第124話「南瓜と大きな木-3」
「そぉい!」
さて、しばらくの間エレベーターの立坑を上昇し続けていた俺だが、やがて天井が見えてきたところで停止。
周囲を見渡して微かに光が見える場所……扉を見つけた俺は、扉を蹴破ってその先の空間に突入する。
「ふむ……ここは儀式場……いや、この塔の用途を考えれば発信場と言った方が適切か」
そこは足場の全てを樹の枝と葉が覆い、エレベーターの正面には注連縄や鈴などで飾り付けられた祭壇のような物が置かれており、窓ガラスが有ったと思しき場所から先は大量の枝葉が見えていた。
で、外から見た場合だと此処は樹の頂上付近……つまりは大量の魔力が集まっている場所にあたり、それを示す証拠として魔力視認能力を可能な限り低くした俺の目でも濃密な魔力が見えている。
「アレがここの主か?」
そして俺は改めて祭壇の方に目を向ける。
祭壇にはさっきも言ったように注連縄や鈴などによる飾り付けがされているが、それ以上に目を惹くのはまるでご神体かのように祀られている木乃伊の様な物体。
いや、魔力の流れ的に背中の辺りでこの塔に巻き付いている樹と繋がっている感じもするので、実際には木乃伊では無く樹の一部が人の木乃伊に近い姿を取っているだけなのだろうが。
『……用だ』
「ん?」
と、ここで木乃伊の口が動くと共に声のようなものが聞こえた気がして、俺は周囲への警戒を強める。
『何の用だ。人の仔よ』
「!?」
そして今度ははっきりと木乃伊の口が動き、老人のような声が聞こえたために俺は思わず驚きを露わにする。
『此処はかつて栄華を極めた人間の墓標であり、今は我の寝所ぞ。貴様のような者が立ち入っていい場所ではない』
「そう言われても俺にだって調べたい事は色々とあるんだがなぁ……と言うわけで退くわけにはいかない」
俺の言葉に木乃伊は眼球の入っていない眼窩を見開いてこちらを睨み付けてくる。ただ、そこからは魔力を感じない。
『そうか……ならば無理やりにでも出ていって貰うぞ!』
そう木乃伊が言った瞬間にそこら中にある樹の枝と幹が俺を叩き潰そうと勢いよく動きだす。
やれやれ、結局こうなるのか。俺としてはこの場所について色々と調べさせてもらえればそれで良かったんだがなぁ。
「ま、先に手を出したのはそっちだ。だから恨むなら自分を恨めよ」
『小童が何を言うか!』
俺は四方八方から放たれる攻撃を、一定の基準に沿ってステップを踏みつつ回避していく。
枝に含まれている魔力の感じと枝自体の重量からして当たればそれ相応のダメージを受けるのだろうし、命中率を高めるためのさりげなく小枝のような物も生やしている。
が、ぶっちゃけて言うが当たらなければどうと言う事は無い。そして今の俺にとって回避行動はただ攻撃を避けるだけでなくその先への布石にもなっている。
つまりだ。
『潰れるがいい!』
「準備完了。【共鳴合奏魔法・四季四刃セット】!」
『「なっ!?」』
まず俺は正面から俺を刺し貫こうと迫ってきた枝を【共鳴魔法・牛蒡細剣】によって切り払う。
続けて横から俺を押し潰そうとしてきた幹を【共鳴魔法・大根大剣】によって切り伏せる。
そしてそれらの隙間を縫うように迫ってきた微妙に含まれる魔力量が多い小枝を【共鳴魔法・蕗短剣】によって防ぐ。
最後に四季を巡ると言う魔法的に重要な要素の一つである循環を模した行動によって攻撃力を大幅に増した【共鳴魔法・胡瓜刀】を俺は振り抜き、周囲の枝葉と幹ごと祭壇に飾られていた木乃伊を真っ二つに両断して吹き飛ばす。
【共鳴合奏魔法・四季四刃セット】。それは防御に特化した春の蕗、攻撃力に特化した夏の胡瓜、攻防のバランスに優れた秋の牛蒡、重量によって叩き伏せる冬の大根で同時に四種類の剣を発生させる共鳴魔法を発動して戦闘する魔法であり、春夏秋冬の順に剣を振るう事によってその威力を高めて攻撃することができると言う特性を備えている。
そんな特性ゆえに最後に胡瓜を持ってきた場合の威力は見ての通りである。
「バ、バカな……ぐっ!?」
「さて、平和的に済ませる手も有ったのに攻撃をするだなんて、覚悟は出来ているんだよな?」
で、さっき声が二重になっていた事や枝に含まれていた魔力量の微妙な差から明らかではあったが、木乃伊ではない本来の本体と思しき存在が居る方に魔力を込めた手を伸ばしてその本体と思しきものを掴むと、俺の目が届く場所にまで引きずり出す。
「は、放せ!我が誰だか分かっているのか!?」
「知らん」
引きずり出した所で俺はその引きずり出した相手を確認したのだが……身長は大体130cmほど、髪の色は緑で肌の色は茶色っぽい。服は身に付けていないが、魔力については綺麗な緑色。外見だけを見るならヒューマンの少女と言ったところか。
ただ、その身体を実際に構成しているのは木の葉や小枝を一部で媒体とした超高密度の魔力っぽいので、それに前述の枝や幹を使った攻撃方法を考えるとコイツは……
「なるほど。お前はこの樹の精霊か」
「いいから放せ!我は大地の精霊王ぞ!!」
精霊。それも本人の名乗りが精霊王と言う事はミズキよりも上位の精霊だったようだ。
まあ、このサイズと年月を経た樹なら居てもおかしくは無いか。だからと言って拘束を緩めたり、譲歩したりする気はないが。
さっきも言ったが先に手を出したのはそっちだ。
先に寝床に乗り込んだのは俺だけどな。
ロリ精霊王(裸)
05/27誤字訂正