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第13話「秋の南瓜-6」

「とりあえず簡単な処理完了」

 熊を倒した翌日。

 朝の日課を一通り済ませた後に俺は熊の毛皮からとりあえず肉と脂肪を剥いだ。これでまあとりあえずは大丈夫だろう。


「で、研究を本格的にしたいところだけど……」

 俺は昨日熊を昏倒させるのに使った草の外見と魔力の色を思い出す。

 記憶が確かなら近場に群生地もあったはずなので試料には事欠かないだろう。

 むしろ問題なのはこの先圧倒的に増えるであろうデータを俺の頭だけでは記憶しきれないし、処理しきれないという事だ。


「やっぱり何かしらの記憶媒体が欲しいな」

 で、記憶媒体となれば一番簡単なのは紙とペンか。

 流石に石に掘るとかなったら手間とか量とかの問題でやってられないし、葉っぱに書くとかは何かあった時に損失する可能性が高すぎて駄目だろう。

 となれば求めるべきはやはり羊皮紙なり和紙なりの紙に何かしらのペンだろう。


 で、ここで問題が一つ。


「流石に自作は無理だろうなぁ……」

 紙もペンも流石に自作するのは無理である。

 うん。ペンぐらいなら炭に紐を巻き付けるとかで出来そうだけど炭なんて作れないし。紙もこんな原始的な生活を送っているような奴が作れるとは思えない。


「となれば人里に出て買って来るしかないわけだけど、俺の見た目はこれだしなぁ」

 だが、今の俺はまさしくカボチャである。

 なので人里に出て何かをするのならばそれ相応の工夫と言うか偽装と言うか、とにかく何かしらの対策を施さないと確実に問題が起きるだろう。


「とりあえず冬籠りの準備からしておくか」

 まあ、そう言う事なので一先ずは差し迫った脅威である冬に対する何かしらの対策を考えるべきだろう。

 具体的には拠点の改良とか、藁みたいな断熱材の確保とか、この身体がどこまで寒さに耐えられるかと言う耐寒性の試験とかその辺。

 と言うわけで今日は拠点の改良に取り掛かるとしよう。



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「…………」

 多すぎんだろ。

 俺が拠点の改修を始めてすぐに感じた事がそれだった。


「ブモッ」

「ブモブモ」

「ブモー」

「はぁ……」

 現在拠点の周囲には三匹の猪が何かを探すように屯している。

 どうしてこうなったのかは分からない。

 と言うのも拠点の改修を始めてすぐにこいつらが森の中から突然出て来たからだ。


「様子から察するに餌を探してるって言う感じだよな」

 俺は拠点の入り口にある隙間から猪の様子を探る。

 猪たちは鼻を必死な様子で地面にこすり付け、何かの匂いを嗅いでいる。

 時期を考えれば冬に備えて脂肪を蓄えるために餌を探してるのだろう。


「別に倒せないことは無いけど時間がかかりそうだしなぁ……」

 俺は猪の動きからどうやれば順序良く始末できるかを考えるが、流石に3頭同時に相手取るのは厳しそうだ。

 となれば……うん。あの草も無いしバリケードを張って去るまで待とう。

 危険は犯さないに越したことは無い。


「ほいさっと」

 そして俺は適当に集めた品々でバリケードを築くと、拠点の中で魔力の操作技術を磨く作業に専念することにした。

 水と光は拠点にある壁の隙間から根と葉を出せば問題ないだろう。



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「どうしてこうなった……」

 と言うわけで数日後。状況は見事に悪化した。

 現在拠点を取り囲んでいる動物の総数は二十を超えている。

 集まった動物同士で喧嘩をしているので、その数には常に変動があるがだいたい間違ってはいないだろう。


「うーん。逃げるしかないよな……」

 幸いな事に拠点内装の改良は既に完了しており、様々な獣の皮を敷き詰めることによって防寒性は格段に上がっている。よって本格的に冬になるまで外を逃げ回って、冬になったら戻ってくると言う手は十分に使える。

 拠点に籠るしかなかったおかげで冬籠りの準備が完了していると言うのは微妙に皮肉な気もするが。


「とりあえずあの草の群生地まで行って、草を回収したらミズキに会いに行くか」

 そして俺は外の様子を窺い、安全だと判断したタイミングで外に飛び出す。

 ここで俺の誤算が一つ。俺には奴らがどうしてこの拠点の周りに集まっていたのかは分からなかったが、集まっている理由はあの拠点の近くにある何かが理由だと思っていた。

 なので、この場を離れれば安全であると考えていた。


「「「ブヒイイィ!」」」

「「「グルアアァ!!」」」

「げっ……ヒュロロロオオオォォ!!」

 だが、実際には俺が拠点の外に飛び出した直後に何かを察したかのように動物たちは俺の方を向いて突撃を仕掛け始めた。


「ヒュロオォ!?な、何がどうなってんだよ!?」

 そのため、俺は訳も分からないまま最高速度で森の中に突入すると共に向かう先を草の群生地からミズキの元へと変更。

 今現在集まっているのはどいつもこいつも陸生の生き物な上に、湖には主もミズキもいるのでこいつらぐらいの魔力なら積極的に近寄っては来ないだろう。


「グルアッ!?」

「のわっ!あ、危なっ!」

 と、ここで、正面から熊が右手の爪を大きく振りかぶって襲ってきたため、俺は急旋回をして熊の攻撃を回避する。

 やはりと言うべきかこいつらの目標は俺らしい。

 そしてそれを理解した俺は熊たちの攻撃が届かないであろう樹上を飛行することによってミズキの居るアキューム湖を目指すのであった。

こういう時に逃げるのがパンプキンでございます

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