第137話「南瓜とサンホロ-4」
『カアアァァ!』
「炎!?」
俺に接近した賢鳥が腕を振るう。
すると、赤い羽根の部分から炎が噴き出し、その不意打ちに対応しきれなかった俺の身体は軽くだが炙られる。
『カカカカカ!燃え尽きろおぉ!!』
「っつ!?ヒュロロロォォ!」
続けて賢鳥が自らの羽根を周囲へと撒き散らし、その羽根が炎へと変化するのを察した俺は上に向かって勢いよく飛び上がる。
と、同時に俺が予期した通りに羽根が炎に変化して近くに在った物を残らず焼き払う。
『空は我の場ぞ!』
「【ガストブロー】!」
『ぐっ……小癪な!?だが、こんな小手先の技が我に通じると思うたか!』
俺は当然のように空を飛ぶことで俺を追いかけてきた賢鳥に対して【ガストブロー】を数発放つが、最初の2、3発がクリーンヒットした後は全て腕で弾かれて防がれてしまう。
なるほどな。どうやら賢鳥は外見こそ鳥の怪物ではあるが、頭の出来や能力については普通の人間とまるで変わらないらしい。
となれば元になった人間は恐らくあの指揮官だろうが、あの人間の能力次第では相当ヤバいな。
「本気でやるべきだな……【共鳴魔法・蕗短剣】二刀流!」
『奇怪な!?だが……』
俺は両手に【共鳴魔法・蕗短剣】を生み出すと、賢鳥に向かって勢いよく切りかかる。
対して賢鳥は自らの羽の基本色を赤から白に変え、俺はその変化に警戒を強めつつ蕗短剣を賢鳥の肉体に刺し込もうとする。
『効かぬわ』
「っつ!?」
『今度は此方の番よ!』
「喰らうかよ!」
だが刺さらない。
それどころか蕗短剣を構成するのに使っていた魔力を吸い取られる感覚がした。
そして俺がそれを理解して刃を退くと同時に賢鳥が羽が白から黒に変化して筋肉が膨れ上がり、その膨れ上がった腕を振り上げるのを視界の端で捉えた為に俺は慌てて距離を取る。
「っつ……」
俺の顔前を風切り音と共に賢鳥の爪が通り抜けていき、腕の動きに付いて行けなかった羽根が抜け落ちていくのが見える。
一瞬だが俺はその羽根が炎に変化するのではないかと思った。
しかし、俺が十分な距離を取るまで退くほどの時間が経っても羽根は炎に変化しない。
『ちぃ……』
「どうなっている……?」
俺は地上に落ちていく黒い羽を見る。
すると地上に落ちた羽は寄り集まって黒い鎧を纏って手には槍と盾を持った騎士へとその姿を変え、その騎士は距離が有って届かないにも関わらず手に持った槍を俺に向かって突き出し続ける。
「……」
俺は正面で羽ばたく賢鳥を警戒しつつ今までに賢鳥が使った力を思い返す。
まず賢鳥には体色を赤、白、黒の何れかの色に変更する力があるが、これは決して外見だけを変える力ではないだろう。
実際に赤い羽根は炎に変化する力が有った。
白い羽根には何かしらの方法でこちらの攻撃を防ぐ力が有ると見て良いだろう。
となれば黒い羽根にはあの騎士を生み出す力が有ると見て良いな。
それに黒い羽の時は腕の筋肉が明らかに膨れ上がっていた事から考えると、他にも能力が有る可能性は高いか。
まったく……『円環を廻す三色の賢鳥』とか言う仰々しい名前は伊達じゃないって事か。
『どうした、臆したか?ならばせめてもの情けだ。苦しまずに葬ってくれようぞ』
「んなわけあるかよ」
賢鳥の羽が黒から赤に変化していく。
とりあえず白い羽の力の正体を見極めるのが先決だな。アレの正体が分からないと攻めに転じるのが危険すぎる。
『そうか……ならば苦しんで逝けえぇ!!』
「なんつう無茶苦茶な!?」
賢鳥がさらに上空へと飛び上がり、辺り一面に赤い羽根を撒き散らす。
すると、撒き散らされた羽根は当然のように炎に変化し、重力に引かれることによって炎の雨と化して俺に襲い掛かってくる。
「ちっ、吹き飛びやがれ!」
『クカカカカッ!何かやったかぁ!?』
俺は咄嗟に複数の魔力球を空中に設置して【ガストブロー】を発動し、俺に向かってくる炎の雨を除けると共に賢鳥に攻撃を行う。
が、炎の雨は吹き飛ばせたが、再び白い羽になった賢鳥にはやはり攻撃が効いていない様子だった。
くそっ、絶対防御とかそんな感じか!?
ああいや、でもそれだったら力を吸い取られる感覚の説明がつかないし、問答無用の無効化が出来るほど賢鳥と俺に実力差があるとは思えない。
本当に訳が分からん。
だからと言って考えることを辞めれば待っているのは死のみだが。
『さあ、その脆弱な風で防げるものなら防いでみるがいい!』
「まずっ!」
そうして俺が賢鳥の能力について考える事に没頭しているのが拙かった。
なぜならその間に賢鳥は巨大な火球を自らの上に作り上げていたからだ。
流石にアレは【ガストブロー】では吹き飛ばせない。だからと言って共鳴魔法の準備をしている暇もない。
『クカカカカァ!!』
「ヒュロロロォォ!」
火球は賢鳥の元を離れると俺に向かってゆっくりと落ち始める。
俺はそれを全速力で飛行することによって回避しようとする。
『さあ、我に命を捧げよ』
「!?」
だが、火球の射線から逃れた場所には羽を黒く染め上げた賢鳥が既に居た。
賢鳥の爪が振るわれる。
俺は咄嗟に簡易的な結界を張って防御するが触媒不足から結界の強度はまるで足りず、賢鳥の爪は容易に俺の結界を突き破る。
ガードの為に俺は腕を振り上げ、出来る限りの魔力を流し込んで強度を上げる。
賢鳥の爪が腕に食い込む。
そして、腕が断ち切られるようなことは無かったが、賢鳥の爪によってもたらされた衝撃は腕を間に挟んだにも関わらず頭にまで響き渡っていく。
「ぐがっ……」
意識が飛びそうになる。
飛行能力の制御がいっそ不自然と言ってもいい程に出来なくなる。
朧気な視界を埋め尽くすのは巨大な火球。
そして火球をバックに賢鳥はその身を黒から白へと染め上げ、それと同時に賢鳥に触れた部分の火球が吸い込まれるように消えていく。
俺はその光景に白い羽の力を理解し、その直後に火球が俺に到達して俺の視界は白い光に埋め尽くされ、身体に何かが刺さるような感覚と共に俺は意識を失った。
赤は火と飛行
黒は召喚と肉体強化
白は回復とダメージ逆転
ええそうです。ハンゴンさんです。
オリジナルがどこかは分かりませんけどねー