレギラット相手に生体【オーバーバースト】をやってみたんだけど……」
「だ、け、ど?」
うわぁ……ミズキの目がすごく怖い。これは明らかに怒ってますね。分かります。
と言うわけでもう一度あの水の槍を喰らうのは勘弁なのでこの先の言葉については慎重に考える必要があるな。
そう慎重にクールに気の利いた一言で今の台風が来た時のアキューム湖並みに荒れ狂っているミズキの怒りを普段の湖畔の如く静かな状態にするんだ。
そして俺が選び出した一言は……
「やっちゃったんだぜ」
と、ウインクに右手の親指を立てつつ言ってみた。
ふっ、このお茶目っぷり。これならミズキの怒りも……
「ああん?」
まったく晴れてませんでした。
「パンプキン」
「何でしょうか?」
「歯。全力で食いしばりなさい」
「はい」
そして俺はミズキによってフルボッコにされた後に猛省させられましたとさ。
ああうん。この世界に来てから今までで一番怖かった瞬間かもしれない。一瞬走馬灯のようなものも見えたしなー
ちなみに怒られた理由は森の平穏を大きく乱したから。
何でも、【オーバーバースト】時に発生した揺れやら爆風やらで森の生き物たちが片っ端から恐慌状態に陥ったらしい。
「ニコニコ」
ああはい。ごめんなさい。今回は本当に反省しています。お願いですのでこれ以上は本当に勘弁してください。お願いします。
で、この日はこれで作業は終わりとなり、翌日。
「うーん。こうして見るとやっぱりルーチンワークだな」
俺はいつも通りに蔦を強化すると、一定の動きを蔓に命じて地面を掘っていた。
うん。一定の動きで済んじゃうほど作業そのものは単純なんだよ。
蔓を地面に打ち込んで、地面の中で籠状にしたら持ち上げて予め決めた場所に運ぶだけだし。
「まあ、色々と素材も回収できるしいいか」
ただ、昨日の爆発の関係で何本か木も倒れているし、そもそも春という事で植物の新芽なども出ている。
と言うわけで俺は地面を掘りながら余った蔓を使って木は枝と根を切り落として丸太にし、植物の新芽や春になって妙に魔力を蓄えこんでいる植物なんかを共鳴魔法の素材にするために回収しておく。
勿論切り落とした枝や根も使い道があるので別枠で保管しておく。
ん?共鳴魔法の素材はともかく丸太や枝はどうするのかって?
色々と使い道はあるのだよ。枝や根は乾燥させれば薪になるし、物によっては魔力が大量に籠っているから共鳴魔法の触媒としても使える。
そして丸太については拠点の方に使ってもいいが、それ以上にこの先水路の整備をするにあたって水路の両端に土止めを作る必要があるので、石と組み合わせて水路の整備に用いる予定である。
「それにしても春になって虫とかミミズとかが多いなぁ……」
で、土止めの件とは別に俺は地面を掘っていると出てくる生き物の多さに驚く。
いやうん。甲虫の幼虫とか、芋虫とか、ミミズとか、とにかく色んな動物が出てくるんだよ。
ちなみに甲虫や芋虫は成虫になれば俺にとって有益ですが、幼虫の間は害虫なので見つけ次第遠くに投げ捨てます。
ミミズ?いつもご苦労様です!貴方のおかげで地中の栄養が豊富ですので大切に他の場所へと移させていただきます!!
「と、目標の沢が見えてきたな」
そしてそんな事をしつつ掘り進めている内に水を流す先である沢が見えてきた。
これで後はアキューム湖までつなげるのと、水路がすぐに壊れたりしないように処置を施すだけだな。
「さーて、残り半分頑張りますか!」
そうして俺は地面を掘るスピードを速めるのであった。
ミミズは大切です
03/07誤字訂正