第103話「南瓜と海月-3」
折角のGWなので不意打ち更新
本日二話目です。
「で、その人形は結局何なんだ?後、この前の偽装の詳細について教えろ」
で、リーン様の用件も済んだところで普段の取引をしつつ、先程ロウィッチが隠した人形の事と破壊神の腕の時にロウィッチが俺に施した偽装の詳細について質問をする。
そしたらロウィッチはまるでよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに顔を輝かせる。
あ、ヤバいなこれ。誰かに自分の技術の事を自慢したがっている職人に対してその技術に関することを聞いちゃった感じだ。
「よくぞ聞いてくれました!」
「あー……」
で、俺の予想通りにロウィッチは両腕を大きく広げるとまるで演説をするかのように喋り始める。
「それではこの人形について語る前にまずは件の偽装について語ろう。まず俺が得意とする偽装は変身魔法であるが、その変身魔法は普通の変身ではない。俺はロウィッチ……つまりは魔法少女をこよなく愛する者であるため、変身させた者に対して魔法少女としての力も一時的に与えることが出来るのだ。そして俺が作り上げる魔法少女である以上は能力的な意味だけでなく外見的な意味でも一流の魔法少女にするのは当然の流れである」
「へー」
「そういう訳で俺はこのフィギュアのような装束を魔法によってお前に着せたのだが、この衣装を選んだのにも理由がある。と言うのも個人的には古典的魔法少女……黒の無地でとんがり帽子とローブに木製の杖と言う由緒ある魔法少女装束が俺の好みではあるが、昨今の流れを鑑みてフリルやパステルカラーのある服に豪華で可愛らしい武器と言うのも捨てがたく、結果としてお前がお前の上役から貰った杖も有った事なのでその杖に合う様に白のローブにスカート、手袋を付け、その上から南瓜のアクセサリをアクセントとした黒のとんがり帽子にマントを身に付けさせたわけだな。あ、靴は当然の様に南瓜アクセを付けた黒い奴な。ついでに言えばこれらの装備品はいずれも俺の魔力によって作り出された物だが、肉体が受けたダメージを肩代わりすると言う能力を持ち、そのダメージ量に応じて破損していきつつも胸や股間などの際どい部分は何があっても破れないと言うお子様アニメでも安心な仕様になっているのだ」
「ふーん」
「だがこれで終わりではないぞ!当然と言うべきだがお前の普段の姿ではこんなに素晴らしい魔法少女装束でも残念ながら一部特殊な嗜好を持つ者でなければ似合わないと判断せざる得ない。と言うわけでここからが俺の変身魔法の本領である肉体に関する部分だ!まず、身長の変更は無しだ。大抵の魔法少女物は身長の変化は起こさないし、戦闘を行う事を考えた場合視界の大幅な変化は致命傷になるからな。また、お前の性別を考えた場合胸を極端に大きくするのも無しだ。大きな胸は戦闘の邪魔にもなるが、それ以前に魔法“少女”と言う存在上その種族や外見の年齢上そぐわない胸にするなどナンセンスにも程があるからな。が、逆に言えば変えてはならない点はこの二つ程度だ」
「はいはい」
「まず顔!ここには見た者全てを悩殺するようなまるで天使のごとき愛嬌ある顔にすると共に、変装として意味を持たせるために人ならざる美しさも同時に持たせた。またそれと同時にお前の妹であるウリコちゃんの顔パターンも入れることによって僅かではあるが人としての温かみや血縁関係的なものも感じる様になっている。次に体だが、こちらも大きく変化させてしまうと動きに支障が出るから大きくは変化させていないが、変身前と変わらず動ける様に筋力量や骨格配置を行うと共に肌はまるでシルクを思わせるようなきめ細やかさとゼロ距離からオリハルコン製弾頭を撃ち込まれても表面上は傷がつかないような防御力にすると言う本来なら背反する事象を両立させたものとなっているのだ!」
「…………」
「そうして出来上がったのが南瓜の魔法少女マジカル☆パンプキンであり、それを16分の1スケールにおいて小物の一つどころか杖に刻まれている文字の一つ一つまで再現しつつも顔などはデフォルメを施して可愛らしくしたのが俺の今持つ16分の1スケール南瓜の魔法少女マジカル☆パンプキン・リーンカーネーションフォームだ!!」
「ZZZzzz……」
「寝るなあああぁぁぁ!!まだ服のモチーフにしたキャラとか言ってないんだぞ!むしろここからが本番じゃああぁぁぁ!!」
「ハッ!?」
どうやらロウィッチの説明があまりにも長すぎたためにいつの間にか意識が遠のいていたらしい。
ただまあ、こうして説明を聞いていてちょっと疑問が浮かんだ。
「いやーすまんすまん。とりあえずロウィッチがとんでもない技術を持っているのは分かったわ」
「まず……ん?本当か?」
「本当本当。ところでロウィッチ?」
「何だ?」
「そのフィギュアは何で作ったんだ?」
「そりゃあ勿論折角あんなに良い魔法少女が産まれたのならその記録は後世に至るまでしっかりと残しておくべきだろう。それに同好の士が何人も出来の良さから既に注文もしてきているもんで型とかも作ってあるぞ」
「そうかそうか……」
「ん?」
ロウィッチの言葉を聞いた俺は、ロウィッチの腰にゆっくりと蔓を巻き付ける。
いやさあ、なんて言うかね。
「即刻廃棄しやがれこのド変態があぁ!!」
「ぐふあああぁぁぁ!?」
俺の人権や肖像権は何処に行った!
と言うわけで俺はロウィッチに対してバックブリーカーから開始される格ゲーならば十割確定のコンボを決めるとデータや型の廃棄を求め、目の前でそれを削除させるのであった。
「とりあえず次にやったら本気で殺しにかかるからな……」
「はい……」
仮にロウィッチが同じことをもう一度やったらその時はアレだな。全力で消しにかかると同時にリーン様を通じてロウィッチの上役が多分居るはずだからそいつに連絡するのも有りかもな。
16分の1スケール魔法少女マジカル☆パンプキン!
多次元間貿易会社コンプレックスフィギュア課より198単位にて発売中!
そして……
「天に葉を広げ、地に根を下ろす。この世の全てを私は支えて見せる!」
「ならば私は世界も神も喰らい尽くしてくれるわ!」
劇場版「魔法少女マジカル☆パンプキン~決戦・カミハングリー~」も鋭意製作中!
この夏……南瓜が甘い。
……。もちろん、全て嘘ですよ。
05/08誤字訂正