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第142話「変わった南瓜-1」

「「「…………」」」

「……」

 じぃーとした感じで俺はミズキたちから視線を向けられる。

 とりあえずアレだ。俺が本物だと言う証明を早急にする必要が有るな。どうして疑われているのかは知らんが。

 と言うわけで俺はそれぞれの相手に対して俺とその人物の間にしか知らない秘密を曝r……話す事によって俺が本物だと言う証明をする。

 ミズキ辺りからはよくも曝露してくれたなーってかんじで睨まれているが、素直に信じなかったそっちが悪い。

 それに一対一の状況にしてからその手の話をした場合は他の人間の視界から外れた瞬間に何かをしたと判断されて俺が本物である証明と言う事にはならないからな。

 実際、ロウィッチやイズミならそれぐらいの事は出来ない事も無いだろう。


「で、結局どうして俺は疑われたんだ?」

 俺がミズキたちにそう問いかけるとこんな答えが返ってくる。


「外見は変わらないけど他が変わり過ぎなのよ」

「魔力が出立前とまるで別物でス」

「ブンブッブンブ(なんか魔力がグニャグニャしてる)」

「……」

 ミズキたちの答えに俺は思わず黙り込む。

 外見以外の部分が変わり過ぎかぁ……確かに魔力の量は大きく伸びているし、前世の名前(?)は思い出したし、【天地に根差す霊王】は任意型と言うよりは常時発動型の能力だから確かに魔力を感じ取れる存在からしてみれば外見以外の部分が大きく変わり過ぎではあるか。

 まあいい、誤解が解けたなら問題ない。


「それで、逆に聞くけどパンプキンの方は何が有ったのよ。サンホロって言う都市には行ったんでしょ?」

「あー、それな」

 で、ミズキの方から俺に何が有ったのかの質問が出たため、俺はそれに応じて賢鳥の戦いとその中で転生のようなものをした事、それに【天地に根差す霊王】と言う能力や前世の名前を思い出した事を話す。

 と言っても例の兵器関連の話や、サンホロの惨状については語らないでおくが、どちらもむやみやたらに話していい物ではないしな。


「なるほどね……確かにそれなら外見は一緒でもそれ以外の部分が前のパンプキンとは大きく違う訳ね」

「俺自身としてはそんなに変わったつもりはないんだがなぁ……」

「俺みたいに魔力関係の能力を持たない人間にとっても違いは分からないんだが」

「ですよね。私も分かりません」

 でまあ、説明も終わったところでクレイヴとタックスさんの二人から俺の変化が分からない事に関して同意を得つつサンサーラエッグ村の中にある俺の家に戻っていく。

 ちなみにクレイヴもタックスさんも最早サンサーラエッグ村の定住民であり、その二人を筆頭として村には意外とスパルプキン以外の種族も住むようになっている。

 それでも未だに危険地帯である以上はスパルプキンが住人の主体にならざるを得ないが。


「と、着いたか」

「じゃあなー」

「おう」

 しばらく歩いたところで家に到着したので他の面々とは別れ、俺はミズキと一緒に家の中に入る。


「それで?さっき話したので全部じゃないんでしょ?」

「あー、バレてるか」

「当たり前でしょうが。この村の中で誰が一番アンタと長い付き合いだと思っているのよ。アンタが何か隠している事ぐらいは直ぐに分かるわ」

「だよな」

 で、家に入ったところで戸締りをしっかりと確認した後にミズキが俺に呆れや疑念の目を向けてくる。

 まあ、ミズキに隠し事はするだけ無駄だよな。

 と言うわけで【天地に根差す霊王】を発動して結界を展開、家の中と外を今の俺で出来る最高のレベルで断絶する。

 これでまあ、一部例外を除けば基本的には大丈夫だろう。


「じゃあ、話してもらえる?」

「分かってるって」

 俺は話し始める。

 サンホロと言う都市で行われていた地獄の繰り返しを、その地獄を引き起こしていたものの正体を、風の精霊王に出会ったことを、最後に例の針と宝玉についてを。

 そして全てを聞き終わったミズキはただ一言だけ。


「そう」


 と言った。

 ミズキが何を感じ、思ったのかをその表情から察することは出来ない。

 が、わざわざ聞いたりする必要はないだろう。

 これはそう言う話だ。


「それにしてもだ。実際ミズキの目にはどんな感じに今の俺は映っているんだ?」

 若干、雰囲気が湿っぽくなったところで俺は話題を多少無理矢理にではあるが変える。

 それに、この先会う人間たちの事を考えれば気配の変わり方なんかはしっかりと把握しておいた方がいいしな。


「そうねぇ……」

 頭を一度振って気分を変えてからミズキは俺の全身をジロジロと見回す。


「とりあえず魔力が変な感じね。今までは身体の周りに一定のレベルで魔力を纏っていた感じだったけど、今は魔力が細かく枝分かれして端々まで意識が行っている感じね。それに何となくだけど普通の人間やスパルプキンよりも私のような精霊に近い感じね」

「精霊ねぇ……」

 ミズキの言葉を受けて俺は自分の身体を見回すが……うん。分からん。

 魔力視認能力にしても常に見ている自分の魔力を基準にしているからどう変わったかの判断はつかない。


「何にしても今のパンプキンはスパルプキンや今までのパンプキンとは別の種族だと見た方が良さそうではあるわね」

「一人一種族で、半南瓜半精霊ってことか」

「そう言う事ね。今まで見た事も聞いたことも無い存在になりそうだけど」

 ミズキの言葉に俺は何と言うか難儀な事になったなぁ。と思いつつ話は終わりだとして結界を解除した。

 いずれにせよ俺自身の強化に加えて貴重な存在が手に入ったのは事実だし、サンホロに行った成果はあったと言えるかな。

 そして俺は一時ではあるが日常に戻る事とした。

半南瓜半精霊のパンプキンでございます


06/14誤字訂正

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