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第31話「街に来た南瓜-8」

「そう言えばさ」

「何じゃ?」

 リオの家から宿に帰る道の途中。

 人々の視線を一身に浴びつつも俺は今回の件で一つ気になる事が有ったのでコウゾー爺さんに聞く事にする。


「リョーコ=ホウキさん……だっけ。そもそもどうして彼女はあんな物騒な呪いを掛けられたんだ?」

「それを儂が知っていると思うかの?」

「知ってるだろ。冒険者協会って言う公正公平が大原則であるはずの組織の長にしては爺さんはリオに肩入れ過ぎな気がするしな」

「…………」

 俺は適当なお金を払って露店でコップに入ったジュースを買うと、マントの中で根を一本コップの中に入れてジュースを吸い始める。

 そして俺がそんな事をしている間にコウゾー爺さんは何と言うか渋い顔をしている。

 そんなに俺が気づいているのが不思議ですか。そうですか。でもここは少しどころじゃなくて気になるからきちんと教えてもらうぞ。


「分かったわい。ただ儂も全てを知っているわけではないと先に断っておくし、この先の内容に関してはリオも含めて他言無用じゃ」

「ん。了解」

 俺はコウゾー爺さんの問いに対して気軽に応じるが、同時にそこまで念を押すとなると相当面倒な話になる事を察する。


「では、とりあえず人目に付かない所に行くとするかの」

「ほいほーい」

 そして落ち着いて話をするために俺とコウゾー爺さんは宿屋の奥の方の部屋。妙に防音設備がしっかりとした部屋に入るのだった。



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「この際じゃから先に聞いておくがお主は転生者じゃな。余りにも常識外れすぎる」

「バレてたか。まあその通りだよ。前世の名前は覚えてないけどな」

 俺の答えに「ならばよい」とコウゾー爺さんは返す。

 さて、この話が今回の件にどう関わってくるのやら。


「何、簡単な話じゃよ。リョーコ=ホウキ。彼女はお前さんと同じ転生者じゃ」

「!?」

 コウゾー爺さんの言葉にさすがの俺も驚きを隠せず、目を丸くする。


「彼女の名にホウキと付いておるじゃろう。これは彼女が覚えている前世の名じゃ。前世の名を覚えている転生者はそうやって前世の名を一部か全てかはともかく今世の名の後に付けるのが習わしなんじゃ」

 あー、それは知らなかったな。と言うか俺は前世の名前を知らないから付けようが無いか。


「そんな彼女はここクヌキハッピィで貧しい家に生まれ、今は違うが元々は冒険者として活動をしておった。前世でもそう言う職に就いていたのか、それとも残っていた記憶が戦いに関するものなのかは分からんがとにかく当時の彼女は強くての。向かうところ敵なしじゃったわい」

 そう言うコウゾー爺さんの目は何かを懐かしむように遠くを見つめている。

 きっと若かりし頃のリョーコさんの事を思い出しているのだろう。


「で、ここからが本題じゃな」

「ん。よろしく頼む」

「うむ。当時の彼女はとある依頼で王都近くの森に来ていた。そしてそこで一人の男を助けたのじゃ。その男の名は……すまんが語れぬ。とにかく彼女は男を助け、その縁と転生者であると言う事から男の元でメイドとして働くことになった。今にしてみればこの頃が二人とも一番幸せそうな時期じゃったなぁ……」

 あー、なんていうか凄まじく面倒なお話になる気がしてきたな。

 俺が黒い魔力に触れた際に聞いた女の恨みつらみの声まで勘定に入れるともう面倒な話にしかならない気もする。


「ま、詳しい事は敢えて省こう。ここで語るべきなのは彼女と男は恋仲になったが諸般の事情から別れざるを得なくなり、男は今も王都で彼女を密かに思い、彼女は生まれ故郷に戻ってから女手一つで娘を育て上げたと言う事ぐらいじゃ。後はお前さんが自分で考えると良い」

 そう言い残すとこの先は何も語らないと言わんばかりの態度をコウゾー爺さんは表しつつ部屋の外に出ていく。

 まあ、後はコウゾー爺さんに言われたとおりに自分で考えるべき事だな。

 と言うわけで何故か部屋の使用代を払わされた俺も自分の部屋に戻ってコウゾー爺さんの話を再度頭の中で思い浮かべて何があったかを推測する。

 とりあえず微妙な嫌がらせをされた分はコウゾー爺さんに後で請求し返すとしよう。


「…………。あー…………そう言う……事だよなぁ……」

 で、頭の中でまとめた結論。

 今回の件は痴情の縺れが理由だろう。とりあえず原因はそう見て間違いない。

 問題はリオの父親と言いますか、リョーコさんの旦那さん……いや元旦那か恋人レベルだな。まあとにかくそこら辺はさておいて……とにかく王都で今も彼女を慕っていると言う男。

 話の流れから察するに最低でもいい所のお貴族さんかかなり大手の商人の若様(当時)だろう。

 下手をすると現在の王様という事になりかねないがそうなるとリオは現王の落胤とか言う割と洒落にならない立場になってしまうので、それは敢えて考えないでおく。

 そこ!現実逃避とか言うな!と、誰も居ないがとりあえずツッコミもしておく。

 仮にそうだとしても時は戻りません。やっちゃったものはしょうがありません。それに俺はカボチャですから権力なんて関係ありません。もう色々と知らんがな!呪った奴が全て皆何もかも悪いんや!!

 と言うわけで俺は若干不貞寝っぽいが寝ることとした。


 あー、そう言えばインクとか羊皮紙とか買うのもいいけど陰落ちについても調べないとなー。

ホウキさんはあのホウキさんです


02/25誤字訂正

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